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命がけ異能試験、少女は存在をかける〜緋紋譚〜  作者: ルキオラ
第二章 二次選考

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会合


「これ、なんだけど」


燈がバックパックからタブレットを取り出し、雷蔵に差し出す。燈の袖口は返り血こそ拭っていたものの、まだ赤く湿っていた。雷蔵は眉をひそめながらタブレットを受け取る。

タブレットは、泥など付着しやや汚れていたが、機能としては問題ないようだ。燈がドローンを操縦していたもので、内部にはマッピング機能や通信機能、簡易スキャンなど、いくつかのアプリケーションが起動済みのまま残っていた。


「雷蔵、あんたこういうのも得意?」


燈が雷蔵の顔を覗き込んで聞く。


「お、おう……いや、機械んは現場で重機触るくらいしかやったことねぇき、こういうハイテクなもんはチンプンカンプンや。」


雷蔵が頭をかきながら答えると、燈は少しだけ残念そうに唇を噛んだ。


「でもよ、洞窟に戻れば葵がいる。あいつは頭も切れるし、こういうの得意そうじゃねぇか?」


燈は納得したように頷き、受け取ったタブレットを仕舞いながら、雷蔵に言う。


「澪達に合流しよう、急いで」


その直後、スピーカーからアナウンスが響き渡る。


――『88番、機構機密領域への不正侵入、ならびに極秘情報へのアクセスを確認。対象候補に懸賞ポイントを設定』

――『56番、87番も共犯判定により同様に懸賞対象とする』

――『現在、3名全員にそれぞれ【15ポイント】の懸賞を設定。討伐報酬対象となる。対象者はブレスレットが赤く発光している』


「なっ……!」


燈の目が見開かれる。雷蔵は瞬時に顔色を変え、舌打ちを一つ鳴らす。


「なんてこった、あいつら……やっかいなもんに足突っ込んだらしいな」


「急ごう!」


「おう!」


二人は駆け出した。山肌に沿って延びるけもの道を踏みしめ、月明かりの下、ただ仲間の元へと。


その背後。影が一つ、音もなく彼らの足取りを追っていた。まるで月すら避けて通るかのような、異質な気配を纏いながら。


------------


私達が洞窟の奥から上がってくると、雷蔵君が息を切らして走って向かってくる所だった。

そして――


「燈ちゃん!!」


雷蔵君のすぐ後ろに彼女の姿が見えた。私は駆け寄り抱きしめる。


「良かった!無事だったんだね…!」


心から安堵の気持ちが沸いてくる。良かった、本当に良かった…


「何だよ、大げさだな。そっちも大丈夫そうじゃんか。良かったよ」


少し照れ臭そうに燈ちゃんが言う。改めて見ると…


「燈ちゃん!血がっ!大丈夫?怪我してるの?!」


燈ちゃんのシャツや袖口が、血と泥で汚れているのが分かる。私の言葉に燈ちゃんは一瞬ハッとしたが、直ぐに暗い表情になる。


「…ああ、実は…」


------


「柊さんが…3人も…」


衝撃だった。今でも鮮明に覚えている。候補生の一人が首から血を流して倒れていった場面。あの柊と言う人は何故あんなにも簡単に人を殺せるのか…


「結果としては助けて貰った形になったが、納得はしてねーよ…」


燈ちゃんは瓦礫の上に腰掛け、頬杖をついて横を向きながら不機嫌そうに唇を尖らせている。


「まあ、結果オーライっちゅうか……そんおかげで、燈がドローン見つけて、俺は助かったがよ」


「あの女、いきなり後ろから切りかかってくるとか、正気の沙汰とは思えんきに」


雷蔵君は手で自分の首をさすったあと、ひらひらさせ諦めたようなトーンで説明を続ける。


「あと、掘削機に燃料は入れちゅう。けんど、肝心のエンジンがかからん」


「電装系は?プラグから火は出てる感じなの?」


私は掘削機の詳しい状況を雷蔵君に確認する。


「ディーゼルやけん、元々プラグから火は出んけんね、エンジンかからんって事はバッテリー自体上がっちゅうかも」


「そっか、じゃあ今度は何処かでバッテリーを調達できれば、こはるの言う"空間"を確かめられるかもね」


こはるの方を見ると、コクリコクリと頭が揺れている。半分眠っているようだ。それもその筈、あと数時間もすれば夜が明ける時間だ。


「それもそうやけどよ、それより懸賞ポイントっち……どういうこっちゃ!? なんで澪ちゃんらが賞金首みたいになっちゅうが?」


雷蔵君の問いかけに、少し躊躇いはあったが、正直に伝える。


「洞窟の奥に、"庭"があって。更にその奥に、封印された場所があったの。とても嫌な感じがして、開けちゃいけないって思ったの…」


言い淀んだ私の後を葵君が続ける


「…僕が開けてしまったんだ。何か手がかりになるものが無いかって焦りと、あとは単純に好奇心に勝てなかったと言う気持ちもある」


「…それで?」


俯いている葵君を、燈ちゃんが静かに促す。


「……結果、化け物のような何かが出てきた。でも、葛城さんが……囮になってくれて」


唇を噛みながら葵君が絞り出すような声で呟くが、雷蔵君がその先を遮る。


「ああ、もういいよ。聞かなくても大体想像ついたわ。マジで……無茶しゆうな、澪ちゃんは」


少し呆れたように苦笑しながら、ウインクをする。


「それで、その後、Y.A.T.A.の研究資料を見てしまったの…」


「ちょっと待って、葛城さん」


葵君が雷蔵君達に確認を取る。


「ここから先を聞いた場合、君達にも危険が及ぶかも知れない。だから…」


「おいおい、忘れたんか?俺たちは――チーム7やき!なぁ、燈!」


雷蔵君が、ニッ!っと笑いながら親指を立てる。


「ああ、ここまで来たら最後までやってやんよ!やられっぱなしは性に合わねーしな!」


燈ちゃんは肩をブンブン回して気合を入れる。


「燈ちゃん…雷蔵君…ありがとう…」


熱いものが零れそうになる。が、グッと堪えて続きを話す。


「分かったわ。…それで、その研究って言うのが、人体実験だったの…」


「!?」


2人が息を飲む。


「それで、被験者は私達よりも年下の女の子だった。確か13歳って書いてあったわ」


「おいおいおい、マジかよ…」


雷蔵君の顔から笑みが消える。


――続きを話そうとしたその時…


「その話、詳しく聞かせてもらおうかの…」


地の底から響くような低い声が響く。その声に私は、冷たい刃物を首筋に当てられているような、単純に"恐怖"と言うには憚られる様な、複雑な感覚を覚えたーー


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