my lover 6
やっぱ文章書いてる瞬間が一番楽しいわけで……投稿なんて自己満足だと思うんです。読者様に面白いよ、って言ってくれると嬉しいもんですよね
――――――――――After 4 hours――――――――――
今日は部活に参加せず、真っ直ぐ帰宅することにした。相変わらず後ろにくっついてくるレイが、今日はいつにも増してよく喋る。
「やー、ヒナ?ずいぶんマキちゃんと仲良くなって、よかったねぇ。俺以外に友達がいないんじゃないかと思ったけど、全然そんなことないみたいで安心したよ。ヒナも段々成長していくんだなぁ……って、なんでこんなに上から目線なんだろうね、あはは。あ、そうそうヒナ、聞いてよ。昨日家帰ったらさ、母さんが電子レンジの使い方よく知らなかったみたいでさ。卵入れてレンジ爆発させてたんだ4よー!今時卵レンチンしたら爆発するなんて、知らない人いたんだなー、なんて思って!いやーびっくりしたけど面白かったんだ。そうそう爆発と言えば、ウチのクラスの科学の担当のアフロ、今日髪切りに行ったみたいでさ、アフロしぼんでんの!めっちゃ笑ったわー!アフロでハゲごまかしてたのにさ、しぼむもんだからハゲ感丸出し!超うけるったらないよなー」
あぁうるさい。こいつに限って、人間が冬に冬眠しないことを呪うね。
「うっさい、ちょっと静かにできないのかおまえは」
「あ、そう?うるさかった?ごめんごめん。帰り道、話題がないとつまんないじゃない?」
「おまえの話聞いてるぐらいなら、黙々と歩ってる方がマシだ」
「あちゃー、ひどい言われよう」
それからはレイも静かに私の隣を歩いていた。
というか、だ。朝あんなことがあったのに、こいつは何故こんなにもいつもと変わらない態度なのだろう。私なんか調子狂いっ放しだっていうのに。
「……レイ、おまえさ。明後日、誕生日なんだろ?」
気がつくと私は、そんな話題をレイに投げかけていた。
「そうだけど、何か買ってくれるの?」
「バカ言え、おまえ、私の誕生日に何くれたよ」
「ん、イモリの黒焼き」
そう。こいつは私の誕生日(もう過ぎた)に、イモリの黒焼きをくれたのだ。迷惑極まりない。
「ネットで調べたけどよ。媚薬じゃねーかアレ」
「そうだよー。いやー、冗談だよ冗談」
「ふざけすぎだっつーの。媚薬なんか使っても、誰がおまえなんかに欲情するかよ」
「え、使ったの!?」
「使うわけないだろ。バカバカしい」
「やっぱり?」
レイは相変わらずへらへらと笑い、そして私に歩幅を合わせてついてくる。私たちのことを全く知らない人が見たら、こいつが私の従者か何かだろうと勘違いするかもしれない。
「まぁそれは忘れてよ。来年はちゃんとしたのあげるから!」
「はいはい。期待しないで待ってるよ」
本当は嬉しいくせに、口からはそんな強がりが出てくる。そこではっと気づき、これは、来年も一緒にいよう、ということなのだろうか、なんて、とんだ拡大解釈までしてしまう。私もとうとう、頭のネジが吹っ飛んだのだろうか。
「……っと、ヒナん家、着いちゃったね」
「あぁ。じゃあな」
気がつけば私の家の前で、レイはにっこりと、いや、にやにやと笑いながら手を振った。当たり前のことだが、一緒に帰るのはここまで。
「日曜日、楽しみにしてるからね」
「あ、あぁ。……私もだよ、言わせんな恥ずかしい」
「あはは。そのぐらい素直になってくれた方が、かわいいと思うよ?」
「う、うるさいな!さっさと帰れよ!」
「言われなくてもー!ばいばい!」
「じゃーな」
レイはそれから、こっちを振り返ることなく、走って帰っていった。
今思い返すと、その後ろ姿は、いつもより大きく、そして愛おしく見えた。
――誕生日、何か買ってやろうかな。
私は珍しく、そんなことを考えていた。
「……あーもう、ムカつく」
そうぼやきながらも、明日、あいつへのプレゼントを買いに行く計画を立てていた。のだが、
「……しまった」
そう。三人組のことを訊き忘れていたのだった。明日聞こう。