3話
「武器を捨てておとなしく荷物を渡せば殺しはしねぇ。四人と一人じゃ勝負は見えてっからな。」
盗賊のリーダー格のような男が叫ぶ。
こいつら自分たちの情報を正直に叫びやがった。
自分たちの情報をしゃべる奴は三流以下だな。
それとも、俺に勝てると絶対に自信があるのか?
あ、そうか。俺は武器も持っていないから勝てると思ったのか。
荷物は後ろに置いてきたと思っているのか?
まあ、そんな事よりも獣人だ。
獣人は俺よりも小さく顔立ちの整った女の子だった。頭からは、狼?のような耳が生えていた。正直に言おう。可愛いな。
「おい、聞いてるのか?」
盗賊のリーダー格のめんどくさいからリーダーでいいや。リーダーはいつものように慌てふためく様子が見られず少し頭にきているようだ。
そろそろ、こちらも動くか。
「リリー少し静かにしとけよ。」
ポケットの中のリリーに小さな声で声をかける。
「了解なのです。でもご主人様が危なくなったらリリーも戦うのです。」
「わかったよ。それまでは静かにしとけよ。」
ついでに盗賊たちにも声をかける。
「お前ら武器を捨てておとなしくケモ耳モフモフな子を解放しろ。お前らじゃ俺には勝てない。」
決まった。
「な、何を言っている。大切な今回のお宝だぞ。そ、それに四人と一人じゃ勝負にならねぇだろう?」
「そうか解放しないか……じゃあ、ねじ伏せるしかないか。」
「お前になにができる。見たところ武器はなにも持っていない。そんなので剣を持った、男四人に勝てるのか?」
「まあ、それに関してはやってみればわかることだ。」
「お、お前らやっちまえ!」
リーダーは子分たち合図を出した。それにしても、合図も酷いなこれ。
そして、一番最初に動き出した奴に向かって近くまで動かしておいた剣を足に向かって飛ばす。
そう、動かせるのだ。ラジコンみたいな感じで武器を動かすことができた。
これはさっきわかった事だ。
リリーによると俺の心だからある程度は自由に動かすことができるそうだ。さらに武器の見ているであろう景色が視野は狭いが見えるのだ。
「うぁぁぁぁぁぁ!」
足に剣が刺さり声を上げる。作戦成功だ。
こうして、俺の初の対人戦は幕を上げた。
しかし、俺の初の対人戦は一瞬だった。いや、しょぼかった。
何故なら盗賊の足に剣を順番に軽く斬っていったら相手が降伏したのである。
「大丈夫か?」
俺はへたりと座り込んでいる獣人の女の子に声をかけた。
え?盗賊たち?そんなの後回しに決まっている。盗賊たちと俺たちのいる場所の間には、剣を盗賊たちに見えるような位置に浮かせている。時々、武器の見ている景色を見る事によって不意打ちにも対応できる。問題ナシだ。
「大丈夫か?」
さっきよりも、大きな声で呼びかけても万能がない。
獣人の女の子の体を軽く揺らしてみるが反応がない。
あ、気絶してるわ。
あ、後ろの盗賊たちも動かないと思ったら気絶してたわ。
あ、武器浮いてたらびっくりしちゃうか…
「リリー終わったぞ。でもまだ出てくるなよ。みんな気絶してるだけだからな。」
「了解なのです。」
小さな声でリリーから返事が返ってきた。
可愛いな。
みんなが気絶しているし、その間に片付けるべき物を片付けしちゃいますか。