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それ、ホントに僕ですか?  作者: 海々深々魅々美
違うは何時かの齟齬からか
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第28話

「所で桃は部屋の鍵が同じって何時気付いたの?」


雷太は味噌汁を啜った後、失礼だが箸の先を彼女に向けつつ包み隠さず聞いてみる。


今日の朝食は桃の遊び心がふんだんに盛り込まれていた。


目玉焼きが二つにウインナーが三本、そしてサラダを使用したフェイスプレート。


輪切りにされた野菜は丁寧にもハートに型どられ、プレートの端にはケチャップやマヨネーズで愛を語らせ、食器も全てペアルック。


こうした小細工を出来る程までに彼の部屋には彼女の私物が隠されている。


だからこそ、雷太は何時から桃がこの事を知っていたのか分かる必要があったのだ。


彼の居ない間に何をされているか分からないのだから、おちおち落ち着いていられない。


「え?同じだったの?私はてっきりらい君が夜這いに来てくれたと思ってたよ。」


桃は驚愕とした次の瞬間には訝しげな顔をして、自身の推察不足を嘆き、願望があったのだろう、彼女は太腿を軽く叩きながら後悔を痛感していた。


「ああ、もう!悪戯でもいいから試しておくんだった。そうすれば、裸エプロンとか奥さんの真似事とか添い寝、夜這い、愛の営み?もっと、らい君を悩殺出来る可能性は広がったのに~。……でも、ちょっと待って白黄桃、まだまだチャンスは残ってる。これからすれば良いのよ。」


ここで機転を利かすのが彼女、残念がってはいても過ちから成功への道を模索するのだから、頭は完全にお花畑だ。


「いや、鍵交換するから。」


その前にと雷太は対策を練ったは良いものの…。


「じゃあ、それまでチャンスはあるって事だね!」


桃は目を輝かせつつ前のめりに機会がまだある事を喜んでいる対面で雷太はもう乾いた笑みしか出せなかった。


「…と言うのはほんのちょこっと冗談だけど、迷惑掛けてほごめんね、らい君。」


しかし彼女は笑顔を曇らせ、言いにくそうに視線を泳がせ手持ちぶさたにウインナーを転がす。


彼としては大部分冗談であって欲しかったと思う横で彼女がどんな爆弾発言をするのか少し怖くも感じていた。


自然と食べる動作を止め、静かに箸を置き桃の話に耳を傾ける。


「あのね。多分なんだけど。また、夢遊病が出ちゃったみたい。」


「どういう事?」


「私、小さい頃からしょっちゅう夜の住宅街をさ迷ってたみたいで、小学校高学年あたりで治まったんだけど……。」


話を纏めた所、どうやら発病したのは丁度、雷太と別れたその日らしく夜な夜な彼を求め、あのテディベアを抱え歩き回ってたそうだ。


しかし、思春期前後で一旦成りを潜めたのだが雷太と出会ったは良かったのだが、彼に記憶は無く尚且つ彼を狙っているのは桃だけではないと知り、精神面が不安定となった結果、再発に至ったのだと彼女ば自己分析した。


更に彼女はこう続けた。


「多分、これから毎夜らい君の所に行こうとするかも。」


雷太は注意しようと考えたが無意識の行動が故にどう対処すればいいのか分からず、 モヤモヤとした気持ちが喉の奥につっかえて気分は悪くなった。


桃が苦悩に苛まれる原因が僕にある。


そう考えただけで無下に扱えない後ろめたさが生まれ、僕は丁重に扱わなければならないと何処か心の隅で思っているのかもしれない。


ただでさえ、子供の頃の記憶が無いのだから余計に桃の我が儘を黙認している節さえある。


桃ははにかみ再び食事を始めた。

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