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おっさんウサギ男は女勇者にプロポりたい!?  作者: 九重七六八
第3章 ヤマダ、仕事に励む
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野菜売りのバイト

「チョコ様。今日のアプローチはいささか雑だと思います。わざと失敗して、てへペロが許されるのは10代までです」


 チョコの机を雑巾で拭きながら、エリスはそうチョコに今日の出来事へのコメントを話す。チョコの顔は真っ赤である。失敗に突っ込まれるのも恥ずかしいが、あの自分の姿を思い出すだけでも恥ずかしい。


「わ、私はこの本に書かれていることが本当か試しただけです」

「はあ……。そんな本、人によりけりです。チョコ様には合わないかと……」

「そ、そんなことはない。ヤマダさんは……」

「とにかく、チョコ様。勇者としての自覚をもってください。あんなおっさんウサギ男なんかに構っている暇はありません」


 そう言うとエリスは来週の予定をチョコに告げる。来週は帝国の都から招集がかかっており、そこへいかないといけない。都までは馬車で2週間以上もかかる旅になるが、主要都市に住んでいれ移動魔法『ゲート』があるから、1日もかからない。多少の時差はあるから時間を計算する必要はあるが。


「それにしても、ヤマダさんの事務処理能力はすごいよ。やっぱり、ヤマダさんはすごい」


 チョコは一心不乱に仕事をしていたヤマダの姿を思い出す。思い出しただけで、もう体がウズウズして液体に溶かされていくようだ。


「あの真剣な顔」

「集中力」

「そしてミスを見逃さないするどい目と頭」


 本当は殺されたくない一心で、老眼になりかけの目を酷使し、頭脳をフル回転させていたのだが、その姿が勇者チョコの心を虜にした。それでポーッとヤマダを見続けてしまい、いつもの仕事量の半分も進まなかった。


「ねえ、エリス、仕事のできる大人の男の人って、すごくいいよね~」


(な、何をいっているんですか、チョコ様~。おっさんですよ、ウサギ男ですよ。さっきの姿は殺されたくて必死に仕事していた小心者としか私にはみえませんでしたよ~)


 バケツで雑巾をすすぎ、キュッと絞ったエリスは力を入れすぎた。布の繊維が半分までブチブチと切れてしまった。


「チョコ様、やはりヤマダさんに固執するのはあまり感心しません。あの人は何か隠していると私は思うのです」


「隠している?」

「そうです。そもそも、あの人は魔界からこの町に送られたモンスターの集団の一部だったんですよ」

「それもそうね」

「私を置いて、エヴェリン様とささっと退治に行ってしまわれましたが」

「ああ、あれはちょっと運動したい気分だったから」

「私が寝ている隙に討伐に行くのはヒドイと思います」

「あれはエヴェリンさんが急に行きましょうとか言って、夜中にやってきたからです。それにあのモンスターの構成じゃ、あなたの出番はなかったですよ」


「それはそうですが……」


 エリスは唇を噛んで言葉を止めた。自分が参加していれば、ウサギ男など瞬殺で葬ったに違いない。そうすればチョコがあろうことかおっさんウサギ男に恋するなんて事態は避けられたはずだ。


「とにかく、あのウサギ男は何かを隠しています。注意してくださいね!」


 護衛侍女の主張に(むう……)と膨れた勇者チョコであった。



 勇者パーティの初仕事を終えたヤマダ。疲労困憊しているが、今日はバイト初日でもある。バイトは野菜売りの手伝い。午前中に注文した顧客に届ける仕事だ。探しに探してやっと見つけたバイトだ。勇者の保証がされた首輪をつけているので、信用ということでは問題がないがおっさんがネックで、なかなか見つからなかった。いくつも断られた末に見つけたのがこのバイト。野菜売りのおばさんは、ヤマダがウサギ男と聞いて足が早いだろうと期待して雇ってくれたのだ。


(期待はしてくれたが……)別に足が早いわけではない。ウサギの改造人間なのにそこの補強はしてくれなかったようだ。


 それでもヤマダは小さな荷車にキャベツやニンジン、ジャガイモなどの野菜を乗せると、配達に出かけた。少し走るだけで息が上がってしまうが、ここはおばちゃんの期待に答えないといけない。

 

 ガラガラ、ガシャン、ゴトン……。小さな荷車は木製である。そして車輪も木製。町の道路は石で舗装されているところもあるが、土のところもあり、そういうところは車輪が溝にはまって動きが悪くなる。


「よいしょ!」


 そういう時はお腹に力を入れ、足を踏ん張って荷車を引くしかない。これだけで随分と時間のロスをする。


(ううむ……この荷車の改良が必要だな)


 配達はいかにスムーズに行うかがポイントとなる。道の改善は無理だが、荷車の改良で効率がアップするとヤマダは考えた。


(俺はどこの世界にいっても、仕事のことを考えてしまう……)


 おっさんの性である。野菜は町にある大きなレストランや冒険者や旅人が集う宿屋や、貴族や金持ちの商人の屋敷に配達する。その数は30軒ほどである。


(効率よく仕事する方法は他にもある)


 ヤマダは野菜売りのおばちゃんがくれた地図を見て、しばし考えた。そしておばちゃんが示したルートを少し変更した。


 2時間後。野菜売りのおばちゃんは、ヤマダが予定よりも早く帰ってきたので驚いた。昨日まで3時間以上かかっていたからだ。


「ウサギ男だから、足は早いと思っていたけど、予想以上の早さだね」


 そう感心している。だが、ヤマダは首を横に振った。


「いえ、足じゃないですよ。俺はウサギ男ですが足は普通の人と変わらないです」

「あらまあ……ウサギさんなのに足は普通なの?」


 ちょっとだけ傷ついたヤマダだがおばちゃんの言葉には嫌味がない。野菜売りのおばちゃんは少し小太りでヤマダよりも年上。夫が作る野菜を市場で売って成形を立てているやり手のおばちゃんである。ヤマダを嫌な顔をせず雇ってくれたから、人のいいおばちゃんといえるだろう。


「ルートを大幅に見直したのです。今までやり方だと5箇所ほど同じところを往復するムダがありました」


「へえ~。今までそんなことを考えもしなかったよ」


 ヤマダは地図でどう変更したのか説明した。確かにヤマダが考えたルートだと一度も同じところを通らない。


「それだけではありません。配達する量を考えて、まずは大口のお客さんから配送しました。そうすると荷が軽くなるから早く荷車を動かせるのです」


「……それだけで1時間も。これは驚いたよ」

「ついでに……注文先も見つけました。小口なんですが、明日からルート上のこれらの屋台に配達ができます」


 ヤマダは配達の途中に小さな屋台が何件もあるところを見つけた。みんな仕入れは朝行うのだが、昼の売れ行きによって材料が足りなくなることがある。それはほんの少しなのだが、なければ売り切れで店を閉めないといけないから、ヤマダが売ってくれるのは助かるのだ。


「小口って……ここにはキャベツ半分、ここはニンジン3本……。こんな細かい注文を受けてきたのかね」

「キャベツ半分でも10件集まれば5個分になります。ルート上なら効率も悪くなりませんし、売上げも増えます」

「ほう……わたしはあんたを雇ってよかったよ。ほぼ二倍の収益なるよ。ヤマダさん、改造人間なのに商売上手だね。これは給金を弾まなきゃ。明日から仕入れも多くしないと間に合わないね」


 この野菜運びのバイトは1日で銀貨2枚である。これは約4時間分のお金。それを半分で稼ぐことになる。セールスで取引先を増やしたから、届け先は倍になったからバイト料は倍増ということで話はついた。


 だが、ルートの改良だけではこれ以上の配達先は増やせない。それに運ぶ野菜の量が増えれば荷車で運べる量を超えてしまう。


「それでおばさん、この荷車を改良しようと思うのだけど」


 ヤマダは荷車の改造を思いついた。荷が増えて重くなってもスムーズに車輪が周り、運ぶヤマダの負担が軽くなるようにするのだ。


「ああ、ヤマダさんがそういうのならどうぞやってください。その荷車はヤマダさんの専用だし。仕事が楽になるのなら文句は言わない」

 

 おばちゃんから許可を受けたヤマダは、早速、馬車を製造している工場に荷車をもって行くことにした。


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