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二次選考開始

候補生達がホールに集められている。銃の様な物を携えた、白い仮面を着けた白い制服達が候補生達をぐるりと取り囲んでいる。


候補生達は緊張した面持ちで、昨日のグループ分けメンバーで集まっている姿が目立つ。私達も4人で集まり、今日への意気込みを話し合う。


「なぁ、ビビってんのかよ?」


燈ちゃんが肘で小突いてくる。


「緊張は、してるよ。だけど萎縮なんてしてられない。私は私のために、おじいちゃんのために、絶対勝ち残らないといけないのっ……!」


「フフン、それだけ気合入ってりゃ上等だ。昨日みたいにハンパねーとこ見せてくれよ!アタシも負けてらんねーしな!」


燈ちゃんが肩をグルグル回しながらやる気をみなぎらせる。


「今日はどんな内容なんだろうねぇ……?」

「どんなお題でも、僕たちなら大丈夫さ!」


不安そうに呟くこはると、激をとばす葵君。うん、大丈夫、私達なら絶対やれる!


------------


「本日二日目の選考試験は、グループ対抗による実地演習とする」


無機質な音声が、ホールに響き渡った。私は視線を正面に向けていた。


「参加者は、AおよびBの2つのグループに振り分けられた。フィールド内での目的は、“相手の無力化”。」


候補生がザワザワとし始める。腕を見るとブレスレット全体がオレンジ色に発光している。私は皆の顔を見渡す。皆少なからず動揺しているようだ。

葵君は…良かった、オレンジ色だ。燈ちゃんとこはるは……


「!!」


二人のブレスレットは緑色に発光していた。こはるは顔面蒼白で私の顔を見ながら、ふるふると頭を横に振る。


「無力化って、つまり――」


誰かががぼそりと囁く声が聞こえる。だがその先は口にできなかった。


(まさか------)


アナウンスは更に続く。


「勝利条件は以下の通り。制限時間は無制限。全体人数が過半数になった時点で終了とする。勝利したチームには一律10ポイントが付与される。1名無力化につき、個人に2ポイント。その他、戦術、貢献、技能等に応じ、追加ポイントを与えられる。」


張り詰めた空気が辺りを支配する。ポイント制。しかも時間無制限だ。


「装備、道具は現地調達とする。その他詳細は各自、現地ブレスレットにて確認を」


最後に低く、静かな声で告げられる。


「以上。これより開始。」


開始を知らせるブザーが耳を劈く。私たちを取り囲んでいた白仮面たちが一斉に左右に割れ、フィールド入口が開放された。



---------


私と葵君はオレンジ色のAチーム。

燈ちゃん、こはるは緑色のBチーム。


「…チッ!!」


燈ちゃんが舌打ちをする。その視線の先をたどると…一際異彩を放つ銀髪の美女が見える。扇子で口元を隠す腕には、緑色が見える。


「クソッ、面倒な女と一緒かよ」


だが、その時だった。


「どけよ!」


短い一言とともに、Aチームの男が柊の進行方向を遮った。

体格も良く、目つきも鋭い。舐められてたまるかという意思が前に出ていた。


「テメェみてぇな女に舐められてたまるかよっ!」


私の口から「あっ」と小さく声が漏れる――


柊は流れる様な所作で、ほんの一瞬踊るようにふわりと一歩踏み込む。


パチン…


「不敬じゃぞ。下れ下郎」


扇子を閉じ柊が言う。それと同時に男の首から血が噴き出した。


「…あぁ?…がふっ…!」


男は首元を手で押さえ、掌にべっとりと付着した鮮血を、信じられないものでも見たように、目を見開いている。

そのまま膝から崩れ落ち、地面に赤い円を描いてく。


倒れた拍子にブレスレットがピーピーと壊れたような音を立てて鳴り、すぐに沈黙する。


周囲が凍りつく中、ほどなくアナウンスが無機質に流れた。


------『14番、脱落。8番:2ポイント加算』


それだけだった。


殺された少年の名前も、悲鳴も、意味もなかった。


「マジかよ……冗談だろ……」


柊と男の死体を交互に見ながら、誰かが呟く。喉の奥が乾くような感覚を覚えた。


白仮面の係員たちが機械のように、血の海に倒れた死体を回収し、血溜まりに砂をかけて掃除していく。

まるで、ゴミでも処分するかのように。


葵君は目を見開いたまま、声を失っていた。こはるは今にも倒れそうな状態でガクガクと身体を震わせている。


「大丈夫、大丈夫よっ…!」

「…澪ちゃぁん……」


私はこはるをギュッと抱きしめる。自分に言い聞かせるように、大丈夫と何度も呟く。


柊はまるで何もなかったかのように、ひらひらと扇を靡かせる。その扇が光をキラリと反射する。まさか…鉄製?


「なんじゃ、もう始まっておろう?無力化しただけだがの」


どこか、嘲笑を含んだような口調だった。

その言葉が、場の空気を決定的に変えた。


「う、うわあぁぁぁ……!!」


蜘蛛の子を散らすように、皆が柊から距離を取る。そして自然とAとBに分かれるように散り散りになっていく。


------この試験に、殺しの禁止など存在しない。

殺せば得点が入る。


その“事実”だけが、全員の中に重く、深く、刻まれた――。

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