おっさん、美味しいところに登場する
ねぼけて同じものを投稿してしまいまいました。
こちらが正しい部分です。
「ヤマダよ、言われたとおりにしたが、これが人間どもの言う最強魔法兵団か?」
古代竜ゴールドの目には哀れみが浮かんでいる。それもそのはず。先程から、魔法兵団の兵士が放ってくるレベル3程度の攻撃魔法など、魔法無効化のバリアで全て防いでいるし、剣や槍による攻撃はチクチクともしない。
それでいて、ギャーギャーと勇ましい声を上げて向かってくる。どの兵士の目も真剣だ。この巨大なドラゴンを倒すべしと決意に燃えている。0.00001%の可能性もないのにだ。
アリが人間に向かって攻撃してくるのと同じだ。何十万、何百万ならともかく、1000人程度なら鼻息で吹き飛ばせるレベルである。
「ゴールド様、強いでモグ」
「次元が違うよな。こんな強いモンスターがいるのに魔族が負けているという事実が理解できない」
(それだけ、勇者が強いということか……)
現在、ヤマダとモグ子は古代竜ゴールド・サックスの背中に乗っている。エリスはこの混乱に乗じてチョコを救い出そうと建物の影に隠れているのが見えた。
(エリスさんの潜入は成功したようだな……)
ドラゴンの襲来という緊急事態。役所の中の混乱は想像し難いくらいだ。護衛侍女が侵入しても咎めるものはいない。
「あ、あれはあのいけ好かない貴族」
ヤマダは兵士を指揮する小男を見つけた。昨日、ヤマダを侮辱したジャスト伯爵である。ここへ来るまでにこの伯爵の悪行についてはエリスから聞かされた。ここまで来る途中の町や村で悪魔と恐れられてきた男だ。極悪非道の異端審問官である。昨日も町の子供をひき殺そうとした奴。平民など虫けらにしか思っていない奴だ。
(ああ……ここで奴を葬っても感謝はされるが憎まれはしない。なんだろ、人間の敵の魔族なのに世界の平和を守る正義の味方みたいな気持ちになっているのは……)
ヤマダは一つ深呼吸すると、巨大なドラゴンをそそのかす。
「ゴールド様、そろそろ、ここは正義の鉄槌を下すべきかと」
「うむ。そろそろ面倒だ」
「いっきにやっちゃいましょう!」
ゴールドは息を吸った。泣く子も黙るドラゴンブレスである。
ごおおおおおおおおおおおおっ……。
熱風と炎。ひと吹きで500人の兵士が塵とかした。その圧倒的な力にさすがの魔法兵たちも腰を抜かす。
「ば、ばかな……一撃だと……」
ジャスト伯爵も腰を抜かした。都でぬくぬくと権勢を誇り、最前線でモンスターと戦った経験が乏しいから、高レベルドラゴンがここまで強いとは思ってもみなかったのだ。
「耐熱の魔法をかけろ。対衝撃も最大に。力を合わせてあのドラゴンを倒すのだ!」
「あの、ジャスト伯爵様、どちらに行かれるので?」
命令しながらも建物の奥に逃れようとする伯爵にそう尋ねる副官。総指揮官が逃げ出そうしていることを咎める目だ。だが、ジャスト伯爵は毅然と言い放つ。
「私は後方で指揮を執る。ここでは全体の動きが見えん」
「戦闘はここだけですよ」
「うるさい。ここはお前に任せる。全軍に突撃を命令する」
「伯爵様、無理です。ここは勇者チョコ様に……」
「馬鹿なことを言うな。あの反逆者の力なぞ……」
そう捨て台詞を残してジャスト伯爵は建物へと走り込んだ。勇者チョコを牢から連れ出し、裏の出口から脱出するつもりだ。都へ連行すればそれで任務は終わりなのだ。
(そうだとも……あのような化物と戦う必要はない。俺はジャスト伯爵様だぞ)
*
建物へ駆け込んだジャスト伯爵は、そこでメイド服を来た女性が牢屋へ向かっているのを偶然見かけた。
「貴様は護衛侍女だな、勇者の人形め!」
エリスは振り向いた。すぐに反応すれば貴族の男くらい一撃で倒せる戦闘力をもっているのだが、護衛侍女は目上のものに対しては精神的に束縛される。それは育成過程で精神的にがんじがらめにされるのだ。
よって、エリスは平伏するしかない。少し腰を落とし、主人に対する礼節を示した。その姿に余裕を取り戻したジャスト伯爵。エリスの豊かな胸の谷間に目を釘付けにして卑猥な言葉を浴びせかけた。
「人形にしてはいい乳をしているではないか。今宵の伽はお前に命じよう」
「わ、わたしはチョコ様の直属の護衛侍女……そのようなことは……」
「勇者は反逆者だ。反逆者の財産は帝国のもの。すなわち、私のものだ。スタン!」
ジャスト伯爵は魔法を唱えた。魔法には抵抗力のある護衛侍女だが、服従の意を示していたため、この魔法をレジストできない。スタンは下位の魔法。5分ほどの体の自由を奪う。エリスは麻痺して地面に転がった。手足がピクピクと小刻みに痙攣して自由に動かせない。
「こうなると護衛侍女も可愛いものだな」
ジャスト伯爵はエリスの肢体に我を忘れた。少しはだけたメイド服のスカートから見えるガーターベルト付きのストキングは男を狂わせる。
「触るな……私に触るなら後で相応の罰を……」
「ふん。護衛侍女如きが、そのようなことができるものか。お前は私が十分楽しんだあと、兵士の慰みものにしてやる。勇者もそうだ。都へ行くまでに盛大に辱めてやろうじゃないか」
ゲスである。まさにゲス。神に仕える異端審問官らしくはないゲス発言。だが、護衛侍女であるエリスは体が動かない。魔法効果で自由が奪われている。
(誰か……誰か助けて……チョコ様)
その時だ。エリスは体がふわりと浮かんだこと気づいた。そして自分を抱き抱えた人物の顔を見て驚いた。
(ヤ、ヤマダさん!)
ウサギ男ヤマダである。おっさんである。
ヤマダはドラゴンの背中から降りてチョコを救い出すために建物の中へ入ったのだ。そこでこの場面に出くわした。考えるまでもなく、足が勝手に動いた。ウサギ男の能力『脱兎の如く』の発動である。
「な、お前はあの時の改造人間!」
一瞬で目の前のおいしい果実を奪われたジャスト伯爵は、少し離れたところに移動したヤマダとエリスを憎らしそうに見る。
「エリスさん、大丈夫ですか?」
「ヤ……マ……ダさん……」
エリスにかけられた魔法は低レベルである。なんとかしゃべれるくらいまでに回復したが、あと3分ほどは効果が持続するため、戦闘には加われない。
「あと3分は効果が切れません……あの伯爵は中レベル程度の魔法が使えます。気をつけて」
「ここは俺に任せておけ」
ヤマダはかっこよくエリスを物陰に下ろした。3分時間を稼げば、この護衛侍女は本来の力を取り戻すであろう。




