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可愛い弟の為なら、ヒーローにだってなってやる!

作者: berryberry

俺、天月悟(アマツキサトル)は周囲から英雄(ヒーロー)と呼ばれている。

それは、時間を逆上る事半年前の事……。


その時、まだ僕は天月という名字ではなく小川だった。

そう、母が再婚をしたから天月になったのだ。

浮気性で借金ばかり作っていた甲斐性無しの父親から一変して毎日子供の面倒を見て、母さんを大事にしてくれるよき父親に変わったのだ。

前の親父みたいに男と浮気をしたりはしない、家にオカマが入り浸っていない事だけでも十分に嬉しい事だ。

何度、夜這いされかけたか覚えておらず母と手を取り合って逃げ出した日の事はまだ記憶に新しい。

オカマのやけに強い甘ったるい香水の匂いや、荒い鼻息を思い出すと今でもぞっとするのだ。


そんな感じで、最悪な生活から一点して天国な生活を手に入れた俺は父親と同時に中学生の弟も出来た。

俺は高校一年で、弟は中学三年なので一個違いなのだが身長は143くらいしかなく、非常に小さい。

しかも顔は美人だった母親譲りだったらしいので美少女と間違えそうな容姿だ。

弟の元母親はナイジェリア系アメリカ人と日本のハーフの子だったそうで、非常に美人だったそうだ。

まぁ、それ故お察しの通り股の緩い女で入れ食いしており、お堅い仕事しかしていない今の親父と弟が出来たので出来ちゃった婚をした後に、浮気が原因で離婚をし、原因は養育費も払わずに逃げ惑っているとか。

そんな母から生まれた弟、拓斗(タクト)なのだが性格は非常に温厚で平和主義者。

だからと言って、問題はうやむやにはしないタイプで、一回転校をした事があるそうだが、虐められていた人を庇った事が原因で虐められていた子の裏切りにより転校をよぎなくされたとか。

まぁ、その後拓斗が転校をしたら前の苛められっ子は苛められっ子の戻っただけなので、自業自得と言った所か。

こうしてみると、友情に熱い熱血漢でもある。


そんな弟に英雄と呼ばれ始めたのは、親父の浮気を見破った事と母を連れて逃げ出した事くらいか。

俺にしては普通の事だったんだけど、拓斗からしたら俺は英雄らしい。

おかげで、「兄ちゃん、兄ちゃん」と言いながらひよこのように俺の後ろをくっついてくる。

両親共に、その姿が微笑ましいらしく二人で「あらあらうふふ」等と言いながら嬉しそうに眺めているのだ。


そんな俺だが、高校一年になった事もあり今年の春に現在の地域、親父達が元々住んでいた家に引っ越してきた。

そこで、出会った問題児が佐原琴美(サハラコトミ)

コイツもハーフなので、顔が小さく目は大きく、そして鼻は高いのに鼻腔が小さく、肌は白くきめ細かく、体は細く、しかしまな板だ。

まぁ、胸以外容姿は完璧な美少女だ。

髪も本来は亜麻色なんだろうけど、その証拠に目は茶色だ。

なのに、この佐原は髪を黒く染めている。

この時に、俺は"何かあるな"と感づいたのだ。

悪女には鉄則があり、黒髪、純水そうな見た目、八方美人という三原則がある。

俺を見た時の佐原は、後ろに絶望したような顔の少女と共に歩いている所を見た瞬間に"悪女三原則"に入る女が佐原だと確信したのだ。

後ろからついてくる彼女は、お世辞で言っても可愛いとは言えない、オタっぽそうな見た目だった。

ボサボサな髪に隈のある目元、至るところにニキビの出来た顔、大きい耳、鼻のところに出来た大きな黒子、そして眠たげに見える細い目、太い眉毛といった感じで佐原とは正反対な少女だった。

彼女は、小野有栖(オノアリス)

同じクラスの友人になった男から情報を聞いてみた所、話では小野が佐原を虐めている事になっている。

つい最近も、佐原が大好きな男の子に作ってきた手作りクッキーを、小野が奪って自分が作った事にしたとか。

しかも、佐原が作ったクッキーがとても上手で二人は付き合うという話だ。

ここまでなら、佐原は悪いと思える点はないけれども、問題は佐原が大好きだと言っていた男だ。

それは、村井と言う冴えない男子で、小野の唯一の男友達だ。

「美女と野獣だと思わねぇか? あんな奴と村井がなんてさー」

目の前の男、飛鳥は矛盾等を感じた様子はなく村井が羨ましいと喋るのだ。

そうしている時に、わざとらしく佐原が俺と飛鳥に声をかけてくる。

俺は、そんな佐原を見ると自然と笑顔になる。

……ここまで、解きやすい問題が自分から解決されようと歩いてきたのだ、笑顔になれないはずがない。


俺の頭の中にあるのは「兄ちゃんは英雄」と言う一言の言葉だ。

母さんも「貴方のおかげで助かった」と笑っていた笑顔だ。

絶望しか映してない小野の瞳が喜びで輝く所は、とても好奇心に満たされるのだ。

……そう、俺は拓斗の言葉から本当の英雄を目指し始めた。

その一歩として、佐原には踏み台になってもらう。

計算され尽くした佐原の動きを見ながら、飛鳥は頬を高調させていた。

そして、俺も笑いながら佐原に話しかける。


「……そんな事ないよ、そんな私はそこまで可愛くないし……」

「いやいや、お菓子作りが上手ってだけで充分なのに、見た目も可愛いなんて完璧な女の子だよ!」

飛鳥がそう褒めると、佐原は満更でもなさそうに微笑むのだった。

そうして、佐原が何かを喋ろうとした時に俺は畳み掛けるように喋りかける。

「……ねぇ、そんなに美味しいんならクラスの学園祭用に、今度作り方を教えてよ」

そう言うと、佐原は照れたように顔を隠した。

その瞬間、俺は手慣れた手つきで手鏡を出して反対側の窓に顔が映るように鏡をこっそりと傾ける。

……そこには、鬼のような形相で唇を噛んでいる佐原の顔があった。

運悪く飛鳥にも見えてしまったようで「や、止めよう」と俺を引っ張ってくるのだ。

「……ねぇ、美味しいんでしょ? 彼氏にも一緒にきてもらって、皆で作ろうよ」

「え、えぇと……マ、ママに手伝ってもらったの……」

そう言うと、周りの女子が「話が違う」と顔を見合わせて話し始めた。

明らかに、周りの人達は不満げな表情になっており、佐原の顔が苦しそうに歪んでいく。

「なら、お母さんに教えてもらおう」

「マ、ママに話を聞かないと……」

「小野さんのレシピと、どっちが美味しいか比べようよ」

そう言うと、佐原は泣きそうな表情で俺を見つめる。

周りの人が、驚きながら話そうとする間に俺は畳み掛けるように話す。

ここまで、嘘をうけば簡単に綻びはとれるものだ。

「なぁ、変に続きすぎじゃないか? 聞いた噂は全部可笑しいってわかっちゃったんだ」

そう言って、俺は高らかに笑った。

他の噂なんて聞いてない、でもここはノリで押し切れは簡単に嘘は崩れる。

微笑むと、隣の飛鳥が「嘘だろ」と絶望したように呟いた。

「全部の噂が本当だって確実な事実は証拠はあったのか?」

そう言って、俺が微笑むと何処からか「あらへんよ、全部嘘や」という男にしては高い関西弁が聞こえてくる。

そこには、噂されていた佐原の恋人、村井が居た。

冴えない顔はしているものの、人のよさそうな顔立ちをしていた。

「う、嘘よ! 私のママが手伝ってくれたんだもん!!!」

泣き叫ぶように、佐原が叫ぶ。

すると、隣に立っていた飛鳥が乾いたように笑いながら話しかける。

「なら、お前のお母さんに教えてくれるように言えよ」

佐原は悔しそうに唇を噛み締めながら俺を睨みつけていた。

「凄いな……、わいではできひん事を簡単にするなんて」

そこには、驚いたような顔をして立っている村井が居た。

後ろには、小野が涙を貯めながら嬉しそうに笑っていた。

頬は紅潮されて赤くなっており、今の佐原よりも可愛く見える。

「……そうだな、俺は英雄だから悪役が誰だか簡単にわかるんだ」

そう言って、俺は小野と村井のほうを見て笑った。


翌日から佐原は逃げるように登校拒否になって、そのまま転校をしていった。

最初から村井は、小野を助けようと情報をつかむために付き合っていた事も判明した。

二人は前まで通りの関係に戻ったそうで、2人で仲が良さそうにお喋りしているのをよく見かける。

「お前って本当に英雄みたいだな」

今では親友になった飛鳥と俺はよくつるんで行動をしている。

あの事で、俺のあだ名が英雄になり必要以上に頼まれ事をする事が多くなった。

けれども、やりがいがある役職が多いしまぁいいか程度だ。

「いや、そうでもない」

「どうして?」

「俺が、第三者だったからだ。感化されるのが遅かったから、フィルター越しに事件を見ていなかったのが原因だ」

「それなら、最初からわかるはずだろ?」

「大体、お前らは最初から小野を卑下している事が事件の発端だと思うな」

そう言うと、飛鳥は「ああ……」と納得したのだった。

これが、たぶん他の容姿が普通な子だったら、もっとお喋りが得意な可愛くない子だったらこうはならなかった。

お喋りが苦手で、佐原の幼馴染だったからこそ起こったんだと思う。

あの事件から半年あったけれとも、長くこの学校に居る事でよくわかった。

後日、佐原は別な高校に入学したけれどもあの性格だから虐めにあったと噂で聞いた。

そんな噂を聞いても、小野は信じていないそうだ。

村井から通訳してもらった話によると『世間渡りが上手だから、虐められる子ではない』だそうだ。

通訳をしてもらった事に関しては、小野の喋り方がオタくさくて何を言ってるかわからないから。

独特なゲフゲフという笑いと早口言葉、としてオタク独特の専門用語を使われているもんだから村井に助けを求めたのだ。


正直な所を言うと、幸せそうに笑い合う二人には悪いが意思疎通が難しい所からきた問題だな、と俺は苦笑しながらて「うんうん」と小野の話を受け流した。

一応小野にはもう少しゆっくりとハキハキと喋れとは言っているので、少しづつだけれども会話ができるようになってきた。

飛鳥とも仲良くしゃべれるようになるには、案外短くてコツを掴んだ小野はめきめきとコミュニケーション力を身に付け、その一週間後にはオシャレにも気をつけて可愛らしい女の子にイメチェンしていた

後日、飛鳥に惚れられて村井に守ってもらってるお姫様状態の小野の話は、また別なお話。

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