「早く言え」
中学生ラストです。
私は掲示板の前で紙が張り出されるのを待っている。私の受験番号は133、比呂は私の前だから132。はぁ、すっごい緊張してきた。ドクンドクンって心臓が喉から飛び出てきそう。
紙を持った先生がやって来た。丸めていた紙を掲示板に広げると、周りにいた学生が一斉に紙の前に集まる。周りから歓喜の声や泣き声が聞こえる。
それを聞いて私の緊張は最高点に達した。
一度目を瞑って、
ふぅー、リラックス、リラックス。
自分に言い聞かせると、深呼吸して掲示板に目を移す。
「125……129……」
「132……13……」
「……133……」
あった!!!比呂の番号もある!!よかった〜。これで春から同じ高校に通える。
私はホッとして肩を撫で下し、胸の前で小さくガッツポーズをした。
「比呂は来るのかな?」
私は周りを見回して比呂の姿を探すが見つからなかったので、もう帰ることにした。さすがに周りから泣き声が聞こえるのに1人でいるのは耐えれない。
雪ヶ丘駅に着くともうお昼前
「クゥ〜〜〜〜〜」
はっ!お腹が鳴った?誰かに聞かれた!?
私はすぐにお腹をパッと抑えて、指名手配犯のように周りを見回した。
シーンと聞こえてきそうなくらい誰も居なく、風がヒューっと吹き抜けた。
私は安心すると、手の甲で額の汗を拭った。
「ふぅー、誰にも聞かれなk」
「お前、腹減ってんの?」
「……っ!!!!!」
突然背後から声をかけられて、身体がビクッてなる。ギギギッと少しずつ首を回しながら後ろに顔を向けると、
「ひ、比呂!?」
制服姿の比呂が私を見ていた。
うわぁー、比呂に聞かれた。顔から火が噴き出そうだ。だんだんと私の顔が熱くなってくるのが分かる。
もう私の顔は真っ赤っかで茹でダコ状態。
私はその場で固まって、小さくコクコク頷くとそのままうつむいた。
「お前、相変わらずうるさい。あと、今から家に来い」
「え?」
聞き間違いかな?
頭がハテナで埋め尽くされていく。
「今なんて?」
比呂は私の言葉に顔をしかめて、少しイラっとした口調で、
「だから、今から家にこい」
「いいの!?」
「こいっつってんだろ」
「うん!」
私はとびきりの笑顔で笑いかけた。
って、比呂見てない……
比呂は私がうんって言う前に私に背を向けて歩いてしまっていた。
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───
─
比呂が私の目の前に座って、私を真剣な目で見つめている。
「いいから、早く言え」
そんなに真剣に見つめられたら……うぅ……恥ずかしくて言えないよ。
私は正座をして、手を膝の上に置いてしっかりと握り締めて、目を瞑りうつむいている。
「はやく」
比呂は私を急かす。
「……うん」
私は片目を開けて比呂の目をチラッと見た。
比呂の私を見つめる眼差しは揺るぎない。ずっと見ていたらどうにかなってしまいそう。
私はもう一度比呂を両目でまっすぐ見て、口を開く。
「比呂」
比呂の顔もほんの少し強張っている。
唾をゴクンと飲み込んだ。
「……あったよ……番号……比呂の番号あったよ」
「本当か」
「……うん」
私がそう言うと、比呂は何も言わずに口をワナワナさせて少し口角を上げた。目線は下を向いていた。普段あまり感情を表に出さない比呂だけど、この時は少し喜んでいるように見えた。
そんなに嬉しかったんだ……ホッ、良かった。喜んでいるんだよね?そんな顔もするんだ。また少し比呂のことを知れた。
比呂の様子を見ていると私は何だか暖かい感情に包まれた。
その後、ご飯作ったり色々して、
私は新しく来る季節に心躍らせながら家へと帰った。
2人には桜が咲きました。
お昼ごろに番外編を投稿したいと思います。