第11話
大通りには当然、幾つも小道が交錯しているのだが、雷太は未だ道を覚えきれずにいた為、取り敢えず厄災駅に向かい歩き始める。
それもそのはず。
雷太はつい最近、引っ越してきたばかりなのだから覚える余裕など無かったのだ。
「お別れしたよね?」
わざとらしく、音を鳴らしながら後ろを歩く桃に観念し、気だるく溜息を吐き、確認を取る。
「そうだね。」
「そうだねって…。」
いい加減な尾行に飽きたのか、桃は小走りで雷太の元まで来るや、愛想笑いをして彼の顔をじっと見つめた。
「しょうがないじゃん。引っ越してきたばっかりだから、道なんて分かんないもん。」
彼女もどうやら同じ事を考えていたらしい。
まあ、それも駅に着くまでだろうと見過ごした。
それが良く無かった。
「ホントにこっちなの?」
そう。
駅までかと思いきや、何処までも桃と同じ道を歩いている。
二人共、スマホのナビを使っているのだが何故か、同じ道案内をしている。
「……らい君、運命って信じてる?」
真剣な面持ちで雷太に訪ねる桃の口元は、今にも笑みが溢れそう。
「僕は信じないよ。」
「そっか。私は信じてるよ。だから、スマホのナビ見せて?」
「……僕は信じてないから証明しなくても大丈夫だよ。」
雷太にはもう悪い予感しか浮かばない。
だからこそ、覚悟を決める時間が欲しいと、足早に桃から離れる。
「らい君!これは運命のイタズラだよ。神様が後押ししてくれてる恋愛なんだよ。」
彼女は並走して、如何に二人の恋愛が様々な要素が絡み合って導いてるのかを力説してくる。
「同じ高校、同じクラス、帰る方向も一緒。偶然では説明し切れないよ。もう運命なんだよ。らい君!運命だよ!」
嬉々として熱弁する彼女の鼻息は荒くなる。
目的地である木造アパートが見えた途端、彼女の興奮は増すばかりで赤い糸で結ばれてると言いたげに瞳の輝きが訴えかけてくる。
雷太が二階へと向かう階段を登れば、当然の様に後ろから付いてくる。
「これからお隣同士、恋人同士仲良くしようね。」
そう言い、彼の隣の部屋の施錠を解いた。




