第2話
話は遡ること凡そ1ヶ月前。
それはちょうど入学式から怪しい雰囲気が流れ出ていたのかもしれない。
新入生を歓迎するには相応しくない、そのどんよりとした空模様に、さあ高校生活を謳歌するぞと意気込む生徒を皆、苦虫を噛み潰したかの様に苦笑いさせた。
晴れ晴れとして季節が合えば、この高校を囲うよう埋められ桜が趣よく春らしさを感じられるだが今はみすぼらしく散在しているだけ。
こんな思い出も有りか、などと感傷的に成りつつもどこかやる気を削がれたようで気持ちは下火気味。
ただその中で彼女だけは、優雅に歩いていた。
まるで彼女の歩く道だけが晴れているかの如く、顔つきに暗鬱としたモノは見られない。
誰もが二度見したり見惚れていたりと彼女はそれだけ美しいのだろう。
よそ見程度に見た位にして僕は足早に自分のクラスへと向かった。
彼女が値踏みする様に僕を注視しているのに気付かないまま。
ここでオーソドックスに我が母校となる県立厄災高校を紹介したい所なのだが、自分の身の丈に合った高校を選んだだけでスポーツが強いだとか文化系が盛んだとかは全く分からない。
でも、これだけは言える。
忌之厄災市の中心には小高い山がある。
その昔、此処には凶暴な鬼が住んでいたとか。
作物は荒らされ、金品は奪われ、数多の人間が犠牲となった。
が、生き残った数少ない者たちが方々の修行場へと赴き、位の高い僧侶や修験者、陰陽師とあらゆる呪い師を呼び寄せ、鬼を倒した。
彼らは呪い師たちを敬う心とまた助けを乞うかもしない不安を乗せ、それはそれは大きな鳥居を山の頂上に建立し、社を置いた。
それがこの忌之厄災市に存在している。
今はパワースポットとして雑誌に載る程なのだから凄いのだろう。
勿論、心霊スポットとしても有名なのだが……。
そのお陰で心霊話に欠かなかった事は言うに及ばない。