表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Parallel(パラレル)  作者: 神山 備
第一部Parallel
26/71

嘘から出た真実

 それから双方の話し合いがあり、具体的な結婚式の日取りも決まって、夏海は会社に辞表を提出した。同僚のおめでとうの嵐の中、小夜子だけが妙に醒めた目をしていた。

「それでどんな人なのよ、教えなさいよ」

社内で母と呼ばれている古参の女性社員、深見がそう言って夏海を突いた。

「えっ、普通の会社員ですよ」

夏海は赤くなりながらそう答えた。

「歳は?」

夏海がぺらぺらと話さないと判ると、深見は細切れに質問してきた。

「三十一です。あ、でももうすぐ三十二になります」

そう答えた所で小夜子の眉が少し揺れた。

「で、君は何さんになるのかな。旧姓倉本夏海さん」

「い、飯塚です」

その時、小夜子の目が大きく見開かれた。

 皆が夏海から離れた後、小夜子は自分から彼女に近づいてきた。

「びっくりしました。私はてっきりやっちゃんと結婚するんだと思ってました」

と彼女は夏海に言った。やっちゃんとは小夜子が武田を呼ぶ呼び方だ。

「どうして? 私最近、連絡もとってなかったわよ。」

そう返した夏海の返事は震えていたかもしれない。

「でも、私と別れたあとは……付き合っていたんでしょ? ナツ先輩。そうですよね。元々私がやっちゃんとナツ先輩を引き合わせたんだし、私が困らせた所でやっちゃんの心は私にはないって気付いてたから。でも、ナツ先輩の本命はやっぱりクマさんだったんですね。おめでとうございます」

 小夜子はいつから2人の関係に気付いていたのだろう。

『女って怖いんだから』夏海は大学祭の誘いの時の自分の言ったことを心の中で再生して、身震いした。

 夏海が返答に困っていると、小夜子は笑みを浮かべて、

「そんな顔しないでくださいよ。私、やっちゃんと別れて落ち込んでるときに高校時代の友達に今の彼を紹介されて……ついこの前彼ね、私の両親に挨拶に来たんです。まだ、具体的なことは決まってないんですけど……」

と言ったのだった。

 心配などしなくて良かったのかもしれない。ただ、縦しんば小夜子に自分たちの関係を早々と打ち明けていたとしても、今の結果に何の変わりもなかったのかもしれないが……

 それにしても、小夜子のためについた嘘が雅彦になって現れたのではないかと思うほど、あの頃取り繕った嘘に雅彦のキャラは符合していて、夏海は小夜子と離れた後、思わず苦笑いしてしまったほどだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ