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それ、ホントに僕ですか?  作者: 海々深々魅々美
違うは何時かの齟齬からか
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第37話

どうして、僕に逃げ場が無いのだろうか。


バイト先では朝美さんに押し迫られ、高校若しくは自宅では桃ににじり寄られ、唯一平和でいられるのは美夜先輩と居る時だけで、それも誰かにぶち壊される。


僕が彼女達の気持ちに答えず逃げ回っているせいも有るかもしれない。


しかし、中途半端に対応したのではそれこそ彼女達に失礼に値するだろうと、有耶無耶にしてきたツケが回ってきた結果がこうして、桃と大家さんが僕の部屋で何やら張り合っていた。


「い~え!私の方がらい君の事をよ~く、よ~~く知ってます。」


「違うね。うちの美夜ちゃんの方が雷太君の事を知ってるし、何より愛にどっぷり浸ってるね。」


「それだって私の方がらい君を愛してます。この胸を見れば一目瞭然です!パンパンに詰まってますよ!」


「ぐっ!み、美夜ちゃんは全身に詰まってるからサイズなんて関係ないね。何より、雷太君はそんな脂肪よりも心のふくよかな人の方が好きなんだよ。そんな羨ま、けしからん脂肪ごときで雷太君が靡く筈がないだろ。」


「甘いですね、大家さん。らい君を五感全てで愛でる為に私の体は出来たんですよ。全てはらい君の為だけに捧げるんですから、色んな事が出来ないと駄目ですよね?色々と。」


「それだったら、美夜ちゃんの奉仕は凄いぞ。もう全身隈無く愛でて、一日中所か一年中盛りのついた猫並ににゃんにゃんするぞ。」


「私だって、おな……覚えたての猿みたいにらい君と繋がるもん。きょ、今日だって一回してから学校に行きましたからね。」


「照れんなよ、全く。そう言う嘘は直ぐばれるから止めた方いいぞ。大体な、そんな昔の約束を鵜呑みにして、もし雷太君にもう彼女がいたら、どうすんだよ?」


「あ!それは無いです。らい君はちゃんと私の約束を守ってくれますから。」


「は?」


「らい君は私を深い闇から私を救ってくれたんです。そんならい君が私をまた闇に突き落とすなんて有り得ませんから。もしそうであれば、らい君と一緒に闇に落ちます。それ位らい君を愛してるんです。だから、らい君も私を愛さないといけないんですよ。」


「そんなの詭弁だぞ。」


「違いますよ。泥にぬかるんで出られない私を助ける為にはらい君だって綺麗ではいられないですよ。最悪、らい君も泥濘に足を取られて出られない。それ位の覚悟が無いと助けちゃ駄目なんですよ。だから、らい君は私と結婚しなくちゃ駄目なんですよ。」


「……あんたの言ってる事は屁理屈でも詭弁でもなかったわ……不条理だ!そんなの。雷太君は善意で助けたんだよ。そこには腹の内を探ったりとか邪な気持ちなんて無い、ただ単の善行だ。あんたは優しさに付け入る詐欺師と一緒だよ。」


「なら放って貰った方が良かったですよ!私の今があるのは…私の存在意義はらい君の無邪気な言動のせいで決まったんですよ。だから詐欺師でも構わないです。でも、私が唯一してあげられる事がそれしかないからこそ、らい君もそれに応えて欲しい、私の恩返しを受け取って欲しい、それだけです。」


「それがオカシイって言ってんだよ。」


「おかしくないです。…私の命を救ってくれたんですよ。だから私も命懸けでらい君の望むもの全て叶えてあげたいんです。だから、何時までも側に居たいんです。良い行いをした人には必ず良いことが起きる、それを体現してるだけです。何も大袈裟なことでは無いですよ。」


「雷太君は見返りなんか要らないんだよ。桃ちゃんが幸せであれば、それだけで恩返しになってるんだって。」


「なら、今まで恩返し出来なかった分を返さないといけませんね。私、らい君に再会するまでずっと不幸せだったんで。」


……どうして、コミカルな部分から闇の深そうな話を僕の部屋で口論するのか、お陰でとても入りづらいじゃないか。


今、入れば確実に飛び火するのは間違いない。


かと言って、夜の冷えた空気に晒された体を熱いお風呂にでも浸かってリラックスさせようと洒落込みたいのに開ける勇気も無い。


聞き耳を立てれば、未だに続き終わりが見えない。


桃の部屋にも大家さんの家に上がり込もうとは思えず、僕は静かに階段を下り、再びバイト先へと避難するしかなかった。

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