23話
「宿屋はこっちなのです!」
マップを見ることのできるリリー先頭に宿屋に向かって歩いていく。
5分後くらいだろうか、宿屋に到着した。
中に入ると10歳くらいの女の子がカウンターのようなところに座っていた。
「いらっしゃいませ。泊まりですか?」
「2部屋頼む」
もちろん俺と他の人達と部屋は分けるべきだと思う。
もちろん部屋が空いていればの話だが。
「すいません。今日は一杯でして一部屋なら問題なく空いてますよ」
「じゃあそれで」
他の宿屋の位置を知らない上にもう満室かもしれない。
ならば部屋を分けられなくてもここに止まった方がいいと思う。
それに後から知った話だがリリーは部屋の空いてる宿屋で一番近いところまでナビしてくれたらしい。
カーナビよりも優秀なんだね。
いや別にリリーをカーナビと思っている訳ではないけど。
「一泊は銀貨5枚、その他ご飯やお湯は追加料金です」
「まだ何日泊まるかは決めてないんだ。その場合はとりあえず一日分のお金を払えばいいか?」
学園のある街は割と近いらしく歩きでも多少盛って2、3日で着くらしい。
おそらくこの距離は俺には遠いと感じさせるがこの世界の街の感覚的には近いのだろう。
それに入学試験シーズンまであと1ヶ月ほどあるらしい。
つまりまだこの街でのんびりしていてもいいのだ。
まあ向こうの街まで行っても何の問題もないのだが。だからこその滞在期間未定である。お金もケシルさんに貰ったしね。
「もちろんですよ。期日が決まったら、出ていく前日までに声をかけてくださいね」
「わかりました」
「では、お部屋まで案内しますね」
この女の子すごいな!
最初は両親のお手伝いだろうと思っていたが、接客を見る限り店主と言われても驚きはしないだろう。10歳ってこんなに立派だったけ?俺の知ってる10歳はもっと人の周りの走り回って落ち着きのない感じだったと思うんだけどな……
「こちらがお客様のお部屋です。なにかありましたら下にいますので声をかけてくださいね。ごゆっくりどうぞ」
と言って下へ降りていった。
この宿は2階が宿泊スペースで1階は飲食スペースのようだ。
とりあえず部屋に入ろう。
部屋は4人部屋でベットが4つおいてあるスペースと荷物が置けるスペースがあった。
とりあえず荷物が置けるスペースに腰を下ろした。今後のことを話し合うためだ。
それにリッカに聞きたいことが1つあるのだ。
「じゃあ、まだご飯まで時間あるし、今後について話し合おうか」
そうしてリリー、リッカ、ユラが集まる。
「え?今後?まさか特に目的もなくこの街に来たわけ?」
「いや、あるよ。目的。協会で聞いてただろ。学園に入りたいんだよ」
ユラは納得してくれたようで円になるように座った。
「じゃあこれからなんだけど、試し斬りも兼ねて軽く魔物狩りでもしたらどう?」
いいと思います。了解なのです。わかった。と次々に返事が返ってきた。
3人とも同意のようだ。
冒険者協会には買い取りカウンターがあるらしく、魔物から採れる様々なものを買い取ってくれるのだ。ありがたい。
「じゃあ明日から早速、狩りに行こうか」
はいなのです!とビシッとリリーが敬礼を決める。恐らくは街に入るときにいた衛兵のモノマネだろう。衛兵め変なことを教えやがって、だが可愛いので許そう。次はないと思えよ!
誰に言ってんだろう……
「じゃあ次ね、答えたくなかったら答えなくても良いんだけど、ケシルさんって何者?」
これメチャクチャ聞きたかった。
理由はこれ。この紙。
ケシルさんから貰った革袋に入っていたのだ。
内容はよくわからなかったが、わからなかったらリッカに聞けと書いてあったのだ。
「し、ししょではなくて、ケシルさんですが私の師匠です。ケシルさんがどんな人かという事でしたら少し長くなりますね」
「長くてもいい。教えてくれ」
リリーはカクンカクンしているが、俺とユラは興味津々である。
まあしょうがない。よい子は寝る時間だ。
「少し前のお話です。私が物心つく頃からケシルさんはずっと側にいました。ずっとです……」