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第57話 森の異変


 奥に何がいるかまでは分からないが、いつものバームモアの森と違うのがひしひしと伝わってくる。

 せっかくの良い雰囲気がぶち壊され、イライラしてくるが……今はイライラしている時間もない。


「ギーゼラも感じ取ったか? 森の奥に何かいる」

「……ああ。気分的には無視したいけど、そうも言ってられない気配を感じる。メラルベが心配だし早く向かおう」

「流石に大丈夫だとは思うが、確かに急いだ方がいいな」


 俺とギーゼラは気持ちを切り替え、急いで気配のする方向へと向かった。

 進んでみて分かったのだが、嫌な気配を感じるのは秘密の花園の方向。


 目的はメラルベか、輝き茸が生えている例の洞窟のどちらかだろうが……可能性が高いのはメラルベの方か。

 出会いこそは良くなかったものの、メラルベは今や大事な仲間。


 俺だけでなく、クラウディアやギーゼラ、それからコルネリアもメラルベには癒されているし、仮に何かあったとしたら――容赦するつもりはない。

 更に速度を上げ、俺は気配のする方向に走って向かった。


「エリアス、この先から感じるってことは……メラルベのところか?」

「だろうな。警戒してから注意深く進みたいが、そんな余裕はない。一気に突っ込もう」

「分かった。カバーは任せてくれ」


 ギーゼラの言葉を聞いてから、俺は秘密の花園へと突っ込んだ。

 そんな俺の目に飛び込んできたのは――衝撃的な光景だった。


 いつもは綺麗に咲いている満開の花が全て散らされており、そんな散らされた花の上には瀕死のメラルベの姿。

 まだかろうじて息はあるようだが、その傷跡は酷いものであり……一気に怒りのボルテージがあがる。


「――お前ら何をやっている?」

「……タイミングが悪いですね。あなたが飼い主と噂のエリアスですね? 本当は来る前に逃げたかったのですが」


 メラルベの横に立っているのは、白衣を着た如何にも研究者という見た目をした男。

 そして、その研究者のような男の近くを五体の無機質な魔物が立ち尽くしている。


 ……どの魔物も見たことがある魔物だ。

 どの魔物もデミコフ研究所で出てくる魔物のため、この研究者のような男はデミコフ研究所の者か。


 恐らく研究所から逃げ出したメラルベを連れ戻しに来たのか、始末しに来たのかのどちらか。

 男の方は一切見覚えがないが、連れている五体の魔物なら知っているため倒せる。


「おい、さっさとメラルベから離れろ」

「メラルベ? キメラケルベロスの名前ですか? ふむ、この化け物を飼うって思考が狂っていますね。このキメラケルベロスは研究によって作り出された人工の魔物。所有者もしっかりといますので、あなたのものではなくこちらの所有物なのです」

「いいから離れろ。五秒以内に離れないなら――殺す」

「これはこれは……。この状況を見て、有利だと思っている思考も怖いです。殺せるものならやってみてください。“お前達、やれ”」


 その言葉と同時に、五体の魔物に指示を飛ばした研究者の男。

 五匹の魔物はその指示に忠実に従い、俺への攻撃を開始してきた。


 パンサーMK-IIが二体、戦争用異形人形が二体、そして試作型メタルドラゴンが一体。

 どれも機械のような見た目をしている魔物であり、実際にデミコフ研究所にて作り出された魔物なのだと思う。


 最終版に魔王復活を企てていたベイジングバーン王国との戦いにて、大量に出てくる魔物達。

 生物ではないため、核部分を破壊しない限り動き続ける機械の魔物であり、その生命力の高さが非常に厄介。


 能力も元となっている魔物に引けをとらない性能に加え、体内に爆弾が仕込まれているため体の破損率で自爆する仕様となっている。

 ここまで聞くと弱点のない魔物のように思えるが、機械だからか一律で雷属性に弱い特性を持っている。


 更に氷属性の攻撃を使えば自爆を防げるため、対処法さえ知っていれば大した敵ではない。

 メラルベを痛めつけたことを絶対に後悔させてやる。


「エリアス、どう動く?」

「少しの間だけ魔物をギーゼラに任せていいか? 俺はメラルベの回復から行いたい」

「分かった。最初から全力で行って大丈夫か?」

「ああ。メラルベを回復させ次第——俺が全てを破壊する」

「エリアスの本気を相手にするなんて、向こうが可哀想……いや、メラルベを傷つけたのだから可哀想でも何でもないか」

「ギーゼラが倒してくれてもいいぞ。五対一だが、よろしく頼んだ」

「任せてくれ。全てぶっ倒すつもりでいく!」


 ギーゼラはその言葉と同時に、まず自身に強化魔法を唱えた。

 デイゼンに指導してもらった魔法であり、今はまだ【加速ヘイスト】の魔法しか使えないが、【加速ヘイスト】だけでもかなり凶悪な状態になる。


 ノリノリのギーゼラを見て、やられることはないと悟った俺はメラルベへの回復を優先することに決めた。

 飛ばす【ヒール】での回復を狙うか迷ったが、傷の具合いから見て直接触れてからの方がいいと判断。

 

「【魔法二重化ツインマジック加速ヘイスト】」


 ギーゼラの上をいく、魔法二重化ツインマジックによる【加速ヘイスト】で、自身の速度を上げ――研究者の男に突っ込むと見せかけて、倒れているメラルベの元に向かった。

 触れた感じ的に相当弱っているが、ローゼルに指導してもらった回復方法を用いての【ハイヒール】なら治すことができる。


「【ハイヒール】」


 内側から集中的に傷を治していき、ある程度修復させたところで――。


「【幻術再生《 イリュージョンヒール》】」


 三重複合魔法である【幻術再生《 イリュージョンヒール》】で一気に回復させた。

 傷も塞がり、体力も回復したことでメラルベはゆっくりと目を開けると、俺の顔を優しく舐めてきた。


 俺はそんなメラルベを撫でてから、研究者の男を睨みつける。

 動きに一切反応できていなかったことから、この男の戦闘能力は皆無で間違いない。


 このままぶっ飛ばしてやりたいところだが……この男を今倒してしまったら、今ギーゼラが戦っている魔物達がどう動くか分からない。

 仮に全員が自爆をしようものなら、流石に防ぎようがないからな。


 戦闘能力が皆無ということが分かっただけで十分すぎる情報。

 俺は思い切り睨みつけたまま、ギーゼラの助太刀へと向かった。

 

 かなり押され気味ではあるが、上手いこと躱しながら対応している。

 さっさと弱点を突いて五体の魔物をぶっ壊し、研究者の男の顔面をぶん殴るとしよう。



ここまで読んでいただき本当にありがとうございます!!

『ブックマーク』と、広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです<(_ _)>ペコ

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