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『破片のパズル』  作者: くろめがね


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58/65

第58話 同じ紙を持つ人

58話です。

翌朝、

雨が降っていた。


強くはない。

だが、

傘を持たないと

濡れる程度。


通学路の

角にある

コンビニの前で、

足が止まった。


掲示板に、

紙が貼られている。


白地。

黒い文字。


「地域連絡」


内容は、

短い。


「現在、

 一部の事案について

 確認を行っています」


一部。


事案。


事故とは

書いていない。


確認。


その言葉が、

昨日拾った

プリントと

重なる。


学校に着くと、

昇降口が

いつもより

静かだった。


人はいる。


だが、

声が

低い。


教室に入ると、

担任が

机の上を

整理していた。


紙の束を

一度、

引き出しに

入れ、

また出す。


落ち着かない

手つき。


「今日は、

 何かあったら

 すぐ言えよ」


朝の会で

そう言った。


“何か”の

中身は

言わない。


休み時間、

廊下で

声をかけられた。


あの子だ。


椅子から

転んだ子。


久しぶりに

来ている。


顔色は、

少し

悪い。


「……これ」


小さな声で

言って、

紙を

差し出してきた。


見覚えのある

フォーマット。


だが、

昨日のものとは

少し違う。


項目が

一つ多い。


「関与の有無」


その欄に、

丸も

バツも

付いていない。


代わりに、

鉛筆で

薄く書かれた文字。


「未確定」


未確定。


俺は、

何も言わずに

紙を見た。


「家でさ……」


あの子は

視線を

落とす。


「親が

 先生に

 聞いたんだって」


聞いた。


「そしたら、

 説明が

 前と

 違ったって」


違った。


説明が

揃っていない。


それは、

棚の外に

落ちた証拠だ。


「これ、

 どうしたら

 いい?」


質問は、

短い。


答えを

期待している。


俺は、

一瞬だけ

迷った。


今までなら、

言えた。


「事故」

「仕方ない」


だが、

今日は

言えない。


代わりに、

聞いた。


「……これ、

 誰に

 見せた?」


「先生と、

 あと……

 市の人」


市。


それで、

全部が

つながる。


俺は、

バッグの中の

引き出しを

思い出す。


昨日拾った

紙。


同じ

「確認中」。


同じ

未処理。


俺は、

初めて

自分から

言った。


「……俺も、

 似た紙

 見た」


声は、

小さい。


だが、

はっきりしている。


あの子の

目が

上がる。


「え?」


「棚に

 入ってない

 やつ」


棚。


その言葉を

使った瞬間、

後悔する。


説明が

要る。


だが、

もう

遅い。


「どういう

 意味?」


俺は、

答えなかった。


答えられなかった

のではない。


答えなかった。


それが、

今までの

やり方だったからだ。


チャイムが

鳴る。


会話は、

途切れる。


あの子は、

紙を

畳んで

しまう。


だが、

視線は

俺から

離れない。


授業中、

黒板の文字が

頭に入らない。


棚の外の

紙が、

二枚になった。


別の場所。

別の人。


同じ

未確定。


放課後、

担任が

俺を

呼ぼうとして、

やめた。


視線が

合い、

逸れる。


探っている。


だが、

踏み込めない。


家に帰る。


母は、

いつも通り。


棚も、

いつも通り。


何も

崩れていない。


だが、

俺は

知っている。


崩れ始めている

場所が

ある。


夜、

自分の部屋で

引き出しを開ける。


昨日の紙。

今日、見た紙。


並べる。


二枚。


同じ

フォーマット。


同じ

「確認中」。


同じ

未確定。


違うのは、

場所だけだ。


布団に入る。


天井を見る。


今日、

俺は

ズレを

共有した。


一人では

なかった。


二人になった。


二人になった

ということは、

話になる

ということだ。


話になったものは、

もう

元には

戻らない。


棚の外に、

小さな列が

でき始めている。


それが、

一番

怖い。


誤字脱字はお許しください。

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