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君の制服、僕の秘密

「君、男子……だよね?」


 朝倉翠は、そう言われた瞬間、自分の心臓が男子制服の胸ポケットから飛び出すかと思った。


 六月の終わり。文化祭一日目の朝。校舎の廊下には、まだ開場前だというのに、焼きそばのソースの匂いと、段ボールを引きずる音と、誰かの「ガムテどこ!」という叫び声が混ざっていた。


 翠はその雑踏の中で、男子のブレザーを着て立っていた。


 正確には、着せられていた。


 理由は簡単だ。文化祭実行委員の受付班で、男子生徒役として案内をする予定だったクラスメイトが、前日に発熱した。代役を立てようにも、男子はどこも模擬店や舞台準備に取られていて空きがない。そこで、背が高く、髪も短く、声も低めの翠に白羽の矢が立った。


「朝倉ならいけるって。黙ってれば普通に男子」


 親友の三枝奈央は、悪びれもなくそう言った。


 翠は最初、断るつもりだった。けれど、受付の配置表が崩れると文化祭全体の動線が狂う。来場者案内、パンフレット配布、落とし物対応、校内巡回。実行委員の仕事は、見た目よりずっと細かい。


 責任感が、翠の首を縦に振らせた。


 そうして今、翠は男子制服で廊下に立っている。


 鏡で見たときは、思ったより自然だった。短い髪をワックスで少し固め、ネクタイを締め、スカートではなくスラックスを履く。すると、自分でも少し知らない人間に見えた。


 悪くない、と思った。


 けれど、開始十分でそれは甘かったと知った。


 廊下の曲がり角で、翠は誰かとぶつかった。相手の持っていた台本が床に散らばる。翠は反射的にしゃがみ込み、紙を拾い集めた。


「ごめん。大丈夫?」


「こっちこそ、前見てなくて……」


 相手は、長い黒髪をゆるく結んだ、驚くほど整った顔立ちの少女だった。白いブラウスに、淡い水色のワンピース。演劇部の衣装だろうか。袖口にはレースがついていて、動くたびに小さく揺れる。


 翠は一瞬、見とれた。


 その直後、相手が目を細めた。


「君、男子……だよね?」


 翠の背中に冷たいものが走る。


「あ、当たり前だろ」


 自分でも驚くほど声が裏返った。


 少女は、拾った台本を胸に抱えたまま、翠の顔をじっと見る。視線が鋭い。可憐な外見に似合わず、妙に観察力がある。


 翠は焦って、言い返した。


「そっちこそ、女子……だよな?」


 今度は相手の肩が、ぴくりと跳ねた。


 沈黙。


 廊下の向こうで、誰かが風船を割った。ぱん、という音が妙に大きく響く。


 少女は少しだけ目をそらし、台本の角を指で押さえた。


「……白瀬遥。二年三組。演劇部」


「朝倉翠。二年一組。文化祭実行委員」


「朝倉くん?」


「……朝倉でいい」


「じゃあ朝倉さん?」


「朝倉でいい!」


 遥は小さく息を吐いた。それは笑いをこらえたようにも、安心したようにも見えた。


「なるほど。お互い、面倒な一日になりそうだね」


 翠はそこで、確信した。


 この人も、隠している。


 白瀬遥は、男子だ。


 演劇部のヒロイン役が急に出られなくなったらしい。衣装のサイズが合い、台詞を覚えていて、声を作れる部員が遥しかいなかった。翠がその事情を聞いたのは、二人で階段下の掲示板前に移動してからだった。


「女装って言うと、クラスのやつらが絶対に騒ぐから」


 遥は台本で口元を隠しながら言った。


「だから、演劇部以外には言ってない。舞台が終わるまで、できれば知られたくない」


「分かる」


 翠は深くうなずいた。


「こっちも、女だってばれたら実行委員の仕事がややこしくなる。男子トイレに案内してとか言われたら詰むし」


「それは最初から詰んでると思う」


「言うな」


 二人はしばらく黙った。


 そして、ほぼ同時に口を開いた。


「秘密にして」

「秘密にして」


 また沈黙。


 今度は、どちらからともなく笑った。


「協定を結ぼう」


 遥が言った。


「協定?」


「一つ、互いの正体を他人に言わない。二つ、困ったときはフォローする。三つ、文化祭が終わったら、この件は忘れる」


「最後だけ冷たくない?」


「忘れた方が平和でしょ」


「まあ、それはそうだけど」


 翠は少し考えてから、右手を差し出した。


「分かった。協定成立」


 遥は一瞬ためらい、それから細い指先で翠の手を握った。


 女装姿なのに、手のひらは思ったより大きかった。男子なのだと、そこで改めて実感する。


 同時に、翠は変なことを考えた。


 自分は今、男子制服を着ている。相手は女子の衣装を着ている。外から見れば、たぶん男子と女子が握手しているだけだ。


 でも本当は、そのどちらでもないような、どちらでもあるような、不思議な空気が二人の間にあった。


 文化祭が始まると、協定はすぐに役立った。


 翠は受付でパンフレットを配っていた。男子制服の効果は想像以上だった。来場者からは自然に「お兄さん」と呼ばれ、後輩の女子からは「朝倉先輩、今日なんかかっこいいですね」と言われた。


 そのたびに、翠は愛想笑いを浮かべた。


 普段なら「翠ちゃん」と呼ばれる。荷物を持とうとすると「無理しないで」と止められる。重い机を運べば「女子なのにすごい」と言われる。


 今日だけは違った。


 誰も止めない。誰も驚かない。翠が段ボールを抱えて歩くと、ただ「助かる」と言われる。


 そのことが、少しだけ心地よかった。


 けれど、問題も起きた。


「すみません」


 受付に来た一年生らしい女子が、翠の前でもじもじしていた。


「はい、どうしました?」


「えっと……校内案内、お願いできますか」


「もちろん。どこに行きたいですか?」


「いえ、その……先輩に、案内してほしくて」


 翠は固まった。


 女子は頬を赤くしている。後ろにいる友人たちが、明らかににやにやしている。


 これはまずい。


 翠が返答に詰まっていると、背後から涼しい声がした。


「あ、いた。探したよ」


 遥だった。


 水色のワンピース姿のまま、自然に翠の腕に手を添える。周囲の女子たちが一斉に息をのんだ。


「朝倉くん、演劇部のリハーサルに来てって言われてたでしょ?」


「え? あ、ああ。そうだった」


 翠は慌てて話を合わせた。


 遥はにこりと笑い、一年生たちに頭を下げた。


「ごめんね。この人、借りていくね」


 この人。


 その言い方に、なぜか翠の耳が熱くなった。


 廊下に出て角を曲がると、翠は遥から腕を引き抜いた。


「助かったけど、やり方!」


「一番早いと思って」


「完全に彼女みたいだったぞ」


「じゃあ成功だね」


「成功なのか?」


 遥は台本で口元を隠し、肩を揺らした。


「朝倉、けっこう動揺するんだ」


「誰でもするわ」


「かっこいいって言われ慣れてない?」


「言われたことない」


 翠が即答すると、遥は少しだけ驚いた顔をした。


「そうなんだ」


「何だよ」


「いや。似合ってるから」


 さらりと言われた。


 翠は次の言葉を見失った。


 遥はそれ以上何も言わず、演劇部の控室へ向かって歩き出した。ワンピースの裾が軽く揺れる。周囲の視線を受けても、遥は背筋を伸ばしている。


 きれいだ、と思った。


 同時に、悔しいとも思った。


 翠よりずっと堂々としている。


 昼休み、二人は校舎裏の非常階段に座っていた。


 そこは文化祭の喧騒から少し離れていて、遠くから吹奏楽部の演奏と、模擬店の呼び込みが薄く聞こえるだけだった。コンクリートは日差しで少し温かい。階段下には、誰かが落とした紙コップが転がっていた。


 翠はパンをかじり、遥は小さな弁当箱を膝に乗せていた。


「白瀬って、何でそんなに平気そうなんだ?」


「何が?」


「その格好」


 遥は箸を止めた。


「平気そうに見える?」


「見える」


「なら、成功してる」


 短い答えだった。


 翠はパンの袋を握りつぶした。


「本当は?」


「本当は、怖いよ」


 遥の声は静かだった。


「男子としてクラスにいるとさ、変に期待されるんだ。力仕事できるよね、とか、泣かないよね、とか、頼れるよね、とか。別に誰かが悪いわけじゃない。でも、そういう空気が積み重なると、息が詰まる」


 翠は黙って聞いた。


「この格好だと、みんな違う目で見る。変な話だけど、少しだけ楽なんだ。普段の僕に向けられているものから、逃げられる気がする」


「……分かる気がする」


 翠は膝に肘を置いた。


「私は逆かも。女子としていると、勝手に守られる側に置かれる。かわいいとか、無理しないでとか、そういうのが嫌なわけじゃない。でも、それだけで見られるのは嫌だ」


 風が吹いた。翠の短い前髪が揺れる。


「今日、男子制服でいたら、誰も止めなかった。荷物を持っても、走っても、大声を出しても、普通だった。私はそれが、ちょっと嬉しかった」


「朝倉は、強く見られたいの?」


「違う」


 翠は即答した。


「ちゃんと見られたいんだと思う」


 言ってから、自分で驚いた。


 そんなこと、誰にも言ったことがなかった。


 遥は翠の横顔を見ていた。笑ってはいない。からかってもいない。ただ、言葉を受け止めるように、静かに見ていた。


「じゃあ、今日の朝倉はちゃんと見えてるよ」


「どんなふうに?」


「無理してる。責任感が強い。すぐ焦る。けど、人が困ってたら放っておけない」


「褒めてる?」


「かなり」


 翠は顔をそむけた。


「白瀬は?」


「僕?」


「うん。白瀬は、怖いって言うわりに逃げない。台本ずっと持ってるし、リハーサルも真面目に出てる。あと、たぶん人を見るのがうまい」


「それは褒めてる?」


「かなり」


 遥は少しだけ笑った。


 その笑い方が、舞台用の笑顔ではなく、白瀬遥本人のものに見えて、翠は胸の奥が小さく鳴るのを感じた。


 午後になると、事件は起きた。


 演劇部の本番まであと三十分。遥の衣装の胸元についていたリボンが、何かに引っかかって取れかけた。しかも、控室には女子部員たちが着替え中で、遥は入れない。


「終わった」


 遥は舞台袖で真顔になった。


「まだ終わってない。裁縫セットは?」


「控室」


「詰んだな」


「言わないで」


 翠は周囲を見回した。舞台袖は大道具と照明コードで混雑している。ここで直すには人目が多すぎる。


「空き教室に行こう」


「でも裁縫セットがない」


「奈央が持ってる。たぶん」


「たぶん?」


「あいつは何でも持ってる」


 翠はスマホで奈央を呼び出した。


 三分後、奈央は本当に裁縫セットを持って現れた。


「何? 男子制服の翠と、美少女姿の白瀬くんが、空き教室で衣装直し? 状況が濃すぎる」


「説明してる暇ない」


「いや、説明しなくても分かる。つまり、男装女子と女装男子が、互いの秘密を守りながら距離を縮めてるってことね」


「言い方!」


「事実だけど、言い方が強いね」


 遥まで冷静に返したので、翠は頭を抱えた。


 空き教室で、奈央が手際よくリボンを縫い直していく。翠は廊下側で見張り、遥は椅子に座ってじっとしていた。


「白瀬くん、動かないでね」


「はい」


「翠、顔赤いよ」


「暑いだけ」


「六月の空き教室で?」


「湿度だ」


「便利な言葉だね、湿度」


 奈央はにやにやしながら針を動かす。


「でもさ、いいんじゃない?」


「何が」


「二人とも、いつもより自然に見える」


 翠は言い返せなかった。


 遥も、黙っていた。


 文化祭のざわめきが、閉めた窓の向こうで遠く鳴っている。教室には、布が擦れる音と、奈央の裁縫箱の小さな金属音だけがあった。


 奈央は最後の糸を切ると、満足げにうなずいた。


「はい、完成。ヒロイン復活」


「ありがとう」


 遥は立ち上がり、軽く頭を下げた。


 奈央はその姿を見て、少し真面目な声になった。


「白瀬くん、似合ってるよ。茶化しじゃなくて」


 遥の目がわずかに揺れた。


「……ありがとう」


 その返事は、とても小さかった。


 本番が始まった。


 演劇部の演目は、古い王国を舞台にした王道の恋愛劇だった。姫が国のために政略結婚を迫られ、身分を隠した騎士と心を通わせる。どこかで聞いたことがあるような話だが、文化祭の舞台としては十分だった。


 遥はヒロインの姫役だった。


 照明を浴びると、遥は別人のようになった。声は柔らかく、動きは丁寧で、台詞の一つひとつが客席に届く。女装している男子ではなく、舞台上の姫としてそこにいた。


 翠は舞台袖で進行表を握りしめながら、それを見ていた。


 すごい。


 素直にそう思った。


 ところが、中盤の静かな場面で、客席の前方から小さな声が聞こえた。


「あれ、白瀬じゃね?」


 翠の指が止まった。


 声は大きくない。けれど、近くの数人が反応した。ざわめきが波のように広がりかける。


 舞台上の遥にも届いたのだろう。次の台詞が、一瞬遅れた。


 相手役の男子部員が目で合図する。遥は口を開こうとした。だが、声が出ない。


 舞台が止まる。


 翠は考えるより先に動いていた。


 舞台袖に置かれていた予備のマントをつかみ、肩にかける。進行表には、翠の出番などない。もちろん台詞もない。


 けれど、足は止まらなかった。


 翠は舞台に出た。


 客席がどよめく。相手役が目を丸くする。遥が翠を見る。


 翠は片膝をつき、即興で言った。


「姫。お迎えに上がりました」


 自分でも何を言っているのか分からなかった。


 だが、止まれば終わる。


 翠は遥にだけ聞こえる声で続けた。


「大丈夫。君は今、ちゃんとヒロインだ」


 遥の瞳が揺れた。


 次の瞬間、遥はゆっくり息を吸った。


 そして、姫の声で言った。


「遅いですよ、騎士様。私、ずっと待っておりました」


 客席から笑いが起きた。いい意味の笑いだった。


 相手役の男子部員も状況を察し、台詞をつないだ。物語は少しだけ筋を変えながら進んでいく。翠は突然現れた謎の騎士として、遥を守り、最後には去っていく役になった。


 クライマックス、姫が騎士に別れを告げる場面。


 遥は翠を見て、台本にはない台詞を口にした。


「あなたは、自分が思っているより、ずっと王子様みたいな人です」


 翠は返す言葉を失った。


 舞台の上で、照明の熱が頬に当たっている。客席は暗く、遥の顔だけがはっきり見える。


 翠は、どうにか笑った。


「姫こそ、僕が思っていたより、ずっと強い」


 拍手が起きた。


 劇は、成功した。


 文化祭が終わるころ、空は茜色に染まっていた。


 教室の飾りは半分ほど外され、廊下にはゴミ袋と余った紙皿が並んでいる。昼間の熱気が嘘のように、校舎は静かだった。


 翠は女子制服に戻っていた。


 スカートの感覚が、朝より少しだけ頼りなく感じた。いつもの制服なのに、どこか借り物のようだった。


 昇降口で靴を履き替えていると、後ろから声がした。


「朝倉」


 振り返ると、遥が立っていた。


 男子制服に戻っている。黒髪のウィッグも、ワンピースも、もうない。そこにいるのは、二年三組の白瀬遥だった。


 なのに、翠には昼間の姫の姿が重なって見えた。


「お疲れ」


「そっちこそ」


 二人は並んで昇降口を出た。


 校庭には、片付けをする生徒たちの声が残っている。遠くで、実行委員長が拡声器を使って指示を出していた。


 しばらく歩いてから、遥が言った。


「協定、覚えてる?」


「一つ、互いの正体を他人に言わない。二つ、困ったときはフォローする。三つ、文化祭が終わったら、この件は忘れる」


「うん」


「忘れたいの?」


 翠が聞くと、遥は少し困ったように笑った。


「無理だった」


「秘密を?」


「君のこと」


 翠は足を止めた。


 遥も止まる。


 夕方の風が、校庭の砂の匂いを運んできた。文化祭の余韻が、遠くでまだざわめいている。


 翠は、心臓の音がうるさいと思った。


「それ、どういう意味?」


「まだ、うまく言えない」


 遥は正直に言った。


「でも、今日のことをなかったことにはしたくない。男装してた朝倉も、舞台に飛び出してきた朝倉も、今ここにいる朝倉も、全部覚えていたい」


 翠は目をそらした。


 ずるい、と思った。


 そんな言い方をされたら、怒れない。


「じゃあ、協定を更新しよう」


「内容は?」


「一つ、正体を勝手に言わない。二つ、困ったときはフォローする」


「三つ目は?」


 翠は少し考えた。


 そして、遥を見た。


「たまに、本音を言う」


 遥は目を丸くしたあと、ゆっくり笑った。


「それ、けっこう難しいね」


「逃げる?」


「逃げない」


「知ってる」


 二人はまた歩き出した。


 翠は女子制服で、遥は男子制服だった。


 朝とは違う。もう、互いに秘密を隠すためだけの関係ではない。男装でも、女装でも、いつもの制服でも、どれか一つだけが本当というわけではないのだと、翠は少しだけ分かった気がした。


 校門の前で、遥が言った。


「朝倉」


「何?」


「男子制服、似合ってた」


「それ、今日二回目」


「何回でも言うよ」


 翠は顔をしかめた。


「じゃあ私も言う。白瀬の姫、似合ってた」


「それも二回目?」


「何回でも言う」


 遥は笑った。


 翠も、つられて笑った。


 文化祭の片付けで、校舎の窓が一つずつ閉まっていく。にぎやかな一日が終わっていく。


 けれど、翠にはなぜか、何かが始まったように思えた。


 明日からは、また普通の日々に戻る。


 翠は女子制服で登校し、遥は男子制服で教室に入る。廊下ですれ違えば、たぶん周りは何も気づかない。二人が舞台の上で互いを守ったことも、階段で本音を話したことも、秘密の協定を結んだことも、誰も知らない。


 それでいい。


 秘密は、隠すためだけにあるのではない。


 誰かと分け合うためにある秘密も、きっとある。


 翠は校門を出る直前、遥の方を見た。


「白瀬」


「何?」


「明日、普通に話しかけてもいい?」


 遥は少し驚いたあと、まっすぐにうなずいた。


「もちろん」


「じゃあ、また明日」


「また明日、朝倉」


 その声は、姫の声でも、舞台用の声でもなかった。


 白瀬遥の声だった。


 翠はそれを聞きながら、夕暮れの道を歩き出した。男子制服ではない。王子様でもない。けれど、少しだけ背筋を伸ばして。


 明日、どんな顔で会えばいいのかは分からない。


 でも、分からないことが、今は少し楽しみだった。

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