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命がけ異能試験、少女は存在をかける〜緋紋譚〜  作者: ルキオラ
第八章 決戦

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決着

鎖が鳴ったーー


金属が噛み合う重く濁った音。

クロエ01ーーゼロワンの鎖鎌が円を描き、床と壁を同時に削り取る。


さらに速度が上がった。

ゼロワンは大小の鎖鎌を難なく扱い、クロエと紅華へと迫る


この戦いの中で、ゼロワンはパワー特化からスピード特化と変化していき、

今ではパワーもスピードも、先ほどと比較して格段に上がっている。


ーーE.V.F.代替循環…?


クロエの顔色は悪く、肌が粟立つ。

逡巡のなか、紅華の鋭い声がクロエの耳を突く


「……来るぞ、栞!」


縦からの振り降ろしをナイフで逸らし、空いている手で貫手を放つ

ゼロワンは首を曲げて回避する。

頬を裂いて鮮血が舞う。


「…ぃったいなぁ!」


苛立たしげに横薙ぎに小鎌を振る。

クロエはバックステップで距離を取る

しかし、ゼロワンはそれに合わせて更にダッシュで詰め寄る


一閃


青い炎の螺旋がゼロワンを襲う。


ガキィンッ!!


焰と火花が散り、ゼロワンは弾かれるように距離を取る


「きぃぃぃっ!邪魔だなぁ!!」


両の腕を広げ、鎌を構える。

そのままの体勢で紅華に向かう


紅華の身体が半拍遅れて動く。

舞ではない。型でもない。

“遅れ”そのものを、盾にする動き。


鎖鎌が唸りを上げ、紅華の肩を掠めた。

皮膚が裂け、血が跳ねる。

ゼロワンは二人を視界に入れながら戦っていた。


だが、その瞬間ーークロエが視界から消えた。


姿も音も、まるで存在感そのものが抜け落ちたかのような感覚に陥る。


次の瞬間ーー

ゼロワンの背後で空気が裂けた。


「あなたの、攻撃は……」


淡い声。


「速い、けれど、読める、わ…」


ハァハァと吐息を漏らしながらも、クロエの刃が、ゼロワンの背中に突き刺さっていた。

振り向きざまに鎌を振るうが、クロエの姿は無い。


「ーーっ!?」


ゼロワンが舌打ちする。


「なぁにそれ! つまんない、つまんないよぉ!」


怒声と同時に踏み込む。

しかし怒りに任せた大振り。

速さと力任せの、単純な一撃。


そこへ紅華が滑り込む。


蛮刀と鉄扇が交差し、刃を下から弾く。

腕を上に弾かれ、胴体ががら空きになる


その隙をクロエは見逃さない。


「ぃあああっ…!!」


力を振り絞るように、気合を上げる。

クロエの鋭い手刀がゼロワンの胴を貫く。

そのまま足をかけて腕を引き抜きながらゼロワンを蹴り飛ばす。


紅華が追撃をかけようと動く。

骨は軋み、足は鉛の様に重い。身体が悲鳴を上げている。


(…ぐぅ…、ここで動けねば、何が姉じゃ!)


終之型の余波が、まだ抜けきっていない。

それでもーー止まらない。止められない。


紅華は焰の独楽となり、連撃を放つ

血飛沫と焰と焼かれた血肉が辺りに飛び散る


「っがあぁあ…!!」

「…っぐぅぅ…」


紅華の手から鉄扇と蛮刀がずるりと床に落ちる。

そして二人は共に膝をついた


クロエは血の流れる腕を押さえていた。

先ほどの抜き手、既のところでゼロワンが胴体に口を開き、その腕を”喰って”いたのだ。


とは言えゼロワンも口の奥を突き抜かれており、無傷ではない。相打ちに近い形だ。


しかも紅華の追撃も決まり、確実に押し返している。


しかし既に自分はE.V.F.の許容量をとっくに超えている。もう、身体も思う様に動かず、とどめを刺しに行く程の余力は、残って居ない。


一方で、紅華も限界だろう。

膝はガクガクと震え、得物を握る力も残っていない。


鉄扇を拾い上げ手渡しながら、クロエは紅華に耳打ちをする


(…姉様、お互い限界よ。

私が、何とか奴の動きを止めるわ。

そこでーー決めて)


クロエの提案に、紅華は息を詰めたまま首を振る


(栞、お主の考えていることなどお見通しじゃ

妹の犠牲の上での勝利など要らん)


でも、とクロエは言おうとしたがーー

炎のような瞳に見据えられ、それ以上言葉を紡ぐことが出来なかった。


(…妾に考えがある。奴を……で……)


二人の姿を見ていたゼロワンが、血を拭いながら立ち上がる。


「ああもう!鬱陶しい!姉妹ごっこも見飽きたよ!!」


苛立たしげに声を荒げるゼロワンを、挑発する様に紅華が笑う


「…ククッ…焦っておるな、お主」


低く、確信を込めた声。


「一度捨てた速さに逃げるとは。余裕が無い証拠じゃ」


ゼロワンの顔が、歪んだ。


「ハンッ!お前らみたいな死にかけの鼠に、力なんか必要無いんだよ!」


そう言うや否や、これまでで最速と思われるほどのスピードでゼロワンが迫る


「ハァッ!!」


それに合わせ、短い気合と共にクロエが身体を反転させる。

その勢いで、持っていたナイフをゼロワンに向けて投げる


しかし、精彩を欠いたそれは難なく弾かれる


「何だよ、それぇ?ヤケになったぁ??」


ゼロワンの速度は落ちない。

しかしクロエは回転を止めない


「姉様!!」


反転から更に回転し、クロエは腕を紅華に伸ばす。

両腕に紅華が掴まり、回転の勢いを利用して射出されるように飛び出す


クロエは足を縺れさせ、その場に崩れる


「なぁ…っ?!」


ゼロワンと紅華の距離が一気に詰まる。

急激に詰まった距離に、ゼロワンは反応が遅れ鎌を振り切れない


交差する影


ーーボタッ


血が、床に落ちた。

ゼロワンの足取りが、僅かに乱れる。


「……っかはっ」


笑い声が、ひび割れる。


「な、ぃぞ、れ……? ま、ざがぁ……」


紅華の鉄扇が、ゼロワンの喉に深々と突き刺さっていた。

それを喉元から抜きながら、ゼロワンはよろよろと膝をついた。


「…っゴボッ……」


血の塊と共に、鉄扇と鎖鎌が床に落ちる。

呼吸ができない。身体が、動かない。


クロエがよろめきながら立ち上がり、ナイフを拾い上げ近づく。


「……終わり、よ」


ゼロワンは、顔を上げた。

そこにあったのはーー

狂気でも、愉悦でもない。

驚きだった。


(……え?)


理解できない、という顔。


(……負ける? アタシが?

もう…アレ(EVF)も要らないの…に?)


そのまま、ゼロワンは崩れ落ちた。

ブルブルと身体を震えさせ、やがて動かなくなる。


ーー沈黙。


戦場にわずかな静けさが戻る。

紅華が肩で息をする。もう立ち上がる気力も残っていない。


「……やった、のか」


離れて見ていた雷蔵が駆け寄る

蒼白な顔色のクロエは、ゼロワンを見下ろしたまま、首を傾げる。


「……いいえ」


違和感。

勝ったはずなのに、胸がざわつく。

ゼロワンの亡骸からは“空っぽ”の感触しか、返ってこない。


「…E.V.F.代替…?」


遅れて駆け寄った葵が怪訝な顔をする。


「まさか……」


その瞬間だった。

床の奥で、何かが笑った。

低く、濁った、喜悦の声。


「…素晴らしい…実に、美しい」


空気が、腐った。

闇の向こうから、足音が近づく。

勝利の余韻が、音を立てて崩れていく。

こはるがブルブルと震えながら肩を抱き呟く。


「……何か、来るよ…おぞましい、音が…」

「やったか?」は、やっていないときの様式美

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