17話
「急いでください!この街から、いえ、できることならこの国から急いで出国してください!」
「落ち着いてくださいな。状況を教えてください」
屋根の上から聞こえた、声はとても焦っているようだった。
すっーはー、と深呼吸が聞こえた。
「奴らに場所が特定されました。今夜には到着すると思われます。奴らも、他国までは手が伸ばしづらいはずです」
「わかった。それで、どの国に行くのがオススメ?」
俺には、土地勘がない。
逃げろ、と言われてもどっちが国境かさえわからない。
「そうですね……アビス公国なんてどうでしょう。その国なら、この街から乗り合い馬車がでています。今日中にで出発するはずです」
「わかった。その国に行く」
「ちょ、ちょっと、いやだいぶ話が見えないんだけど」
「後でな」
今は、何も知らないユラに説明している暇はない。
後で説明しよう。
「早速、準備するよ。後はまかせとけ!」
「ここに乗り合い馬車の代金が入っています。よろしく頼みましたよ」
屋根の先から、袋が垂れている。
それを、取るとなぜかそこにはケシルさんはもういない気がした。
だが、今ここでいるかどうか調べでもどうしようもない。
馬車がでるのは今日だ。急がなくちゃ……
そう思い、ドアを開けるとリッカとリリーが玄関にいた。
「二人ともこんなところでどうしたの?」
リリーはもちろん、さっき買った、洋服を着ていた。
つまり人間形態である。
「先ほど、私のお師匠様が来まして、いつでもでれる準備をしていまして、今終わったところです」
リッカのお師匠様?誰だろ?
とりあえず、お師匠様に感謝。
「ユラ、荷物は今持っているのが全部か?」
今ユラが持っているのは、肩掛けバックだけである。
「もちろん、だってこのバックは無限に物が入る、魔法のバックよ。全部入れてある!」
それはよかった。
というわけで出発である。
……とその前に宿の料金払わないとな。
後払いにしてたっけ。
というわけで一階、管理人部屋。
「え?もう料金はもらったよ?」
宿のお金を払ってくれる人なんて、前の世界にも、この世界にもいないはず……
いや、可能性として考えられるのはただひとつ。
ケシルさんしかいないな。
今度お礼を言おう。
そんでもって、この街から出る乗り合い馬車が止まっているところへ移動。
「こっちなのです!」
パタパタ、と裸足で走る、マップが見える、リリーが先頭だ。
そう裸足である。靴なんか忘れてた。
いいや、次に行く国で買おう。
「こっちの方が近いです」
途中で、リッカが近道を伝えて裏路地へ。
「ま、待ってー」
一番後ろは、ユラである。
ゼェ、ハァ、と息を切らし、ユラよりも前にいた俺たちに合流する。
「おいおい、遅せーぞ。おいてっちゃうぞ」
「あ、アンタたちが早すぎるのよ。私は普通!」
肩で息をしながら、必死に自分のせいではないことを主張する。
「そんなに、疲れたなら、おぶってやろーか?」
「だ、大丈夫よ!普通に走れる!」
そんなこんなで、馬車が見えてきた。