第一話 〜ある砂浜と少年の悩み〜
今回はある少年の小さな悩み。
悩みの規模は小さくても本人にとって悩みであることには変わらない。
海風漂う砂浜の近く、ある男は黄昏ながら海を見ていた…
「…身長欲しいな。」
そんな客観的にはコンプレックスの悩みとしか思えない問題を深刻に抱えてるのはこの近くの高校に通う、
三島 優だ。
「やっぱり身長ないと男らしくも見えないしな…」
そうぶつぶつと考え込んでいるが普段は楽しそうに話をするムードメーカーの一人なのだ。
何故そんな彼がここにいるかという話はとても単純でクラス委員の柏葉 竜星という男に指摘されたためだ、
『おい、お前何黄昏てんだ?』
ふと誰かがそう声をかけた、そこにいたのはどうやら部活帰りの生徒会長、清川 健人であった。
「あ、生徒会長、部活帰り?」
そう優が返事すると健人は見透かすように先程優が悩んでいた事を聞く。
「いつも元気なお前らしくねえな、なにか小さいことでも指摘されたか?」
優はその問いに答える。
「いや、少し身長のことについて今日指摘されてね…」
今更だが優の身長は167cmとそんなに低いわけでもなく普通なのだ。つまり柏葉 竜星の指摘は簡単に言ってしまえばおふざけの域で別にそう気にする事ではないのだ。故に健人は苦笑いをして優の目を見て言う。
「お前さwこの俺よりモテてるんだしぶっちゃけそれそこまで気にすることないぞw」
健人の身長は169cm、つまり身長は優と変わらないのだ。そして事実、優の方が何故か、モテる。
「そうは言ってもさ、やっぱ少しは気になるよ。だって170のやつとかいるじゃん…副会長とか、あれ絶対モテるやろ…」
そう優が例を挙げると健人が真面目な顔で言う。
「優、ここだけの話だが聞く覚悟はあるのか?」
急に顔を近づけてきた健人に困惑する優は目を逸らして少し困惑しながらだが答える。
「いや…ちょっと…近い…。ていうか覚悟って何!?副会長が何かあったりするの!?」
今二人の話題になっている副会長とは月動 魁聖の事である。
健人は副会長、魁聖の事についてヒソヒソ声で話し始めた。
「…実は副会長、あの顔と身長で未だ童貞でそれ以前に彼女すら出来たことが無い残念な奴なんだ。」
優はそれを聞くと驚いた顔をして健人に詳しいことを聞こうとする。
「え!?じゃああの人あんなハイスペックで未だに残念ってことなの!?」
少し大きな声で聞いてきた優に健人は落ち着く様に促す。
「シー!声がでかい声がでかい!あいつにバレたら殺される!ってか蹴られまくる!!」
そして立ち上がりながら健人はアドバイスをする。
「とまぁ、あれだ。身長が低い高いがあってもモテる奴はモテるしモテない奴はモテない。だから優は、
そんなに気にすることはないし今はもっと自信を持て。じゃあ、俺は帰る。くれぐれも今話したことは魁聖には言うなよ!?」
そんな風に帰っていく健人の背中に、優はこの時少し、憧れを抱いていた。
そしてその直後だった。
…ドパン!!
「!?」
急に海の海水の一部が空へ打ち上がったのだ…
「なんだ!?今の音は!?」
集中してよく打ち上がった部分を見ていると…
…シャアアア!!!
そんな呻き声?の様な音が聞こえ、そして打ち上がった地点には黒い人とも魚とも思えないこの世で存在しないような影が見え、そしてそれはその音と共に普通の魚とは思えないいびつな動きとスピードで海中に消えた…
「えぇ…今のは一体…」
既にこの近辺には人はおらず居たのは優だけだった、つまり目撃者も優ただ一人である。
「…明日生徒会長に話してみよう。ん?」
ふと下を見ると健人のものと思われる学生長があった。拾い上げてそれを見てみる。
「会長の学生長だな…いろいろ書いてある…今日の業務から時間割…その他もろもろこんなに細かく…」
するとある記述に目が行く。
「!?…日之裏学園機密事項怪生物の謎について!?現在調査中って書いてあるけどなんだこれは…さっきのと何か関係が!?」
そしてその記述の一番下には関与しているとされている生徒の名前が書かれていた。
「明神 陸斗!?こいつ俺のクラスの奴じゃないか!?どういうことなんだ!?
…考えても始まらない、とりあえずここを離れよう…」
謎は深まりとりあえず優はその場所を離れた…