表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Parallel(パラレル)  作者: 神山 備
第二部指輪の記憶
59/71

告白 2

 健史の言う通り、僕は玉砕なんかしなかった。

「私もね、結城君の事はいいなぁって思ってたんだ。話しててすごく楽だし。付き合っても良いよ」

と、あっさりと倉本夏海は僕の告白を承諾してくれた。それから彼女は、

「ねぇ、結城君って今まで他の娘と付き合ったことあるの?」

と聞いてきた。

「ううん、でも何で?」

「かわいい顔してるし、優しいから、中学時代モテたんじゃないかと思って」

僕はその言葉に耳を疑った。僕が、かわいい?

「まさか、僕がかわいいって?」

驚いた僕を見て、彼女ははにかみながら頷いた。

「根暗のチビなんてモテたりしないよ。それに……」

病気で体型も今とは全く違っていたから。僕はその一言がどうしても言えなくて呑み込んでしまった。

「確かに男の子としちゃ高い方じゃないのかもしれないけど、私より高いから気にしたことなかったよ。で、それにってまだ何かある?」

「それは……今度。ううん、明日、明日教えてあげるから。でも、頼むからびっくりしないでね」

僕はそんな勿体を付けて答えを引きのばした。僕は正直なところ、かわいいと言われて怖くなってしまったんだ。僕のあの頃の顔を見ても、同じことを言ってくれるのかなと思って。

 翌日僕は、一番浮腫んでいた頃の写真を彼女に見せた。

「僕、小学校の高学年からずっと病気してて、中学三年の二学期ぐらいまでは大体こんな感じだったんだ。チビで根暗でその上デブなんて、モテっこないから。安心した?」

彼女もその写真を見て、すごくびっくりしたようだった。口を開けたまま長いこと黙ったままだった。僕はだから、こんな百年の恋も一瞬で褪める様な写真を何で持って来たのかと後悔した。でも彼女は、

「安心したかなって……私にこんな写真を見せて嫌われるとか思わなかったの? ううん、私はこんな写真で嫌ったりはしないけど。それより、もう病気、治ったの? 私はそっちの方が心配。だって、結城君ほとんど体育出てないもの」

と、涙目で僕を見つめながらこう言ってくれた。その潤んだ瞳に僕はまたドキッとした。

「大丈夫だよ。今は薬も飲んでないし、もう浮腫んでもないでしょ?

体育もたぶんやっても大丈夫だけど、先生の方が怖がっちゃって、おみそにされちゃってるだけだよ。心配かけてゴメンね。ただ、僕……倉本には僕の事をちゃんと知っててほしかったんだ」

それに対して、僕は照れながらそう返した。僕の言葉に彼女は、

「それって、かなり嬉しいかもしんない。でも、それって反則技だよ」

と言いながら、僕に背を向けた。泣いてるみたいだった。僕には何が反則なのか分らなかったし、この時はまだ、泣いてる彼女の肩を抱くことも知らない子供だった。


 そして翌日……授業が終わった後、僕は彼女と彼女の女友達が話に花咲かせている所に行って、こう切り出した。

「ねぇ、海。海は今日はクラブ?そうじゃなかったら、一緒に帰ろうよ」

サラっと言った様に聞こえるように昨日一晩何度も練習した。それに、「海」というのはその時考えた僕だけの彼女の呼び方。当の「海」は、最初自分の事を言われているとは思っていなかったみたいだけど、僕の目線と、そして自分の名前を頭に思い浮かべて、自分に向かって言っていると気付いたようで、

「ううん、クラブは明日だよ。だから、龍太郎一緒に帰ろ」

と、真っ赤になりながら笑ってそう答えた。

 その時、「海」の親友の皆川悠の

「きゃぁ、あんたたちいつのまにぃ!」

という叫び声とか、聞いてないだろうと思っていた、教室の反対側にいた男子が口笛を吹くのとかが混ざり合って聞こえて、すごく恥ずかしかった。

 だけど、もう口に出してしまった。そうだ、こういうのは言ったもん勝ちってやつだと、僕は思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ