文頭
最終的な答えが分からないまま終わるのは悲しいが、答えが分かってしまうのも悲しい。
John Henry Schwarz
物語は『せん』で構成されている。
絵で表すなら無数の『線』で。
文に起こすなら『千』の文字を使って。
遠い過去の人達は、そうやって物語を残してきた。
なら、人生もまた『せん』で構成されているのだろう。
一つの点が生まれ、その点は線を描いていく。
線は千の言葉を覚えて、違う線と交わっていく。
人と人の物語は、そうして紡がれてきた。 だけど、もちろん例外も存在する。中には、ふらふらと歪な線を描き、或いは、ジグザグな線を描いて、誰とも交わらないままの物語を作る人もいる。
それは、傍から見れば可哀想と感じるのかもしれない。
……私は、その逆だった。人に淘汰された人を知り、畏敬し、渇望した。
実際は、一本の線よりも紡がれた複数の線の力の方が大きいことは知っていたのに。
少なくとも共通点があるというのは、惹かれる理由に十分見合った。
『せん』は、そうして物語を象っていく。
そっとページを捲るように……。
どうか、あなたの物語が優しいものでありますように――――。