同窓会 2
一旦は聞くのすら無駄だと思った夏海だが、帰る道すがら彼女は梁原の言っていたことが気になって仕方なくなっていた。今回の龍太郎の結婚の経緯も知っている位なのだから、もしかしたら彼は龍太郎が自分に対して急に態度を変えた理由を知っているのではないか、そんな風に思ってしまうと、無性にそれを問い質したくなったのだ。
それと……夏海は、あの男子に言われて夏海は梁原と龍太郎が絡んでいる姿まで想像してしまっていた。龍太郎が元々優しい女性的な顔立ちで、小柄だったからそう言われてしまったのだろうが、長身で男っぽい梁原とは妙にしっくりくる気がした。縦しんばそれが本当だったとしても、自分が負けた相手が男だったとしたら笑うに笑えないではないか。
だから、夏海はなりふり構わず梁原を問い質すことも、それ以前に彼の個人的な連絡先すら聞けず、悶々としたまま帰途に着いたのだった。
「ただいま」
夏海はそう言って、飯塚の実家の玄関を開いた。
「ママぁ、おかえりぃ」
すると、未来が転がるようにして玄関に飛び出してきた。
「良い子にしてた? お土産のケーキ、一緒に食べようね」
夏海は娘に目線を下げ、そう言いながら彼女の頭を撫でた。未来はケーキの箱を見て、
「ケーキ、ケーキ」
とはしゃいでいる。
「お帰り」
「ただいま」
そこに雅彦が現れた。夏海は雅彦の笑顔にホッとして、自身も微笑んだ。そして、土産のケーキを夫に渡すと、靴を脱いで上がろうとしたのだが……
「あれっ、痛っ……」
次の瞬間、夏海は下腹部に鈍い痛みを感じ、その場に膝をついていた。
「夏海、大丈夫か!」
雅彦は慌ててケーキを床に置くと夏海の身体を支えた。
「ちょっとお腹が……変……」
みるみる内に血色が失われていく妻の顔と、その返事に雅彦はさらに慌てた。
「お袋、ちょっとすぐ来てくれ! 朋彦、えーっと、そうだ救急車! 救急車を早く!」
雅彦が大声で家族の助けを呼ぶ。雅彦の母の走ってくるスリッパの音が響く。
ああ、マーさんは相変わらず心配症なんだから……
「そんなに大袈裟にしないで。横になったらすぐ楽になるから……」
雅彦の腕の中、そう言ったところで夏海の意識は途切れた。