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大切なもの  作者: アンスリウム
中学生
6/22

「意外とバカなんだね…」



俺は教室に着くと、さすがに焦って椅子に座り机の上に問題集を開いた。

机に向かう俺を周りが好奇の目で見ている。

多分自分でもこれは見ると思う。



そこへ、男子生徒がバケツを持ちながら歩いて来る。




「おい、今頃真面目ぶんじゃねェ!」




──バッシャーン!




比呂はうつむいたまま固まっている。

金色の髪からポタポタと滴る雫。




水も滴るいい男とはこういうこと?

だが、教室の反応は違う。




笑い声が教室に響き渡る




さすがに頭に来た……




比呂が目線だけを上にあげ、男に向けてギラリと鋭い眼光を飛ばすと、男は怯んだ。




「な、なんだよ……」




声が震えている。

こいつが完全にビビっていることが分かった。




「……失せろ」




低く重々しい声で呟いた。




──ゾクゾクゾクッ




生徒全員に悪寒が走り、教室が死んだように凍りつく。




「チッ」




俺は舌打ちをしてから、カバンを拾い上げると、ビショビショになった問題集を持って教室を出て行った。



俺が通った後には水滴で線が出来ている。




もういいや……

教室に行かなくても勉強は出来る。




俺はそのまま保健室へと向かった。



比呂が立ち去った後の教室はいつもの雰囲気に戻っている。

加奈の前に座る女子が加奈の方を向いて、




「何今の、すっごく怖かったんだけど」



「……そうだね」



「うんまあ、それより加奈濡れてない?」



「うん、大丈夫だよ」



「よかった〜。あいつもやりすぎ、加奈にかかったらどうすんの」




怒るとこそこなんだ……




「そうだね……」




比呂、大丈夫なのかな……?



─────

───




「獅村くんは教室に戻らないの?」




俺は体操服に着替えた。ベッドに寝転がって問題集を開きながら、




「ああ、戻らねェ」




敬語じゃなくなっているんだけど……




「明日からここで勉強するわ」




そう言うと俺は先生の返事も聞かずに、寝転がり、また手を動かし始める。

それを見た先生は頭を抑えながらため息を吐いた。




「好きにするといいわ、どうせ他の先生も何も言わないでしょうから」




その言葉に一瞬だけ手の動きを止めると、俺は何も言わずにまた手を動かした。



─────

───



教室では私は相変わらずボーッと隣の誰もいない席を眺めていた。帰ってこない……




──コツンッ




「あたっ」




私は頭を撫りながら前を見ると、友達がこっちを向いていた。……犯人はあなたね。




「いきなり痛いよ」



「加奈ずっとボーッとしてる、どうしたの?」



「そうかな〜?」



「うん、してる」




自身たっぷりに言い切られた。うぅ…




「受験だから、かな?」



「ふぅーん、そうかな〜?」




苦笑いして誤魔化す私に、友達はニヤニヤしながら私に迫る。



怖い……、笑顔が怖い。




「な、なに?」



「もしかして〜、恋、してない?」



「ふぇっ?」




友達の意外な言葉に私は身体が一瞬跳ねて、眼鏡がズれた。友達はまたニヤニヤしながら腕を組んで、やっぱりと言った。

私はズれた眼鏡を直して、




「そ、そんなことないよ、第一私なんて……」




呆れた友人は加奈のほっぺを軽く摘んで、




ふにゅ〜〜、痛くはないけど、顔が持っていかれりゅ〜〜〜。




「そんなこと言わないの、加奈は可愛いんだから」



「え?そんなこと……、言われたこともないし」



「そう?私思うんだけど、なんでそんな地味な格好してるの?」




友達は首を傾げ、私を見つめる瞳は澄んでいる。




「これは……、そのー……、なんでだろう?」




──ズコーーッ!




私のとぼけた様子に友人は思わずズッコケた。だって本当に分からないんだもん。



友達は机にしがみついて立ち上がりながら、




「加奈って意外とバカなんだね…」



「ふぇっ?そう、なの?」




バカ……




「もういい、取り敢えず明日からそんな格好辞めなよ」



「うん……、分かった」



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