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命がけ異能試験、少女は存在をかける〜緋紋譚〜  作者: ルキオラ
第八章 決戦

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演舞

「死ぬのは許さぬぞ、栞」


「……ええ」


紅華は、01をクロエに任せ、雷蔵たちの方へと駆け一瞬だけ視線を走らせた。


白い床に転がる影ーー


雷蔵は、壁にもたれながらも拳を握っている。

右腕は死んでいるが、何とか立っている。


こはるは膝をついているが、外傷はほとんどない。

呼吸は乱れているが、拍はまだ保てるだろう。


燈は床に横たわって、全く動かない。

服が破れ、あちこちに血と痣が滲む。

おそらく戦うのは無理だ。


葵はーー


柱の根元。胸が上下している。

目立った外傷は無く、気絶しているだけに見える。

暫くすれば目を覚ますだろう。


(……まだ、完全に詰み、と言うわけでは無いのう)


紅華は腰の蛮刀マチェットを抜いた。

短く、薄刃の二本。


濡れたような輝きを放つ一本を、逆手に持ち替えて雷蔵へ放る。


「受け取れ」


ゆっくりと放物線を描き寄越されたそれを、雷蔵は反射的に掴み、目を見開いた。


「刃は振るな。正面からは当たらず横から刻め」


雷蔵は一瞬戸惑い、次に、歯を見せて笑った。


「了解や、姐さん。正直クタクタやき、正面は任せたで」


紅華はこはるを見る。


リズムを刻め。速くは要らん」


こはるは、はっとして息を整えた。


ーーいち

ーーに


足先で、微かに床を叩く。

その拍に、紅華は身体を乗せた。


ヴォルテールが吼える。


「ハン?何度でも折ってやンよぉ!!」


弾かれるように紅華に突進し、雷撃が迸る拳を突き出す。

だが紅華は、正面から受けない。


一歩、外す。

刃で逸らす。

流れた力を、横へ。


雷蔵が、その隙にヴォルテールの脇へと滑り込む。

ヴォルテールが振り向いた瞬間、脇腹に鈍い衝撃。


火花が散り、ヴォルテールの装甲に血が滲む


「チィッ!」


巨体が、僅かにバランスを崩す。

その隙を逃すまいと、紅華が踵を返し上段から蛮刀を振り下ろす。


そこへ、ネリスの影。

ぐにゃりと視界が歪み、世界が二重に揺れる。


紅華は、目を閉じた。

ーー視るな。


足音

風圧

殺気


トン、トン、

トン、トン、


紅華はこはるの拍子だけを、拾う。

踏み込みが来る前の、溜め。

半拍遅らせて、刃を差し込む。


その動きでネリスのウィップを、紙一重で避ける。


「……面白いわ」


紅華は、間を切らせない。

こはるのリズム


ヴォルテールが体勢を持ち直し、大振りで殴りかかる

しかし紅華が蛮刀を滑らせ軽く払う。

ヴォルテールの拳は宙を切り、バランスを崩す。

そこに雷蔵が再び踏み込む。


敵の動線。

それらを縫い、切り、重ねる。


決定打は無い。だが、ギリギリの所で崩れもしない。


ーーその時。


炸裂音と激しい光。

眩い閃光が空間を襲う


閃光弾フラッシュグレネード


ヴォルテールとネリスの動きが、一瞬止まる。


意識を取り戻した葵が牽制したのだ。

出来た隙に、葵は床を転がり、拾っておいた鉄扇を紅華へ放る。


紅華は、空中で掴んだ。

指先に馴染む、黒鉄の重み。


「……やはり」


口角が、僅かに上がる。


「得物が違うと、調子が出なんだわ」


こはるの拍が、疾くなる


紅華の感情に合わせるリズム

紅華は、深く息を吸った。


敵の殺気

雷撃の唸り

精神波の歪み


すべてを、舞に取り込む。


ーー終之型


相対する相手の全てを舞に取り込み跳ね返す、柊流の奥義。


その代償として、使用者の精神と身体を蝕む


ギリギリと紅華の身体が軋む。


「うおおぉぉぉっ…!」


ヴォルテールの雄叫びが響き渡る。

黒炎と雷撃が激しく渦巻く。

その中心に紅華が舞っていた。


以前は身体が耐え切れず、気を失った

だが、今回はーー


こはるのリズムが支えている。

紅華は不思議な感覚に陥っていた。

鉛のように重かったその腕は、まるで羽のように軽くなり、水の中を歩いていたかのような脚の重みは全く感じない程に。


「これは…不思議な感覚じゃな」


笑みを浮かべながら紅華が踏み出す。

円を描く

刃が、舞う

雷撃が逸れ

精神干渉が空を切る


ヴォルテールとネリスの動きが、互いに重なる。


その中心で、紅華は回リ続ける。


一度、二度、何度も、電撃と鞭の攻撃を受けるも、全て取り込むかの様に舞い続ける。


扇が裏返る。その刹那衝撃が、爆ぜた。


「グボォ……っ!」

「きゃああぁぁぁあ…!」


ヴォルテールの巨体が吹き飛び、ネリスの影が床を滑る。

二人は、同時に距離を取った。


「……ちっ」


ヴォルテールが舌打ちする。

ネリスは、静かに目を細めた。


「これは…興味深いわねぇ…

…でも、ここまでで撤退よ…」


二人の姿が、闇へと溶ける。

紅華は、その場に片膝をついた。


荒い呼吸を懸命に整える。

疲労感が全身を襲うが、倒れない。


鉄扇を床に突き立てて、立ち上がる。


「……まだ、じゃ」


視線の先では、クロエ01と03の戦いが続いている。


紅華は、刃を握り直した。


「今度は、最後まで付きあおうぞ、栞…!」

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