1話
目を開けるとそこは、だだっ広い草原にいた。
しばらくぼーっとしていると、何か飛んできた。
よく見ると、妖精だった。この世界には妖精がいるのかと感心していると
「ご主人様なのです。ご主人様聞いてるのですか?」
妖精が話かけてきた。
「はいはい、聞いてますよ。ところで、何で俺がご主人なんだ?契約なんかした記憶はないんだが」
「ご主人様はご主人様なのです。なぜかと言われても困るのです」
どうやら、妖精にもわからないようだ。
「まずは、ご主人様に名前をつけてほしいのです」
えー俺はあまりネーミングセンスはないと自負しているのだが、可愛くおねだりされたらつけないわけにはいかないな。それに、従者の名前がないのも不便だな。名前、考えますか……
小一時間後
「よしお前の名前はリリーだ」
「リリーですか。名前気に入ったのです。これからよろしくなのです」
「こちらこそな」
一応気に入ってもらえて良かった……
「これからどうするおつもりなのですか?」
「近くの町に行ってみようと思う」
「了解なのです。案内するのです。その前にこちらに走ってきているボアをどうにかした方がいいと思うのです」
なぜわかったのか、ボアは普通に猪のことか、どうやって倒すかなど疑問はつきないがとりあえず行動を起こすべきだ。
「俺が戦って勝てる相手?」
「ご主人様なら間違いなく無傷で勝てるのです」
マジですか!ボア弱すぎだろ、いや俺が強いのか?わからん。とりあえず、近づいて蹴って転がすか…
「じゃあ、ちょっと戦ってくる」
「リリーも行くのです。ご主人様のポケットに入るのです」
リリーは俺の胸ポケットに入った。なお、服は死んだときの格好のままである。
「行くぜ50メートル10秒ダッシュ!!」
俺は運動は得意な方ではなかった。去年の体力測定でも平均ぐらいだったし。
じゃあなんだろう。このスピードは。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
「ご主人様、このスピードじゃ50メートル10秒ダッシュにはならないのですよ」
「冷静なツッコミありがとう、リリー。でもな、スピード落ちないんだわ」
このままだと絶対にボアにぶつかる。俺は覚悟して目をつぶり歯を食いしばる。
しかし、いつまでたっても衝撃はやってこない。
「ご主人様もう目を開けても大丈夫なのですよ。ボアはどこかに飛んでったのです。それにしても、速かったのです……さすがリリーのご主人様なのです」
リリーは笑顔で先ほどの戦い?を解説している。
確かに、この先の木の下に猪のようなものが転がっている。まさか、あそこに転がっている猪とぶつかったのか?
「ボアがあの木の下に落ちたときはホントにビックリしたのですよー」
あ、そうなのですか。解説ありがとリリー。
これは間違いなくある程度の魔物を退けられる力だな。身体能力強化かな?
いいね。派手じゃないのは目立たなくていいし、これなら最悪の場合特訓の成果とか言ってもごまかせそうだ。
「よし。ボアの確認をしに行こう」
「了解なのです」
そう言って、俺は走ってさっきのように止まれなくても困るので歩いて向かった。
「そういえば、さっきはどうしてボアだとわかったんだ?俺にはゴマ程度にしか見えなかったぞ」
俺は自慢ではないが、視力はかなりいい方だ。そんな俺でも見えなかったということは、魔法かな?
「リリーはマップにボアがこちらに向かってきているのが見えたのでお知らせしたのです。」
なんと!マップ!?地図が見えるのかな?何にしてもこれはこれから大事だな。
「他にはどんなことができる?」
「リリーは人間サイズになれるのです」
マジか!
「早速なってくれ!」
「了解なのです」
そう言うと、リリーが白い光に包まれていった。