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それ、ホントに僕ですか?  作者: 海々深々魅々美
違うは何時かの齟齬からか
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第31話

美月が時間稼ぎをしている事に気付くや桃は未だ終着点の見えない口論を切り上げ、一目散に雷太の元へと駆け抜けて行った。


桃の後ろ姿が徐々に遠退いていくもニヤケは止まらず、青春してるな、などと自らの青春時代を懐かしむ様にこの面白い状況を楽しんでいる。


緩んだ寝間着から携帯電話を取り出し、朝美へと連絡を入れる。


「…もしもし。」


通話口からでも伝わる面倒臭そうな声色だが、美月は無関係に朝から高揚と喋る。


「朝美ちゃーん?どうして叔母さんにこーんな大事なこと教えてくれなかったの?叔母さん悲しいよー。」


テレビ電話で無いにも関わらず美月は泣く仕草をしつつ、ついでにとあざとい泣き声も朝美に聞かせた。


彼女はあからさまにため息を盛大に吐き、美月の煽りを受け止めるしかなかった。


「それは……美月叔母さんに教えたらややこしくなるでしょ?」


「ええー!?そんな事無いよ。最初から教えてくれれば、もっと雷太君を贔屓してあげたのに、勿体無いなー。」


だからそれが、と朝美は反論しようとしたが少し逡巡し、話の中身をずらそうと考えた。


でなければ、もっと酷い具合に雷太と関わり始める可能性が美月には大いに有り得るからだ。


「全く、いい年した大人が若人の恋路を邪魔しちゃ駄目でしょ?美月叔母さん、今何歳?まだ、夜中に水商売風の格好して出歩いてるんですか?そんな仕事してないのに。」


「ぐっ。朝美ちゃん手厳しいねー。」


「好い人は見つかったんですか?そんな姪っ子の心配するより自分の心配してないと後々後悔すると思いますよ。」


「止めてよ、朝美ちゃん。」


「母さんも心配して成仏出来ないじゃないですか。」


「お姉ちゃんを引き合いに出すのは卑怯だよ。あたしはただ同じ妹という立ち位置にある美夜ちゃんを助けたかっただけなのに。」


しかし朝美にとって叔母の言葉は何も響かなかった。


何故なら姉妹がまだ幼い頃、そうした色恋沙汰を耳にした時、美月はスッポンの如くしつこく質問攻めをし更に余計な手出しまでしてきた経緯がある。


なので、恋愛関連について叔母には極力内緒にしておく暗黙の了解が二人の中で出来上がっていたのだが、美夜がどうして話す気になったのかが疑問として叔母の反応とは別に胸につかえていた。


「でも、どうして美月叔母さんなんかに話したのか…。」


「なんか、とは酷いけど…まあ、あれだよ。雷太君を本気で落としたいから猫…いや、叔母の手も借りたいんじゃないのかな、この恋愛生き字引のあたしに、さ。」


朝美はこの無駄に自信過剰な叔母の態度に呆然として、何も言えなかった。


恋愛に長けているならもう結婚してるんじゃないの?なんて反論すれば恐らく癇癪を起こすに違いないと心に仕舞い、そうだね、と適当に相槌を打つ程度に済ませた。


実際の叔母の知識など、少女コミックから得たものばかり。


それも王道ものに偏っているせいか、何かしら話す機会があると直ぐドラマチックな事ばかり語る夢見がちな、いい年の叔母さん。


だからこそ、奥手の美夜に悪影響を及ぼすのではないかとハラハラしてしまう。


「あ、くれぐれもお義兄さんには夜に出歩いている事は内緒にしといてよ。」


ドラマの影響なのか、水商売カッコいいなんて言い始めたはいいものの男性とまともに話せない、話題も狭い、何よりお酒に弱いときたもんだから、雰囲気だけでも味わおうなんて始めた変な趣味。


そんな変な叔母が何を企んでいるのか、朝美は気が気でなかった。

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