7話
「いらっしゃい。泊まりかな?」
宿の女将が出迎えてくれた。
「はい。どのくらいになるかは、まだ決まってないのですが、後払いってできますか?」
「ああ、もちろんだよ。」
その後は簡単な手続きをすませ、部屋に入る。
そして気付く。
「アパートじゃん!!!」
見た目も今までにみたアパートのようだったが、中までもアパートだとは………
部屋の作りは2DKだった。この部屋に似た部屋がいくつもあるのだろう。
「マスター、あぱーととは何でしょうか?」
「それはな、この宿みたいなところを俺の故郷でアパートと言ってたんだ。」
「なるほど。では、この街の宿屋は全てアパートですね。」
「何だと!!!」
台無しである。異世界に来てしばらくは、アパートで寝泊まりするとか。
「とりあえず、中に入ろう。」
玄関で靴を脱ぎ奥に進んでいくと、和室とベッドが置いてある部屋があった。
勇者はどれだけ、アパートにこだわってるんだ。
「そういえば、お金どうしよう。外で食べるなら、お金ないぞ。」
そうなのである。俺達は一文無しなのだ。
「マスターはとても強いので、魔物狩りなんていかがですか?冒険者協会で売れば、結構なお金が稼げますよ。」
「お!いいねそれ。採用!!」
「あ、ありがとうございます。」
うん。これを天使の笑顔と言うんだね。
「それよりも、今日のご飯だな。俺はもう限界が近いな。」
「それなら私にお任せください。必ずマスターがご飯にありつけるように頑張ります。」
あ、リリーはまた寝てる。忘れてた。
リッカは、部屋をでようとしていた。
「あ、ちょっと待ってくれ。もう暗いし一緒に行くよ。」
「あ、ありがとうございます。」
リッカは宿の正面の居酒屋に入っていく。
俺もリッカに続き、中に入っていく。
「らっしゃい!」
元気な声が帰ってきた。
「何かおいしいものをください。」
「あいよ。とりあえず、どっか座りな。」
適当に座って待っていると、店主がチャーハンを持ってきた。
「あいよ。チャーハンだ。食べ終わったら、お皿を持ってきてくれ。そこでお金も貰うからな。」
「わかりました。」
と笑顔で返すが、俺達は一文無しなのだ。
どうしよう……
「リッカは何か作戦があるのか?」
「もちろんです。お任せください。」
リッカは余裕のようだった。
とりあえず、チャーハンを食べてしまおう。
うまい。美味しい。手が止まらない。
すぐに食べ終わってしまったので、店内を見回していると
「先に宿の方に戻って下さい。すぐに戻りますので。」
「ああ、わかった。」
リッカには作戦があるようなので、任せてみよう。
席を立ち、店主に軽く挨拶してから店を出る。
「今日は何か色々ありすぎて疲れたな……」
部屋に戻り、今日一日を振り返っているとドアが開いて誰かが入ってきた。
「リッカお帰りー」
「あなたがユーリ様ですか。」
リッカじゃない人が入ってきた。入ってきたのはお爺さんで、
どこにでもいるようなありきたりな格好をしていた。
俺は思わず、力を使って右手に剣を出現させる。
「ご安心下さい。私は敵ではありません。」
「じゃあ何だ?」
敵ではないと言われて、はいそうですかとなるはずがない。
「ご安心下さい。リッカ様のことでお伝えすることがございますので、
それをお伝えすれば私はすぐに去ります。」