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第45話 突飛な提案


 ヴェルヘルムとの戦闘から二日が経った。

 貴族学校に暗殺者が紛れ込んだというのは、バーリボスの街ならずドラグヴィア帝国内で大きな騒ぎになったようで、学校は無期限の休校。


 『インドラファンタジー』ではエリアスが貴族学校に復学することなく、オールカルソンの名前を最大限に利用して暴れ回っていた極悪貴族。

 こうして学校が無期限の休校になったのも、俺ことエリアスが学校に通い始めたからなのではとつい勘繰ってしまう。


「はぁ……何もやる気が出ない」


 ベッドに寝そべりながら、ここ二日間はずっと眠っている。

 色々と考えてしまうせいで、毎日欠かさず行っていた鍛錬もできていない。


「ようやく学校に馴染めたところだったのに、僅か一週間足らずで休校だもんな」


 出てくるのはネガティブな思考ばかり。

 占い等のスピリチュアルは一切信じたことがなかったが、このエリアスの人生に関しては運命が定められているのではと思い始めてしまっている。


 ベッドの上で転がり、布団を被って現実逃避をしていると……部屋の扉が叩かれた。

 いつものようにエルゼが食事を持ってきてくれたのだろう。


 こんなダラけた生活をしているのに、腹だけは減るのだから嫌になる。

 特にエリアスの体は普通の倍くらいは腹が減るし、胃袋が大きいのか大量に食べれてしまうから気をつけないと、またすぐにまん丸体型に戻ってしまう。


「食事なら扉の前に置いておいてくれ。後で気が向いた時に食べる」

「いえ。今回の用事はお食事ではなく、エリアス様のご友人とご婚約者であるクラウディア様がいらっしゃっております。お会いになられるかどうかを尋ねに来たのですが……いかがなさいますか?」


 クラウディアとご友人? ……というと、ギーゼラだろうか。

 この二人がわざわざ来てくれたというなら、流石にダルいとかは言っていられない。


 重い体を動かし、俺は久しぶりに部屋の外に出た。

 扉の向こうでは笑顔のエルゼがおり、手には着替えとタオルを持っている。

 ……本当に俺のことをよく分かってくれているな。


「ありがとう。軽くシャワーを浴びてから向かうから、応接室に通してあげてくれ」

「かしこまりました。蜂蜜堂のクッキーがありますので、お出ししておきますね」

「ああ、よろしく頼む」


 エルゼに対応を任せ、俺はすぐに風呂へと向かった。

 二日間の汚れを洗い流し、早いところクラウディア達の下へ行こう。



 風呂から出た俺は、急いで応接室の中に入った。

 クラウディアとギーゼラの二人だと思って中に入ったのだが……応接室にはクラウディアとギーゼラだけでなく、ローゼルの姿もあった。


「あっ、エリアス様! お久しぶりです! 体調は大丈夫なのですか?」

「ああ。体調は大丈夫だが……アリスもいたのか」

「あー、もうアリスじゃなくてローゼルで大丈夫よ。この二人にはもう説明してあるからさ」

「……言ってよかったのか?」

「しつこく尋ねてくるから仕方なく。口外しないと約束したし大丈夫よ」


 暗殺されかけたのに本当に不用心だな。

 まぁクラウディアとギーゼラになら、話しても大丈夫だろうけど。


「でも、まだドラグヴィア帝国にいたんだな。流石に帰った方がいいんじゃないか?」

「大丈夫よ。暗殺に失敗してまたすぐに来るってことは滅多にないから」

「エリアス様……。ほ、本当に暗殺されかけたのですね。私、本当に心配で心配で……」

「いやいや、俺じゃなくてローゼルが狙われただけだぞ。俺はそこに居合わせただけで、暗殺者に狙われているのはローゼルだ」

「それはローゼルさんからも聞きましたが、エリアス様も襲われたと聞いて……本当に血の気が引きました」


 クラウディアの目には涙が浮かんでおり、心の底から心配してくれていることが分かった。

 ここまで想ってくれる人がいることに嬉しくもあると同時に、悲しませるようなことはしたくないと強く思う。


「私も本気で心配したからな。それで一つ決めたことがある」

「ん? 決めたこと? ……一体何を決めたんだ?」

「本気で強くなることをだ。知り合いのこういった情報を後から聞かされるのは嫌だと心の底から思った。手の届く人を皆、私が守れるように強くなる」


 一切の恥ずかし気も見せず、皆のいる前でそう言い切ったギーゼラ。

 こういうところがギーゼラの恰好良いところであり、俺が好きなギーゼラの好きなところ。


「ギーゼラは本当に恰好良いな。俺はギーゼラのその夢を応援するよ」

「応援……? 何を他人事みたいに言っているんだ。私を強くするのはエリアスだぞ」

「……え? 俺がギーゼラを強くするのか?」

「当たり前だろ。今日わざわざ来たのだって指導してもらうためだ。休校になった分、鍛錬にだけ時間を割くことができるからな」


 胸を張りながらそんなことを言いだした。

 確かに休校の間は暇を持て余すことになるだろうし、オールカルソン家は広いから鍛錬をするのに集まってもらっても構わないのだが……。


「毎日通うのか? ギーゼラの家はバーリボスの街だったよな?」

「通うというよりも……泊めてもらう。数日に一度は帰るつもりだが、基本的にはここで寝泊まりする。荷物もまとめて持ってきた」

「えっ!? ギーゼラ、それは聞いてませんよ! 私はお泊りセットなんか……」

「クラウディアは通える距離なんだから別にいいだろう。私の家はオールカルソン家のように馬車を用意することができないからな」

「絶対に駄目です! 抜け駆けは許しません! エリアス様、私も泊めてもらってもよろしいでしょうか!?」

「いやいや、何を勝手に話を進めているんだ? そもそも泊まるって言ったって――」

「私も泊めてもらうわよ。既にコルネリアに言ってあって、コルネリアの部屋を一緒に使わせてもらうつもり」


 全員、本当に無茶苦茶だな。

 何か勝手に泊まることになっているし、婚約者ならまだしも同級生って繋がりだけのギーゼラが何泊も泊まっていいのか?

 ……いや、同じ屋根の下で暮らせるなんて、俺としては非常に嬉しいんだけどさ。


「ギーゼラが泊まるなら私も泊めさせて頂きます! 私も強くなりたい気持ちは同じですから!」

「なら、皆で泊まるって形でいいんじゃないか? エリアスの家は大きいし、私とクラウディアが泊まる部屋はあるだろ?」

「そりゃあるが……本当にいいのか?」

「もちろん。エリアスが泊めてくれるなら、私は何も問題ない」

「私も問題ありません!」


 ということで、何故かクラウディア、ギーゼラ、ローゼルの三人が俺の家で寝泊まりすることとなった。

 まぁローゼルは見た目が若いままだが、中身は百歳越えているため問題ないが、クラウディアとギーゼラはかなりまずいと思うんだけどな。


 無駄にソワソワしてしまうが……名目は鍛錬ってことだし、色恋沙汰にはあまり期待はしないでおこう。

 俺としても色々と考えてしまってやる気が落ちていた中、三人のお陰で強制的に鍛錬に励むことになるのはありがたい。

 三人と師匠三人との絡みも意外と楽しみだし、ハチャメチャな提案だと思っていたが予想以上に良い相乗効果が生まれるかもしれない。


ここまで読んでいただき本当にありがとうございます!!

『ブックマーク』と、広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです<(_ _)>ペコ

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