第104話
それはいずれ気付かれる事であり、問題は遅いか早いか、そしてどの程度の癇癪を起こすか、それに尽きた。
スカートから覗くスラリと引き締まり、綺麗な黄金色に焼けた足を陸上部だからこそ、リズム良く地団駄を踏み締め、彼女は桃に怒っている。
「ズルい!!何で僕を呼んでくれないの!?」
端から見れば快活そうな少年に見えなくもない彼女は仲間外れにされたのが酷く傷付いているのか、桃の両肩を掴み乱暴に揺さぶる。
「ゴメンって、言って、るじゃん、未来、ちゃん。もう、止め、て。酔っちゃうう~~。」
特舎スポーツ科であるが故の成績が第一と言う方針が未来の休日を潰してしまい、今まで二人の接点は雷太たちの居る教室に限られていた。
しかし、未来だって桃とデートがしたいのだ。
遊びたいのだ。
「桃ちゃん…僕の所に遊びに来てくれないし……。僕、嫌われてるのかな?」
朝陽の射し込む時間が早くなり、朝練に励みやすい時期になると未来が来訪する事は極端に少なくなった。
「そんな!嫌いじゃないよ!」
だからこそ桃は油断してしまった。
止せば良いものを、HRが始まるまでの余暇に彼女は来週の御褒美の考察をする為、ノートにまとめているのを未来は見てしまったのだ。
未来にはどうも強く当たれず、たじたじとなる桃を雷太と流は後ろの席から眺めていた。
「なあ、止めに行かなくていいのか?」
流はヒステリックな彼女の叫びに心配したのか、雷太にそう提案するも身動ぎ一つせず、ただ呆けた要に見つめている。
「未来から敵対心を向けられてるからね。行った所で火に油を注ぐ様なもんでしょ?それに、ややこしくなりそうだから行きたくない。」
未来の悲痛な心の声に胸を痛くした流は乗り気じゃない彼に代わってと、立ち上がり桃の元へと加勢に向かうのだが。
未来の剣幕した声を背中に受けながら、彼はしょんぼり肩を落とし帰ってきた。
「…おかえり。」
そのままガックリとしたまま、席に座るやゆっくりと机に突っ伏す彼に雷太は驚きもせず、淡々と迎える。
「雷太の言う通りだった。」
「…だろうね。」
なんとも平和な時間だろうか、と雷太はこちらをチラリと見ては未来に無理矢理、視線を戻される桃の姿にしみじみと感じた。
助けを求めようにも彼女が桃の体を押さえ付けている為、それも叶わず、その場しのぎの嘘を次々と桃は言ってしまう。
それほど的確に桃の痛い部分を言及する未来に、素直に感心してしまうほど、駆け引きが上手かった。
そうして満足げに帰っていく未来とは裏腹にげっそりと窶れた様に疲れた顔をする桃は果たして、いくつ約束してしまったのだろうか。
それが自分に関わりませんように、と雷太は心の中で祈っていた。




