「ないしょだよ?」
今年の元日は初日の出も見えないあいにくの曇り。それでもこの天気には妙に気分が上がってしまう。
「ゆーきやこんこん♪あーられやこんこん♪」
私の隣を歩いている奏ちゃんは、粉のように乾いた雪の降るなかを傘もささずに、頭に雪を乗せて、キシキシと雪を踏み鳴らしながら歌っている。ニコニコしてるし雪が好きなのかな?
私は自分の傘の中に奏ちゃんを入れると、つられて一緒に歌ってしまった……
「降ってわ♪降ってわ♪」
歌唱力は……うん。
2人で向かっているのは仙陽天満宮、この辺で1番大きな神社だ。雪ヶ丘駅から5駅ほど越えた仙陽駅にある。祀られている神様は学問の神様として有名であり、この時期になると学生、特に受験生はみんな訪れるみたい。
神社に向かう途中人がだんだんと多くなってきた。
やっぱりこの時期は人が多いのかな。
神社に着くと、やはり人でごった返している。
「ひとおおいね」
「うん、奏ちゃん逸れないように手繋ごっか」
「うん♪」
奏ちゃんの手を握り、鳥居をくぐって人混みの中へと入って行く。揉みくちゃにされるほど混んではいないけれど、それでもやっぱり人は多い。手を離すとすぐに逸れてしまいそうだ。気を付けないと。
冷えていた身体もすぐに暖かくなった。
奏ちゃんは不安みたい。私の手を握っている逆の手で私の服をしっかりと掴んでいる。チョコチョコと横歩きしてて可愛い。
私は奏ちゃんの不安を消そうとして、
「奏ちゃん、もう少しだよ」
「うん……」
──ドン
「きゃっ」
前を向くの忘れてた。もう、何やってるの私!私は人にぶつかってしまった。転ばずには済んだけど。私の頭の中に『ド』と『ジ』の二文字が繰り返された。うぅ……
「すみません!」
「あぁ、大丈夫。そっちこそ、怪我は無い?」
振り返って声を掛けてきたのは男の人だった。見た目は高校生ぐらい。意外と大っきい?
「大丈夫です」
「おーい、一馬くん。早くー!」
遠くから女性の声がしたかと思うと、この男の人の友人だったようで、私にニコッと笑いかけると、ごめんねと言うと声の方へと走って行った。
良い人で良かった〜、気を付けないようにしないと。
奏ちゃんがチョンチョンと私の腿のあたりを突っついて、
「かなねぇ、だいじょうぶ?」
「うん、大丈夫だよ」
心配かけちゃった。
──チャリーン
──ガラガラガラガラ
──パンッ、パンッ
願い終えると、屋台でおでんを買い、近くのベンチに腰掛けた。
「ふぅー、ふぅー、あふっ、あっふい、はふはふ」
奏ちゃんは大根を一口かじると口をパクパクさせる。白い吐息がホワッと出た。
熱かったのかな?可愛い
私はその様子を見てふふっと笑い、
「奏ちゃん、もっとゆっくり食べないと」
「だって、おいしそうだったんだもん。はやくたべたくなっちゃった」
「でも、火傷しちゃうし、気をつけてね」
「はーい」
奏ちゃんがふてくされて口を尖らせるて言うが、かなり可愛い。思わず笑みがこぼれるほどに。
食べ終わった奏ちゃんは足元に積もった雪を靴で集めて、山を作って遊んでいる。そろそろだね。
「奏ちゃん、そろそろ帰ろっか?」
「うん、おにいちゃんまってるしね」
奏ちゃんは山を足で踏んで崩すと、立ち上がった。
帰りは普通に手を繋いで帰る。行きとは違いスムーズに神社を出れた。駅までの道を歩いていると、
「かなねぇはなんておねがいしたの?」
「私は比呂が合格出来ますようにって、お願いしたよ」
奏ちゃんは目を輝かせている。キラキラって効果音が聞こえてきそう。
「おーー、かなでとおんなじだ!かなでもね、おにいちゃんがしあわせになりますようにって、いっぱいおねがいしたんだよお」
奏ちゃんはいっぱいのところで余っていた手を大きく広げた。
「そっか、同じだね」
「あ、でもこれおにいちゃんにはないしょだよ?」
口の前で人差し指を立ててニーッと笑いながら言う奏ちゃんに、私は何故か涙が出そうになった。
奏ちゃん……良い子だな……
どうしてこんな良い子なのに……
「かなねぇ?」
そっと目に溜まった涙を拭って、
「ううん、何でもないよ」
「かなねぇはおねえちゃんみたいだな」
「私も奏ちゃんのこと妹のように思ってるよ」
「じゃあ、きょうだいだねー」
「ううん、姉妹って言うんだよ」
「そっか、しまい!」
私たちは姉妹のように仲良く手を繋いで歩く。
家に着くと、比呂は机の上で腕を枕にして寝ていた。起こそうとする奏ちゃんを私は制止して、比呂の隣に座った。
私は比呂のほっぺたをぷにぷにと突っつく。柔らかい……
私は寝顔を眺めてそっと微笑んだ。
奏ちゃんと本当に義姉妹になれたらな……
神社で出会った2人は高1です。




