番外編「おにいちゃんやさしいもん」
リンリンリンリンと鈴の音が聞こえてきそうな満月の夜。窓の外は雪がしんしんと降っている。
俺はコタツに座って本を読んでいる。奏は俺にスッポリと収まり俺の身体を背もたれにして座っている。
奏は顔を上に上げて俺の顔を覗き込む。
「おにいちゃん、サンタさん来るかな?」
「来るよ。奏がいい子だから」
「そうかな?じゃあ、おにいちゃんにもくるよね」
「そうか?」
「だって、おにいちゃんやさしいもん」
奏は天真爛漫な笑顔を満開に咲かせた。俺も思わず頬が緩んだ。
「……ありがとうな」
「うん!」
奏はそう言うと顔を下げて首を揺らしながら鈴をふるわすような澄んだ声で歌う。
「ジングルベ〜ル♪ジングルベ〜ル♪すっずっが〜なる〜♪」
─────
───
「おにいちゃん!あさだよ!おっはよ〜!」
今朝は珍しく奏に起こされた。俺は欠伸を噛み殺して奏におはようと言う。
早く起きた理由は何となく予想がついた。
「おにいちゃん、みてみて〜〜〜、ほらっ!」
奏は外から持ってきたであろう、綺麗にラッピングされた2つの箱を指差す。
俺はそれを見て、自分宛てのを手に取ると、奏宛てのプレゼントを奏に渡した。奏の箱の方が大きい。結構大きかった。何が入っているんだろうか。
奏は箱を大事そうに頬に当ててスリスリすると、
「おにいちゃん、ことしもサンタさんきたね!いいこにしてたからだね!」
「そうだな」
奏はそう言うと丁寧にラッピングを剥がして中身を取り出す。入っていたのは赤色のランドセル。奏はそれを背負うと、
「みてみて!にあうかな?」
そう言いながらクルクルとその場で回りながらニコニコ笑う。
「ああ、似合ってるよ」
「やった!ありがとう」
奏は喜んで飛び跳ねるとランドセルを背負ったまま鏡の前でクルクル回ってみたりして、家の中をうろちょろしていた。嬉しそうで何よりだ。
俺はプレゼントの送り主を知っている。いつも俺たちのことを気にかけてくれている人だ。
俺たち2人にとってのサンタクロース。
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