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序章
『 DH 』 シリーズ 第5作
ユナイテッド625便
通路側に座っているサラリーマン風の男が、しきりに、窓の外を気にしている。
窓側に座っている無精ひげの男は、隣の男の視線が、気になって仕方がない。
「落ち着かないのかい?」
「いや、えぇ、まぁ、少しだけ。」
「なんせ、床の下は、空気だからね。」
通路側の男を、高所恐怖症だと推察し、わざわざ、恐怖心をあおるようなことを言う。
そんなことを聞かされた男は、着ている上着の袖で、冷や汗をぬぐう。
「俺も、高いところは、苦手だが、もう、何度も無理やり乗せられているからな。」と、
同情を持ちかけるようなことを言う。
「あぁそうだ、無事に着陸できたら、地に足を着け、ソックスを脱いで、裸足になるんだ。
そして、足の指先を丸めて、地面を掴むようにやってごらん。」
「何かのおまじないですか?」
「あぁ、俺の経験だがね。とても、落ち着くんだ。」
「そりゃあいい、やってみよう。ありがたい。」
「どうってことないさ。俺も昔、教えてもらったのさ。」
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