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大切なもの  作者: アンスリウム
中学生
9/22

「ないしょだよ?」



今年の元日は初日の出も見えないあいにくの曇り。それでもこの天気には妙に気分が上がってしまう。




「ゆーきやこんこん♪あーられやこんこん♪」




私の隣を歩いている奏ちゃんは、粉のように乾いた雪の降るなかを傘もささずに、頭に雪を乗せて、キシキシと雪を踏み鳴らしながら歌っている。ニコニコしてるし雪が好きなのかな?

私は自分の傘の中に奏ちゃんを入れると、つられて一緒に歌ってしまった……




「降ってわ♪降ってわ♪」




歌唱力は……うん。




2人で向かっているのは仙陽天満宮、この辺で1番大きな神社だ。雪ヶ丘駅から5駅ほど越えた仙陽駅にある。祀られている神様は学問の神様として有名であり、この時期になると学生、特に受験生はみんな訪れるみたい。



神社に向かう途中人がだんだんと多くなってきた。



やっぱりこの時期は人が多いのかな。



神社に着くと、やはり人でごった返している。




「ひとおおいね」



「うん、奏ちゃん逸れないように手繋ごっか」



「うん♪」




奏ちゃんの手を握り、鳥居をくぐって人混みの中へと入って行く。揉みくちゃにされるほど混んではいないけれど、それでもやっぱり人は多い。手を離すとすぐに逸れてしまいそうだ。気を付けないと。

冷えていた身体もすぐに暖かくなった。




奏ちゃんは不安みたい。私の手を握っている逆の手で私の服をしっかりと掴んでいる。チョコチョコと横歩きしてて可愛い。

私は奏ちゃんの不安を消そうとして、




「奏ちゃん、もう少しだよ」



「うん……」




──ドン




「きゃっ」




前を向くの忘れてた。もう、何やってるの私!私は人にぶつかってしまった。転ばずには済んだけど。私の頭の中に『ド』と『ジ』の二文字が繰り返された。うぅ……




「すみません!」



「あぁ、大丈夫。そっちこそ、怪我は無い?」




振り返って声を掛けてきたのは男の人だった。見た目は高校生ぐらい。意外と大っきい?




「大丈夫です」




「おーい、一馬くん。早くー!」




遠くから女性の声がしたかと思うと、この男の人の友人だったようで、私にニコッと笑いかけると、ごめんねと言うと声の方へと走って行った。

良い人で良かった〜、気を付けないようにしないと。



奏ちゃんがチョンチョンと私の腿のあたりを突っついて、




「かなねぇ、だいじょうぶ?」




「うん、大丈夫だよ」




心配かけちゃった。




──チャリーン



──ガラガラガラガラ



──パンッ、パンッ




願い終えると、屋台でおでんを買い、近くのベンチに腰掛けた。




「ふぅー、ふぅー、あふっ、あっふい、はふはふ」




奏ちゃんは大根を一口かじると口をパクパクさせる。白い吐息がホワッと出た。



熱かったのかな?可愛い



私はその様子を見てふふっと笑い、




「奏ちゃん、もっとゆっくり食べないと」



「だって、おいしそうだったんだもん。はやくたべたくなっちゃった」



「でも、火傷しちゃうし、気をつけてね」



「はーい」




奏ちゃんがふてくされて口を尖らせるて言うが、かなり可愛い。思わず笑みがこぼれるほどに。

食べ終わった奏ちゃんは足元に積もった雪を靴で集めて、山を作って遊んでいる。そろそろだね。




「奏ちゃん、そろそろ帰ろっか?」



「うん、おにいちゃんまってるしね」



奏ちゃんは山を足で踏んで崩すと、立ち上がった。

帰りは普通に手を繋いで帰る。行きとは違いスムーズに神社を出れた。駅までの道を歩いていると、




「かなねぇはなんておねがいしたの?」



「私は比呂が合格出来ますようにって、お願いしたよ」




奏ちゃんは目を輝かせている。キラキラって効果音が聞こえてきそう。




「おーー、かなでとおんなじだ!かなでもね、おにいちゃんがしあわせになりますようにって、いっぱいおねがいしたんだよお」




奏ちゃんはいっぱいのところで余っていた手を大きく広げた。




「そっか、同じだね」



「あ、でもこれおにいちゃんにはないしょだよ?」




口の前で人差し指を立ててニーッと笑いながら言う奏ちゃんに、私は何故か涙が出そうになった。




奏ちゃん……良い子だな……

どうしてこんな良い子なのに……




「かなねぇ?」




そっと目に溜まった涙を拭って、




「ううん、何でもないよ」



「かなねぇはおねえちゃんみたいだな」



「私も奏ちゃんのこと妹のように思ってるよ」



「じゃあ、きょうだいだねー」



「ううん、姉妹って言うんだよ」



「そっか、しまい!」




私たちは姉妹のように仲良く手を繋いで歩く。





家に着くと、比呂は机の上で腕を枕にして寝ていた。起こそうとする奏ちゃんを私は制止して、比呂の隣に座った。



私は比呂のほっぺたをぷにぷにと突っつく。柔らかい……

私は寝顔を眺めてそっと微笑んだ。



奏ちゃんと本当に義姉妹になれたらな……



神社で出会った2人は高1です。

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