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はじめまして、顔も知らない旦那さま「顔も知らない旦那さま改定版」  作者: 井波裕子


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19/19

エピソード19

北部からマルクスにやって来た3人の女性を我が商会に迎えてしばらく経ちました。


ラナは私の予想よりも料理上手でとても手際もいいのです。

我が伯爵家の料理人も勤まるんじゃないかしら?


朝はパティと私とラナ達と朝食を食べようと思っていましたが、3人は頑なに首を縦には振ってくれませんでした。


庶民の自分たちが主である貴族令嬢とテーブルを共にするなど、恐れおおくて食べ物も喉を通らないから勘弁してくれと、懇願されてしまい断念することになりました。


ここでは無礼講で気にしなくてもいいと言ったんですけどね。


その代わりお昼はテッドやドミニク、それにケティ、ペリーヌ、パティと6人で食堂に集まって昼食を取るのが習慣になってきました。


商会で繋がったもう一つの家族たちとの大切な時間が持てて、これにはとても満足しています。


お昼の時間はコレットとマルタがパティに教わって給仕をしてくれるようにもなりました。



本当に3人共、勤勉でとても真面目です。

マルタのお陰で商会の建物はどこもピカピカになっているし、コレットはケティ達の手伝いをして商会で扱っている商品を整理整頓したり、お客様のおもてなしを頑張ってしてくれています。


3人が望むならそのうちに、文字の書き方や簡単な計算も教えてもいいかな。


この国の庶民の識字率はまだまだ高くないのが現実です。




そろそろ、宿泊所に残っている男の人達の事も考えないといけません。

今は大半の人が港で日雇いの仕事をもらって生活をしているようですが、日々の必要な人材の数はまちまちなので、全員を満足させられる程の仕事が毎日あるとは限らないようです。


「どうしようかしら?」


執務室で思案していると、ドアがノックされてドミニクが大きな荷物を抱えて入ってきました。


「お嬢様、失礼します。

お屋敷からの手紙とお荷物が届いてますよ」


「荷物?」


私は手紙を受け取り、荷物を確かめました。


「まだ店の方にいくつか置いてあります。

全部運びますか?」


「ちょっと待ってね」


荷解きをして中身を見ると、日持ちする焼きお菓子がたくさん入っていました。


「お菓子? まだいっぱいあるの?」


「ええ、でも木箱もありますから全て同じものではないと思いますよ」


「手紙を呼んでから見に行くわ。お店では邪魔でしょ?

2階の踊場にでも運んでおいて」


「畏まりました」


手紙は2通、1つはお母様から、もう1つはテオバルト様からでした。


先にお母様からの手紙を開くと、マルクスにくる前に相談していた事への回答でした。


我がジャルジェ領の中心にある大きな町マロクーリエに私の家はあります。


王都のタウンハウスから領地に戻るとまずはマロクーリエの本宅に寄り、そこからマルクスに来ることが常ですが、今回は長く留守にしたので商会が気になって、家には寄らずここへ戻ってきました。


いつもは王都やマロクーリエで流行っているものを調べてくるのですが、今回は時間も暇もなかったので、私よりも後から本宅に戻るお母様に王都とマロクーリエで流行っているお菓子は何か調べて欲しいとお願いして置いたのです。



そこでこのお菓子。


お母様の話では王都の貴族の間でナッツを使ったお菓子が人気になっているとか…


この国の流行は王族や高位貴族の方達が気に入った物をパーティーやお茶会で進めたり自慢したりした事で広がっていきます。


貴族の間で話題になるとそこから貴族の家で働く者たちに広がり、庶民にも拡がっていくのです。


王都で流行ったものは数日から数週間か数ヶ月かかって国全体にも拡がっていくのですが、マルクスの様な最南端まで王都の話が伝わってくるのは遅いですから、出来るだけ私が話を仕入れて来て、町の人にも伝えています。


今回はパン屋のおばさんに頼まれていたので、新しいお菓子の情報を仕入れてもらったと言う訳です。


「ナッツ類を使ったお菓子が流行りだしたのね…」


私は箱の中からお菓子を取り出して1つ食べてみる。


お母様曰く、いくら日持ちすると言っても王都のお菓子を送るのは時間が経ちすぎると思い、知り合いのパティシエのレシピを教えてもらい、我が家の料理人が作ったものを送って下さったようです。



「美味しい…今まであったクッキーよりナッツの量がとても多い」



たっぷりの砕いたアーモンドが入ったのクッキーはとても香ばしく、口の中に入れるとホロホロとほどける口溶けでとても美味しかった。


早速パン屋のおばさんに教えてあげよう。




     





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