第4話
「どうした?」
天の恵みとはこう言う事かと、この時ばかりは幼馴染の彼の存在に感謝した。
「って、この子。雷太覚えてないの?ほら、卒園して直ぐ引っ越して同じ小学校に通えなかった、桃ちゃんじゃん。さっき名前呼ばれた時にもしかしてと思ったけど、その人形で確定したよ。」
ああ、神罰とはこう言う事なのかと、この日を境に少し彼との付き合い方を見直そうと心に誓った。
見ろよ、やっぱり間違って無いと納得して、更に眼力が強くなったじゃないか。
「ほら。間違いじゃないでしょ。」
「……みたいだね。」
どうして、こんな特徴的な子を忘れたりしたのだろうか。
いくら幼い頃とは言え、ピンクゴールドの髪を忘れるだろうか。
考えれば考える程、僕じゃない様な気がしてならない。
「じゃあ、行こっか?」
思い出すのに躍起になっていると桃は先程の悲壮感は何処へやら、笑みに花を咲かせ、雷太の右腕を引っ張る。
余程、証人が居ることに嬉しいのだろう、せっかちに雷太を煽る。
「何処に行くのさ?」
「う~~んと、昼食も兼ねて市役所に行ってお泊まり会?」
さも当然の如く、さらっと言われると違和感なく聞こえるが、何かオカシイ。
いや、どこが?じゃなくて全部オカシイ。
「分かりやすく説明してもらえると嬉しいかな。子供を納得させる感じでさ。」
「いいよ。だからね、先ずはこのまま一緒に帰りながら、会えなかった時間を取り戻す為のコミュニケーションを図って、お腹も空いてくる事だし、どこかでお店に寄ってイチャイチャしつつ二人の距離をより一層縮めさせて、最後は市役所に行って、婚約証書を承認してもらって、後はらい君のお家に泊まって×××と言った具合でどうでしょうか?」
わざわざ指を使って口の前でバツを作らなくとも他の言い回しがあるだろうになんでそこだけストレートに言おうとするんだよ。
「そっかー。……お断りさせて貰っていいかな?」
あくまでも笑顔で。
「駄目。」
ひたすらに笑顔で。
「流が代わりに行くからさ。」
幼馴染の親友の肩を抱き、これ迄にない笑みで。
「らい君?私、そろそろホントに怒っちゃうよ?」
桃の笑みは限界らしく痙攣を起こした様に口の端は小刻みに震えている。
瞳はとうの前に笑っていない。
流に目線をやれば、悪者を見るような目で僕を見ていた。
それどころか、クラス内に残っている人達もそんな目で見てくる。
「分かったよ。行くよ。」
と返事をしつつ、頭の中ではどう逃げようか、そればかり考えていた。
 




