エピソード3
「ああ テオバルド殿は今、国外にいて、後2年程はこの国に帰って来られないらしい。
しかしロエベ子爵の仕事の都合上、早めに婚姻の手続きだけはさせてほしいと言うのだよ。
そして我がジャルジェ家と親戚であると言う事実を作りたいと」
成る程、それが我が家へ融資する為の条件…
「まぁ、だからなんだな。
相手が不在な訳だから、子爵家へ嫁ぐのは2年後だ。
それまでは今まで通りの生活で構わなと言う事になった。
結婚しても当分お前は今と同じ暮らしをしていける」
「へ?」
いやだ、一瞬意味が分からなくて変な声が出てしまったわ。
「書類上は夫婦となり、お前はリディアーヌ・ロエベになるが、この邸で今まで通り生活をして構わないと言う事だよ」
それは…嬉しい。
嬉しいって事でいいんですよね?
「そう言うことですか…
別にうちの名前を使って悪い取り引きをなさる訳ではないですわね?」
「ああ」
頷くお父様。
「うちと懇意にしている、いくつかの侯爵への足掛かりがほしいようだ」
確かにロエベ商会は大きな商会ですが、うちを含めていくつかの侯爵家は他の商会との繋がりがあるから、今まではあまり取り引きがなかったものね。
「2年後、テオバルド殿が帰って来て改めて2人が顔合わせをして、納得がいかなければ離婚も出来ると言われたんだ」
なるほど。
そしてその辺の細かい事もちゃんと契約書を交わして、もし離婚になっても、融資はそのまま継続出来ることにもなるらしい。
私が承諾すれば、すぐに融資も始まるし領地再生もすすむ。
2年間、変わらない生活が出来るのはありがたいけど、社交界はあまり顔出さない方が良さそうだわ…
夫婦同伴が基本の社交界だもの、結婚して1人で行ったら噂の的になってしまう。
でももともと社交は好きではないし、反対に有難い。
「お父様、私お受けしてもいいですよ」
「リディアーヌ!本当にいいのかい?」
お父様が立ち上がり、私の横に来て、顔を覗き込むように尋ねてくる。
「はい、今は融資を最優先にいたしましょう。
領地復興が第一ですもの。
それに結婚と言っても書類上の事なんですよね?
2年後私が嫌なら離婚も出来るのでしょう?」
「そうだ」
「なら、全然構いません」
「しかし…いくら白い結婚とはいえ、離婚となればお前にとっては不名誉なことに…」
もともと結婚に興味はなかった。
でも家の為にはいつかはしないといけないと思っていた訳だし、2年後離婚する事だって出来る。
いや、その後結婚しなくていいのであれば、やりたい事も出来るし…
むしろ好都合かも
「かまいません、そんなのどうと言う事ありませんわ。
それに必ず離婚すると言っている訳ではありません。
もしかしたら、とても気の合う方かも知れませんし、楽しみじゃありません?」
私がおどけて言うと。
悲痛が漂う顔色だったお父様から安堵と少しの笑顔がこぼれた。
「すまない。
そしてありがとう。
私はお前を誇りに思うよ」
そんな訳で私は顔も知らない方の花嫁となりました。




