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命がけ異能試験、少女は存在をかける〜緋紋譚〜  作者: ルキオラ
第八章 決戦

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合流

雷蔵は、もう立てていなかった。

ひしゃげたパワーアームが床に転がり、焦げた匂いが立ち昇る。


感電の痺れが抜けきらず、彼は壁に背を預けたまま、歯を食いしばっている。


「……くっそ……」


燈は、倒れていた。

ネリスのウィップが腹部を深く抉り、その後クロエ01に何度も蹴り飛ばされ、失神している。

その後は、ぴくりとも動かない。


葵も同じくクロエ01の一撃で吹き飛ばされ、柱に激突したまま、意識を失っている。


そしてーー


「ほらほらぁ……逃げ足、遅いよ?」


クロエ01が、こはるの髪を掴んでずるずると引きずる。

こはるの足が床を擦る音が耳につく。


呼吸の拍が乱れ崩れている。


「…う…っ……!」


ポロポロと涙を流しながらも、声が出ない。

その瞬間、風が裂けた様な感覚に襲われる。


カンッ!!


鋭い金属音。


クロエ01の手首が弾かれ、こはるの身体が宙に浮いた。


次の瞬間、銀の影がこはるをふわりと受け止める。


「…下がっておれ」


紅華だった。抱き留められたこはるをそっと後方へ押し出し、蛮刀マチェットを構える。


「……あはっ、遅かったじゃない」


クロエ01が、クククと喉を鳴らす。

だが、その声に被さるようにーー


「姉様」


静かな声ーークロエ03が、紅華の横に立っていた。


「ここは、私が」


紅華が一瞬だけ視線を送る。


「……無茶を言うのじゃな」


「いいえ、大丈夫。私はーー負けない」


03の視線は、すでに01を捉えている。


「姉様は、皆を」


一拍。


「私は、“あの子”を止める」


紅華は、ふっと笑った。


「死ぬのは許さぬぞ、栞」


「……ええ」


そして、白い影が二つ同時に動いた。


紅華が後退し、クロエ03が前に出る。


「あっはぁ!行くよぉ!」


クロエ01の身体中の口が、嗤った。

鎖が鳴る。


ジャラァン!!


大振りの死鎌が、床を薙ぐ。


だがーー当たらない。

クロエ03は、消えた。

否、“いた場所”からいなくなっただけだ。


そのまま背後に回り込む。

肋から脇腹にかけて一撃。


刃渡りの小さな折りたたみナイフでは致命傷は与えられない。

しかし浅く、速く。血が散る。


「……ちっ!」


クロエ01が反対側の手で小鎌を横薙ぎに振り抜くが、そこにはもういない。


次は、反対側から太腿を切り裂く。細く赤い線が走り、血が散る。


「チィッ!!」


舌打ちをしながら鎌を連結させ、斜め上から振り下ろす。

クロエ03は紙一重で見切って半身で躱し、振り抜いて下がった肩に斬りつける。


徹底的なヒット・アンド・アウェイで正確に削っていく。


「…あなたの攻撃は」


ナイフを構え、距離を取りながら、淡々とした声で告げる。


「…無駄が多すぎるわ」


「ブンブン小蝿みたいに五月蝿いなぁ!!」


クロエ01が苛立ちを隠さずに吠える。

そしてその苛立ちが、そのまま動きに出る。


鎖が、さらに大きく振るわれる。

ぶん、ぶん、と空を切る音。

スピードが落ちた重くて鈍い動き


クロエ03は、確信する。


(…あんなに大きな動き…E.V.F.の消費が早い筈)


さらに速度を上げて踏み込む。

無理はせず、当てて、離れ、削って、下がる。


消耗させるため、ダメージよりも時間を使うことに重きを置く。


01の呼吸が荒くなる。

口からダラダラと、唾液を垂らす。


「……はぁ、はぁ……」


そして。足がもつれ、膝をつく。


「……終わりね」


03が、構える。

これまではスピードを優先していたが、クロエ03の動きが鈍った今、そのスピードをパワーに寄せ、力を溜める。


全身のバネを、一点に。


「これでーー終りよ」


渾身の力で踏み込んだ。



その瞬間。


「あは♡」


クロエ01が、顔を上げた。


「なんてね」


ギョロリと目を剥き、歪な笑みを向ける


次の瞬間ーー

世界が、反転した。


これまでの動きが嘘のような疾さで、クロエ03の腹部にクロエ01の蹴りが叩き込まれる。


「――がッ!!」


カウンターでもろに蹴りを食らい、空気が抜け肋が鳴る。

前のめりに体勢を崩した所に、更に鎌の柄で後頭部を殴られる。


その勢いのまま03の身体が床を転がり、血が白い床に滲んだ。


「……あははは!」


クロエ01が、大鎌をゆっくりと構え直す。

身体中の口が、笑っている


「油断しすぎだよ、優等生ちゃん」


クロエ03は、息を詰まらせながら、口を拭う。

それでも、目を逸らさなかった。


ーーまだ、終わってない。


戦場の空気が、再び張り詰める。

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