第26話 貴族学校
貴族学校に到着したが……思っていたよりも普通の学校。
中学や高校というよりかは大学っぽい造りになっていて、貴族のボンボンって感じの人達ばかりだ。
これだけ大きな学校でありながら一学年で二クラスしかないらしく、俺とクラウディアは別々のクラスながらも、隣の教室らしいから色々と案内をしてもらう。
半年以上も不登校だったことからも、教師に報告をした方がいいためまずは職員室へと向かった。
「ここが職員室です。エリアス様の担任は……あの巻髪の女性ですね」
「へー、あれが担任なのか」
眼鏡をかけていてドリルのような髪型をした女性。
年齢は四十歳くらいだろうか。
アニメやらゲームやらに出てくる、The女教師って感じの見た目をしている。
俺はクラウディアに教えてもらった担任の下に向かい、今日から授業を受けることを伝えることにした。
「すまないがちょっといいか?」
俺が話かけると、キッという擬音がマッチするような鋭い視線で睨んできた。
……が、睨んだ相手に見覚えがなかったのか、すぐに困惑した表情を見せてきた。
「…………あ、あのどちらさま?」
「俺はエリアス・オールカルソンだ。初期の頃にしか通っていなかったが覚えていないと思うが、新学期を機に今日から復学することにした」
「え、エリアス・オールカルソン……?」
俺の全身を何度も何度も見た後、首を捻って考え込んだ。
「……ほ、本当にエリアス君なんですか? 随分と見た目の雰囲気が変わったように……」
「本当にエリアスだ。疑うなら確認を取ってもらっても構わない」
「い、いえ。本当にエリアス君なのであれば問題ございません。今日から復学するということで分かりました。授業の方もかなり進んでしまっていますが、特別扱いは致しません。それでも大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない。分からないことがあれば、聞いたら教えてはくれるだろ?」
「ええ。放課後であればお教えいたします」
「それなら大丈夫だ。今日から改めてよろしく頼む」
俺は担任との挨拶を済ませた後は、再びクラウディアの案内で俺のクラスであるB組の教室へと向かう。
外見はエリアスだが、中身は社会経験のある元サラリーマン。
いじめられようが流せる自信があるし、それに対抗できるだけの力もつけてあるはず。
ただ、久しぶりの学校ということもあってやはり緊張はするな。
そんな俺の緊張がクラウディアに伝わってしまったようで、優しく背中を擦ってくれた。
違う意味で心臓に悪いため、急に触れるのは止めてほしいのだが……お陰で緊張は解けた。
「そんなに固くならなくても大丈夫ですよ。何かあれば私のいるクラスまで来てください」
「ありがとう。お陰で緊張が解けた気がする」
「ふふ、良かったです。……それじゃまた放課後に迎えに行きますね」
「ああ。また放課後」
小さく手を振ってくれるクラウディアと教室の前で別れ、俺は一呼吸置いてから中に入った。
何か盛り上がっていたようだが、俺が入った瞬間に凍り付いたように静かになった。
その間にクラス内を見渡すが……どうやら先ほどの担任と同様に、俺がエリアスだということにはまだ気がついていない様子。
ただエリアスの席に着くと俺が誰なのか理解したようで、数人の顔がにやけたのが分かった。
オールバック風の髪型でこのクラスのボスっぽい雰囲気の男、その取り巻きであろう七三分けの男、取り巻きその二のツーブロックの男、それから気の強そうな赤髪の女、チャラい感じの金髪の女。
この五人が俺がエリアスだと気づいた瞬間に顔色を変えたことから、いじめの主犯格といったところだろう。
容姿最底、実力皆無。なのに性格も最悪なエリアスには、一切の同情の余地はないのだが、いじめる奴もエリアスと同じくらいのカス人間ということで容赦するつもりはない。
学生ということだし手加減はするが……俺に突っかかってきたら死なない程度に痛めつけ――。
ニヤついている五人を見て、そこまで思考したところで一人の女学生が目に入った。
俺の記憶よりは少し若いが……間違いなく知っている人物。
先ほど街を歩いて探したパーティメンバー候補の一人である――ギーゼラ・クラウゼ。
スラッとした筋肉質な女性で、チーターやヒョウを彷彿とさせる肉体美が特徴的。
黒髪の短髪でボーイッシュな見た目ながらも、女の子っぽい服装をしたら抜群に可愛く――『インドラファンタジー』で好きなキャラトップ3に入る人物。
ゲームでは出会った時にはソロで冒険者をやっており、態度や言動からも普通に平民の出かと思っていたが、この学校にいるってことは貴族の出だったのか。
ギーゼラの知らなかった情報に興奮してしまい、いじめの主犯格であろうニヤけていた連中のことはどうでもよくなってきてしまった。
せっかくなら話しかけたい。ただ、さっきも言ったように俺が関わると、ゲームの中の歴史が変わってややこしいことになる可能性が高い。
それにうつむきになっていて、話しかけるなオーラをビンビンに出しているからな。
……でも、同じクラスなら話さない方が変なはず。
そう自分で自分を納得させ、ギーゼラに話しかけようと立ち上がろうとした瞬間、扉が開いて先ほど挨拶した担任が教室に入ってきた。
そして――その担任の後ろには、またしても見覚えのある人物の姿。
「今日から新たに転校生がこのクラスに加わることになった。自己紹介をしてくれ」
「うぉっほん、私はアリス・メーケンブルクと言う。今日から仲良くしてほしい」
青髪のツインテールであり、黒いとんがり帽子に黒いローブ。
背は140センチほどと低く、自分の身長よりも大きな杖を持っている。
顔立ちは非常に整ってはいるのだが、完全に中学生くらいの見た目のため色々とアウト。
一部のプレイヤーからは絶大な人気を誇っていたキャラであり、アリスと名乗ったこの女の正体は……ローゼル・フォン・コールシュライバー。
主人公の前の勇者のパーティメンバーであり、そのことからも分かる通り齢百歳を優に超えていて、この見た目は魔法によって変えているだけの偽りロリババア。
……というか、ローゼルはミスリエラ教国にいて、聖サレジオ魔法学校で校長をやっていたはず。
なんでこのドラグヴィア帝国の貴族学校にいるんだ?
コルネリアが交渉したとか何とか言っていたが、まさか俺目当てでやってきたとか……?
いや、それは流石にあり得ない。
そうなると、考えられる線で言えばギーゼラ目当てか。
ローゼルはバリバリのヒーラーであり、ギーゼラはゴリゴリの近接職。
最終的に【バトルマスター】という、ギーゼラのみがなることの出来る職業に就けるのだが、余計に接点時点はなさそうに思える。
謎は多く残るが……五人のいじめっこ達に、主人公のパーティメンバー候補であるギーゼラ。
それから謎の転校生アリス・シュヴァルツこと、ローゼル・フォン・コールシュライバー。
学校には適当に通い、憧れでもあった学校内でモテるということを味わって見たかっただけなのだが……
何だかややこしいことが起こりそうな臭いしかしない。
どうなるか想像もつかないが、とにかく死なずにそしてモテまくる人生を送るため、問題を起こさずに平穏に卒業することだけを考えるとしよう。
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