14話
「ユーリさん、どうです?」
「まあ、いろいろあったよ。そんでもって、お前を預かることにした」
ユラがホッとしたような顔をした。
「何で、預かることにしたのでしょうか?差し支えなければ、教えてくださいませんか?」
ホッとしたのは一瞬だった。
今度は、さっきまで拒否していたのに、態度がいきなり変わって不安になったようだ。
「そうだな……、一番の理由は、これかな」
俺は手に持っていた、紙をひらひらとユラの前でやってみせる。
「その紙に、何かあったのでしょうか?」
「それよりも、お前『忠義の儀』って知ってる?」
リッカの質問よりも、こっちの方が大切。
これがわからないと、あの情報は、どうでもいい情報だ。
これで知らなかったら、カーリエルに苦情を言わないとな。
「もちろん、知ってますよ」
「私も知っています」
二人とも知ってた。とりあえずよかった。
「まあ、実践経験ないですけど……」
「残念ながら、私もです」
二人とも、やったことはないのね。
まあ、『忠義の儀』だからね。
忠義を誓う相手がいなかった、ということだ。
「じゃあ、今から『忠義の儀』やりたい人いる?」
「「えっ?」」
当たり前の反応だね。いきなり、俺に忠義を誓え!とか言う人がいたら、俺だったら警察に通報してるわ。
それから、誰も喋らず、シーンとした時間が続いた。
なんか、この沈黙した空気嫌だな。
俺がつくったんだけどな。
「わ、私でよければやらせていただきます!」
リッカが顔真っ赤にして答えた。
ありがとう。
これ以上この空気が続いたら、耐えられなかった。
こうなってしまえば、あとはもう時間の問題。
人間、流れには弱いのだ。
一人謝ったら、謝らなければと思ってしまう。
決して、悪いことをしていなくても。
そんな感じだ。
「わかりました。私もやりますよ」
半ば諦めたように、ユラの了承も得られた。
「じゃあ、二人からの了承も得られたことだし、早速やろうか」
「大丈夫なのですか?残念ながら必要なものは、私は持っていませんよ?」
あ!何か、必要なものとかあるんだ!全く、考えなかった。
「私持ってますよ、今必要なものだしますね」
ユラがバックから、取り出したのは、一枚の紙と一本のナイフだった。
「これでどうするの?」
この道具から、考えられるのは、やっぱり血判状かな?
「まずは、ナイフで指を切って血を出すんですけど、まだやらないでください。
最後まで聞いてください」
「え?」
ユラが早速ナイフで指を切ろうとした奴のことを注意する。
え?誰かって?もちろん、俺。
だって、理科の実験とかで先生の話を聞きながらやった方が、成功率高かったし?
「すんません」
一応ユラに謝っておく。
「説明続けますよ?それで、出た血を相手が常に身につけているようなものにかけてください。この後に誓いの言葉を言って終わりです」
「了解。じゃあ、始めるよ!」
「まずは、リッカから」
「わかりました」
リッカと俺の間に、紙を挟んで、座る。
「じゃあ、まずは紙の上に、常に身につけているものを出してください」
ユラの指示に従い、俺のチート能力で作り上げた、手を切るようにユラが取り出したナイフと同じようなナイフを紙の上に置く。
リッカは首にかけていた、ネックレスを紙の上に置く。
「これでいいですね?それでは、始めますよ?」
俺は、ナイフで手を切り、出た血をさっきユラに言われた通りにリッカのネックレスにかける。
キレイなネックレスだった。
ネックレスの先には大きな緑の石があった。
とてもキレイだった。
「終わりましたよ、マスター」
「じゃあ、次ですね。次は誓いの言葉ですね。自分の血をかけた道具を持ってください」
俺は軽くうなずくと、リッカのネックレスを右手に持つ。
「リッカは、ユーリ様のことをマスターとして、一生の忠義を誓います!」
「次、あなたの番ですよ?」
「え?何言えばいいの?」
「何でもいいんですよ。ほら、なんか言わないと」
急に振られても……
俺はアドリブ苦手なんだよな……
「リッカの忠義を受け取り、リッカを我が配下とする」
とりあえず、どっかで聞いたような、偉そうな話し方をしてみた。
まあ、やらないよりはましだな。
「これで、『忠義の儀』は終わりです。お疲れさまでした」
あれ?なんか、あっさり終わっちゃったな。
「次は、私なんでしょう。早く終わらせましょう」