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第四話「夢想風桜雛」

桜の咲き誇る季節、神社「八万宮」でちょっとした事件が起こる。困る神職・神崎直人に、松夢は同じ神職として協力を約束する_。


プロローグ 春の一大イベント


 



ここは、夢想の世界の南端に位置する神社、八万宮_。

その本殿で、1人の少年が立ち尽くしていた。

彼の名は神崎(かみざき) 直人(なおと)。彼が立ち尽くしているのには当然わけがある。

雛人形が、消えていた。

ここ八万宮では、毎年桜の咲く季節、すなわち春になると保管している大量の雛人形を展示したり大道芸のようなものをしたりする「雛人形展」と呼ばれる行事を行っている。明日、それを実行するために展示用雛人形の準備をしていたのだが_

それらが全て、消えていたのだ。

それも、一夜にして。

直人はただ困惑し、立ち尽くすことしかできなかった_。


 


 


 


 


第一章 夜間泥棒と儚さの桜


 



「やっぱここの桜は綺麗だなぁ」

黒いレインコートを着た少年、想夜がしみじみとした口調で言った。宙を舞う桜色とレインコートの黒が、この上なくミスマッチだ。

「そうでもなきゃ、今夜夜桜見をしようだなんて誰も言い出さないだろうからね。」

ぶかぶかの白い服と青いズボンの少年_松夢が言った。その声の感じからは、「ったく、夜桜見をしようだなんて言ったやつは、どこのどいつだよ」という心情が読み取れる。

松夢が、隣に腰掛けている「どこのどいつ」を睨む。

どこのどいつは、そっぽを向く。


二人がいる処_渡辺神社の境内は、満開の桜でこれでもかというほど飾り立てられていた。これだけ綺麗に桜が咲いていると、暇な人間の1人が「なぁなぁ、明日にでも夜桜見しようぜ!」とみんなの前で言ったとしても不思議ではない。むしろそれが普通だ。

小さく溜息をつくと、松夢も桜を見上げた。

_桜は確かに綺麗だけど、夜桜見_夜の宴の準備や片付けをするのはいつも僕なんだよなぁ...あーめんどい。

今日の松夢は、普段の1.5倍テンションが低い。

_でも、桜は確かに綺麗だけどどこか儚さのようなものを匂わせるんだよなぁ...なのに人を引きつけるという_不思議だ。

松夢がそんなことを考えながら緑茶をすすっていると、

「おーい、松夢いるかー?」

誰かの声が聞こえてきた。想夜のものではない_。

見ると、それは水色の長いはっぴを着た人間で、こちらに向かって猛スピードで飛んできていた。

「よっと!」

そして見事着地。

「松夢がいるかなんて、見りゃわかるだろ?」

呆れたやつだぜ、という気持ちをこめて、想夜が言った。

「ああ、今わかった。」

水色のはっぴを着た少年、神崎 直人が言った。


神崎直人_彼はこう見えても松夢と同じ神職だ。夢想の世界の南端に有る「八万宮」という神社を運営している。

「_で、一体何の用だい?」

「よく用があるってわかったな」

「君がここに来る時は、たいがい何かしら用がある時だからね。誰かさんと違って」

そう言うと松夢は、隣に腰掛けている「誰かさん」のほうを見た。

誰かさんは、そっぽを向く。

「_確かに俺はお前に用があって来たんだよ...」

そう言うと、直人はここに来たわけを話し始めた。


直人の話は無駄に長いので、要約することにする(もっとも、話を長引かせたのは想夜の余計なツッコミと松夢のそれに対するコメントのところが大きいが)。

直人曰く、イベント「雛人形展」の準備を着々と進めていたのだが、今日目覚めてみると展示用の雛人形が全て消えていたという_

「なるほど、盗難事件か」

想夜が呟く。

「_で、君は僕に協力してほしいわけか。」

飲んでいた緑茶を飲み干すと、松夢が言った。

「結論を言うと、そうだな。今回の件は、僕1人では解決出来ないような気がするんだ」

少し不安を滲ませて、直人が言った。

「_わかった。同じ神職として、協力しよう。」

そう言うと、右手を差し出す松夢。

「感謝するよ。」

その手を取る直人。

「俺も協力するぜ!暇だし」

そう言うと、二人の手に自分の掌を重ねる想夜。

「......」

苦笑する二人。


こうして、「盗難事件解決組」が立ち上がった。


 


 


 


 


第二章 勘だけを頼りに突き進むとどうなるか その1


 



ここは、八万宮_

立派な神社だ。渡辺神社よりも。

「で、犯人の検討はついてんのか?」

直人に想夜が聞く。

「とりあえず、森に向かってみようと思う。」

想夜が「答えになってない...」と呟くが、その声は直人の耳に入らなかった。

「何故そう思うんだい?」

今度は松夢からの質問。

「勘だ。神職の勘」

その答えを聞いた想夜はずっこけそうになった。

_おいおい、被害にあってんのはお前さんだろ?そんな適当でいいのかよ...。

だがそんな想夜とは逆に、松夢は「なるほどな」と納得している。

_そういうもんなのか?いや、そうであるはずがない!

想夜は自問自答を繰り返し、やっと落ち着いた。

「_で、期日はいつまでだ?」

直人に聞いてみる想夜。

「明日」

あっさりと答える直人。


時間が、止まった。


いや、本当に止まったわけではないのだが、今の状況はそう表現するのが一番に思う。

「ちょ、待て!なら勘だけで行動てのは余計にマズイだろ!」

叫ぶ想夜。

だが松夢は、

「だがそれしか手は無い_。」

一言で想夜の不満を切り捨てた。

_おいおい、本当に大丈夫なのかよ...。

想夜は、早くも軽い疲労感と不安を覚えていた。


 



_森。

夢想の世界で森と言ったらここ、ソロモンの森くらいしかない(渡辺神社の裏にあるのは、竹林)。

ここ、ソロモンの森には常に魔力が充満しており、普通の人間や妖怪その他大勢はあまり近寄りたがらない(近寄るのは普通じゃない人間や妖怪その他大勢)。そのため、なんとも言えぬ怪しさを持っている。

三人はその、ソロモンの森の入り口にいた。

「おいぉぃ、本当にここでいいのか?」

不安そうに想夜が言う。

「さぁな」

さらりと、直人が言った。

「さぁね」

さらりと、松夢が言った。

想夜の不安は募るばかりだ。


森の中は、静かだ_。

聞こえるのは小鳥のさえずりと風の流れる音と木々の揺れる音くらいだ。

威風堂々と進む直人。

森林浴を心から楽しんでいる松夢。

警戒体勢を崩さない想夜。

一見しただけでは同じ目的で森にやって来た三人にはとてもみえない。

「けっこう静かだな」

静寂があまり好きではない直人が言った。

「別に普通じゃないか」

喧騒より静寂のほうが好きな松夢が言った。

「おいおい、そんなに油断してると...」

言いかけた想夜だったが、飛んできたそれを見て口をつぐんだ。

それは想夜の隣を通り抜けて後方の木にぶつかって、落ちた。

「あちゃあ...ミスったなぁ」

そんな声が何処からか聞こえてきたような気がした。

「人形_?」

松夢が呟く。

確かに地面に落ちたそれは人の形をしていた。

想夜が前方に視線を戻す。

するとそこには_

大量の人形が浮かんでいた。

黒い服を着た、おぞましいほどの量の人形の群れ_

「21体か...」

瞬時に数を数え、直人が言った。

「便利な能力だな」

そう言う想夜に直人は、

「いいや、僕が持ってる能力は...」

人形の一体が向かってきた。槍を構えている。

だがそれは「何か」が放った針のようなものに貫かれ、落下した。

それは、人形だった。

「人形を操る力さ。」

直人が、言った。


直人の後ろには、五体の人形がついていた。それらは全て彼のものだ。

_なるほど、だからこいつの神社にゃあ人形がたくさんあるのか...。

理解した想夜だったが、

「あれ?人形は全て何者かに盗まれたんじゃなかったのか?」

疑問に思い、質問する。

「盗まれたのは、展示用のだけさ」

短く答える直人。

向こうの人形が向かって来た。槍や剣を持って襲いかかって来る。

人形に光弾を発射させ、応戦する直人。

二本の模造刀を振り回す松夢。

前方に向けて四色の槍をばら撒く想夜。

数分で、相手側は沈黙した。


「ほうら、言わんこっちゃない」

得意げに言う想夜に対し、

「まだ何も言ってなかっただろうが」

と直人。

「まぁそれはそれとして_この人形は当然、僕らを狙ってたわけだよな?」

と松夢。

うんうんと頷く二人。

「てことは、この森に今回の事件の犯人がいると考えるのが妥当なんじゃないかい?」

うんうんと頷く二人。

「さっすがこういうことの専門家だぜ!」

「やっぱ専門家は違うねぇ。」

と二人。

「でも、一つだけわからないことがあるんだよ。」

ポリポリと頭を掻きながら、松夢が言った。

「目的が、わからない_。」


 



「暇つぶしじゃねーの?」

と直人。

「そうさ!暇つぶし以外にゃあ考えられん!」

と想夜。

「そうかなぁ...」

と松夢。二人の手にかかっても彼の不安を払拭することはできなかったようだ。

そんな会話をしているうちに、

「あなた達、なかなかやるわね!」

と三人とは異なる声が割り込んできた。

「いつものパターンだな、これ...」

と松夢。

「いつものパターンだぜ...」

ため息混じりに、想夜も言う。

その「いつものパターン」を知らない直人は会話に参加できず、戸惑っている。

「まぁ、こういうパターンってことは...」

と松夢。

「こういうパターンてこたぁ...」

と想夜。

その「こういうパターン」を知らない直人は会話に参加できず、ただただ戸惑っている。

「戦闘、だぁ!」

「戦闘、だぜ!」

二人が同時に、叫んだ。

直人は会話に参加できず、最後まで戸惑うことしかできなかった。


 


 


 


 


 


第三章 勘だけを頼りに突き進むとどうなるか その2


「...で、君は一体_?」

松夢が目の前に突如として現れた人物に言う。

濃紺色の夜会服に身を包んでいる、金髪のショートカットの少女だ。頭には魔女っ子が被ってそうな大きな三角帽子(それも濃紺色)。人形のような整った顔立ちをしている。

「私の名前はルデア。ルデア・アンタレス。服装を見たらわかると思うけど、魔法使いよ。」

と、その少女が答えた。

「_僕の人形を盗んだのは、君か?」

久しぶりに会話に参加できてうれしそうな直人が言った。

「盗んだなんて人聞きの悪い。ちょっと借りただけよ。」

とルデア。

「同じじゃねーか...」

想夜が呟く。そう言う想夜もよく「借りてくぜ」と言って人のものを勝手に持っていくことがある。

「_あのね、私は無生物を操る力を持ってるの。だから今まで剣とかナイフとかを操ってたんだけど、ちょっと最近人形に興味を持ち始めてね...。人形って四肢が付いてるから細かい動きができていいじゃない。それで自分でいくつか_42体試作人形を作ってみたんだけど、なんだかそこまで細かい動きができない。それでそういえば八万宮っていう神社には人形を操る神主がいるって言うからちょっと話を聞いてみようかと思ってその神社を訪れてみたんだけど、その神主_貴方はその時丁度寝ていたの。でなんかたくさん人形が並んでたからちょっと拝借しようかと思って...」

とルデア。

「_で、僕の人形達を盗んでいったわけだ。」

と直人。

「だから盗んだわけじゃないって言ってるでしょ。」

とルデア。

「いいや、盗んだね」

と直人。

このままでは不毛な争いが始まり、日がくれるまで終わらなくなる_そう感じた松夢は、口をはさむことにした。

「なら返してやればいいんじゃないかい?」

「そうね。もう研究も終わったし」

そう言うと、ルデアは右手を一振り。

大量の雛人形が現れると、直人の目の前に整列した。

「...一体何体いるんだ?」

おそるおそるといった感じで、想夜が聞いた。

「わからない。数えたことないから」

_そんなんで管理してるって言えるのかよ...。

一体くらいなら盗んでもバレないのではと思った想夜であった。



「それでさ、せっかくここまで来たんだからお茶でも_」

ルデアが言った。

「おっ、気が利くじゃないか」

と直人。

だが_

「でも条件付き!貴方の人形を参考にできるだけ人間に近い動きができる人形をつくったんだけど_それの実験に付き合ってくれない?」

とルデア。

「えー面倒だな」

と直人。

「お茶が出るなら構わないぜ」

と想夜。

「別に_構わないけど」

と松夢。

「よしっじゃあ決まりね!ついて来て!」

そう言うと落ち葉を踏みしめながら歩き出すルデア。

「少数意見はいつも無視されるんだ......」

ぶつぶつと呟きながらも付いていく直人。

それに続く想夜と松夢。

落ち葉を踏みしめる音が、森に響く。

どこからか鳥のさえずりが聴こえた。


 


 


 


 



第四章 森の邸宅で優雅なティータイムを


 



「ここここ、私の家。」

そう言うと、

「さぁ、勝負よ!」

とルデア。

_大体感づいてたけどね。

と松夢は心の中で呟いた。

彼女は「戦闘によって」人形がどこまで人間に近い動きができるか試そうとしているのだ。

それには当然、相手がいたほうがいい。

_まさか、こうすることまで計算済みだったのか?

そう考えた松夢の背筋を、冷たい汗が流れた。

_流石は魔法使い。人間じゃないな...。

そういう意味では人形と同じだなと思った松夢だった。


「さぁて容赦はしないぞ!陰陽五行術!」

直人の周りに五芒星(セーマンドーマンと呼ばれるもの)が現れたかと思えば、それらが弾け飛び、ルデアに向かった。

「俺も容赦なんてしないぜ!レインオブエメラルド!」

想夜が叫ぶと、いつものお気に入りのスキルを発動させた。

緑色の光が上空から降り注ぐ。

対するルデアはというと、

「アリス、ルイス!」

二体の人形を呼び出した。あれが研究によって生まれたという自慢の人形だろうか。どちらとも金髪に青い瞳で、青い服を着ている。片方は剣、もう片方は槍を手にしている。

それらが弾幕を放つ。

「くっ、ならこっちも!」

そう言うと直人も展示用以外の人形達を登用した。

目まぐるしく飛び回る光の群れ。

「そこの貴方もどう?」

松夢はルデアに声をかけられた。

「3対1になるよ。大丈夫かい?」

と松夢。

だが、

「たかが人間三人、どうってことないわ」

とルデア。

「それに、こっちはもっと人形を登用することができるしね」

ニヤリと笑うと、ルデアが言った。

_こりゃあ大物だな...直人と想夜だけには任せきれない。

そう思った松夢は、自分も加勢することにした。



「さぁ、そろそろ彼女らも導入しようかしら!」

ルデアが言うと、大量の人形が呼び出され、彼女の周りに集結した。

「21体...」

直人が瞬時に数えあげて言う。

「前のと合わせて42体か_もしかして...」

魔術にはけっこう詳しい想夜が何やら呟く。

「さて、こちらも頑張っていかないと冗談抜きで負けるね」

加勢した松夢が言った。

「だな、エレメントアタック!」

そう言うと、いつものように四色の槍を飛ばす想夜。

「不動誘導明王!」

直人が言うと、お札が飛んでいき、ルデアの人形を確実に、正確に落としていく。

「ウィンドスプリング_」

加勢した松夢は、とりあえず風を送って二人を援護することにした。

ルデアも負けてはいない。

「ふん、スターオブアンタレス!」

ルデアの周辺が赤い靄で輝く。その色はどんどん強くなっていく。

色が強くなればなるほど人形が発する弾幕も強くなっていく。

「くっ、負けるもんかい!」

直人が叫んだ。



アンタレス邸内_

結局、「お茶が沸いた」という理由で戦闘は終了した。

「私の最終目標はね、意思を持った人形をつくることなの。」

ダージリンティーを飲みながら、ルデアが言った。

「それって、もうすでに人形と言えないんじゃないか?」

想夜が言う。

「ううん、生きてはいないから人形。命令には忠実に動き、時には励ましや助言をくれる_そんな人形が欲しいと思ってるのよ。」

ルデアが言った。

もしかして人形に興味を持ったのは、ただ単に彼女がさびしがり屋だったからかもしれない。

「意思を持つ人形か...」

直人が呟いた。

「でもそんなものをつくることなんて、可能なのかい?」

松夢が言うと、

「可能よ。だって私、見たもの。」

ルデアが言った。

「_見た?」

直人の右の眉がピクリと動いた。

「そう、見たのよ。意思を持って自分で動く人形を。」

ルデアが言った。

「!!」

直人が顔を上げた。

「ルデア!お前...西物置の扉、開けただろ!!」

直人が叫んだ。

八万宮には東側と西側に物置が計2つある。

「あら、物置らしきところはあったけど物置かどうかまでは知らないわよ?何しろ夜だったから」

そりゃあ直人も寝てて当然だ。

「こうしちゃいられない!」

アンタレス邸を飛び出す直人。

その瞬間、どこかで爆音が響いた。

「お、おい今のなんだ?!」

続いて想夜もドアに向かう。

「なんだか知らないけど...」

ルデアも立ち上がった。

「まずいことになってなきゃいいけど...」

松夢は、小さくため息。


 


 


「あーっはははは!」

森に笑い声が響いた。

周囲は火の海と化している。

「たーのしぃなぁ!緑がぜーんぶ赤くなるぅー!」

赤い瞳には狂気の色。

彼女が発する炎で、周囲の木々が焼けていく。

「リオ!!」

そこに到着した直人が叫んだ。

「でたなー人形使い!」

リオと呼ばれた少女が振り向く。

赤い髪に赤い服、瞳までもが燃えるような赤だ。

「やめるんだリオ!」

直人が叫ぶ。

「うーるさいなー私は楽しんでるんだからほっといてちょーだい!」

そう言うと同時にリオが直人に向かって炎を放射する。

そこに遅れてやって来た松夢が割り込んだ。

結界によって、炎がはじかれる。

「なんなんだあれは!?」

松夢が直人に訊く。

「リオ_八万宮の西物置に封印されていた、神崎家に伝わる、意思を持つ人形_最強の殺人兵器だ!!」

炎の轟音に負けないくらいの大声で、直人が答えた。

「なんてことだ、森が...。」

森林破壊の現場を見て、想夜が膝をつく。

「意思を持つ人形、か_」

ルデアが呟いた。

「ともかく、こいつを止める!」

想夜が叫ぶ。

「当たり前だ!」

松夢も言う。

「そうしないと危険ね」

ルデアも頷く。

「絶対止める。絶対に_!」

直人は、自分に言い聞かせるように言った。


「ウォーターエレメント!」

想夜が叫ぶと、膨大な量の水が放出された。

だが_

「あははっ、ざーんねん!」

それらの水は一瞬で蒸発し、霧へと姿を変えた。さらにその霧も一瞬で消える。

「なぁっ...」

唖然とする想夜。

「ええい、桜花幻想!」

直人がスキルを発動した。桜の花びらのような光がリオに向かう。

「なるほど、実体のない攻撃なら炎に邪魔されねぇな!ライトオブレインボー!」

想夜が言うと、虹色の光が弾けた。

「それじゃあ私も!イマジネーションレーザー!」

ルデアが叫ぶと、例の「アリス」と「ルイス」がレーザーを乱射しだした。

松夢は結界を張ってリオの猛攻から皆を守る。

想夜はさらに水の精霊・ウンディーネを呼び出し、消火活動を任せた。


リオを戦闘不能になるまで追い込むのには、かなりの時間を必要とした。

そのため、戦闘が終結した時には皆クタクタになって疲れていた。

「ようやく終わったぜ...」

グッタリとした声で、想夜が言った。

彼の足元には、バラバラになったリオが転がっている。

「まったく、なんで俺の先祖はこんなものをつくったんだろう...」

直人が呟く。

「ほんとだよ。最後はこうなってしまうというのに_」

うつむき加減に、松夢も言う。

「_そうね、意思を持った人形をつくるのはやめましょう。こうして生きた者達に破壊されるというのなら...。」

ルデアが言った。

三人は黙って頷いた。

「_それじゃあ、家に戻ってティータイムの続きにしましょうか。」

ルデアが言った。

三人は黙って頷いた。


 


 


 


 


 


ENDING 星の子らは夜空に輝く


 


アンタレス邸_

「ありゃりゃ、何時の間にか日が暮れちまったぜ」

カップを置くと、想夜が言った。

「満天の星空だねぇ」

松夢が言った。頬が緩んでいる。

「きれいだな...」

直人も言う。いまだに疲れた表情をしている。

「人は死ぬと星となり夜空に輝き生きる者達を見ている、とはよく言ったものだけど_やはり穢れなき浄土の住人の光、生きる苦しみから解放されし者たちの光_美しく輝いているわね。」

ルデアが言った。

「あの人形も、苦しみから解放されたかしら...」

「生きることが必ずしも苦しみだとは、思わない。」

松夢が言った。

皆の視線が、彼に集まる。

「確かに生きていると、苦しみを味わうことがあるかもしれない。いっそのこと死んでしまおうかと思うことがあるかもしれない。でも_だとしても、自ら命を絶ってはならない。どんなに苦しみを味わおうと、その分楽しみもあると思うから......」

松夢が言う。

「......かもな。」

想夜が、口を開いた。

おそらくここにいる者たちの中で人生において一番辛い思いをしてきたのは、彼だ。そして、この世界にやって来て何とかそれを乗り越えたのも_

「苦しみの先に楽しみがある。簡単に手に入る楽しみには意味などない_そう考えることで人は強く、より強く生きることができるのだと思う。だから、俺はこれからも生き続ける。」

想夜が言った。

「_そうだな、その通りだ。」

直人が言う。

「確かにね。誰だって生きながら楽しみを味わいたいもの。」

ルデアも言った。

「そう、その楽しみを無限に味わえるのが、永遠の楽園_」

松夢が、真剣な眼差しで、言った。


「夢想の世界。」

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