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ジャンルが違うなんて、聞いてないんですけどー!

作者: かんな月

 ある日突然、私は日本人女性だった前世の記憶を思い出した。

 今いる私の世界は中世ヨーロッパ風の世界。

 そして、今の私は結婚適齢期の子爵令嬢。


 これはあれだ。

 いわゆる異世界転生というやつだ。

 乙女ゲーの世界に転生しちゃったってやつだ!


 だけど待って欲しい。

 私がいるのは、どの乙女ゲーの世界なんだ?

 それとも悪役令嬢物のラノベとかの世界なのか?

 なんで類似作品が数多ある中で、異世界転生物の主人公はすぐに自分がいる世界がどの作品の世界か分かるの? 超能力者なの?

 それともあれか。よくある主人公補正というやつなのか?


 うーん。分からん。

 そもそも子爵令嬢って、乙女ゲーでも悪役令嬢物でも、ほとんど主役級のキャラとして出てこないんだよね。

 そういうのは、平民か男爵令嬢か伯爵令嬢か公爵令嬢と相場は決まっている。

 あるとすれば悪役令嬢物の派生作品で、悪役令嬢の取り巻きのモブ令嬢に転生しました系の作品くらいか?


 ダメだ!

 考えれば考えるほど分からなくなっていく。

 これはもう余計なことは考えず、何か事件が起こってから改めて考えることにしよう。

 うん。そうしよう。

 未来の私よ、どうか頑張ってくれ。






 それから聖女が現れることも、王族の婚約破棄騒動が起こることもなく、何も事件が起こらないまま、私は親が決めた相手と結婚して、それなりに幸せな結婚生活を送った。

 子供が生まれ、その子供が大人になり結婚して孫が生まれ、そのまた孫が大人になり結婚してひ孫が生まれた。

 時々『私が転生した世界は結局なんだったのだろう?』と思うこともあるけれど、きっと最後まで分からないままなんだろう。

 でも、きっとそれで良い。


 そして現在、私は病床に伏してはいるが、たくさんの家族に囲まれて穏やかで幸せな人生を送っている。

 今日は見舞いに来てくれた幼いひ孫からこんな噂話を教えてもらった。


 なんでも遠くの国で魔王が復活したが、異世界召喚されたチート勇者が無双して、あっという間に世界に平和が戻ったとかなんとか。



 ――つまりあれだ。

 私が転生した世界は、乙女ゲーでも悪役令嬢物でもなく、俺TUEEE系作品だったわけだ。






「ジャンルが違うなんて、聞いてないんですけどー!」


 その魂の叫びを最後に、私は永遠の眠りについた。

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