第19話 大事な話
俺は大きく深呼吸をしてから、クラウディアに話しかけた。
「…………クラウディア、大事な話があるのだが大丈夫か?」
「大事な話…………ええ。もちろん大丈夫ですよ」
一瞬真顔になったのが、ヒヤリとするくらい怖い。
すぐに微笑みの表情に変わったけど、それもまた怖い。
「実はなんだが、俺との婚約を解消してほしいんだ」
「は? ……あの、私何かしてしまいましたか?」
本心からの『は?』。
クラウディア目線からだと、いきなり嫌われたと思ってしまうか。
「いや、何もしていない。クラウディアには迷惑を掛けないようにするし、俺にできることなら何でもさせてもらう。クラウディアも俺なんかと結婚するのは嫌だろ」
「そ、そんなことは………………ご、ございません」
完全にそうである間だったが、一応否定はしてくれた。
互いに意見が一致した訳だし、Win-Winの関係を結べるはず。
「俺から婚約の解消を言い出しているんだから、別にもう取り繕わなくてもいい」
「…………。でも、なぜ急にそんなことを言い出したのですか? 以前まではきも……しつこいほど体の関係を迫ってきておりましたよね?」
……はぁー。やはりクラウディアにも体の関係をせまっていたのか。
こっちは婚約者だし正当な理由っぽくは見えるが、今もキモいと言いかけていたし無理やりはよくない。
「俺の両親を見て、偉ぶるのは良くないことだと悟ったんだ。だから、色々と変えようと思っている」
「それでダイエットも?」
「ああ、そうだ。クラウディアにもこれまで嫌な思いをさせたと思うが、どうか許してほしい」
俺は深々と頭を下げた。
簡単に頭を下げてはいけないのだろうが、ここは絶対に謝る場面。
「謝罪なんてお止めください。私は何とも思っておりませんので」
「そう言ってくれるのはありがたい。これからは行動で示していくつもりだ。まず初めに行うのが……クラウディアとの婚約解消。クラウディアも俺に協力してくれないか?」
「エリアス様が私と結婚したくないとのことなのであれば、もちろん協力させて頂きます」
クラウディアと結婚したくないわけではない。
そう口にしたかったが、クラウディアの口角はピクピクと動いていて余りにも嬉しそうな表情。
先ほどまでの作られた笑顔ではなく、これは心からの笑顔だろうな。
ここで否定すると話がややこしくなるため、否定はせずにこのまま話を進めよう。
「ありがとう。それで聞きたいんだが、俺と結婚するに当たってのクラウディアにとってのメリットは何なんだ?」
「それは……オールカルソン家と家族の繋がりとなることです」
「それをクラウディアの両親が望んでいるのか?」
「はい。望んでいると思います」
ド直球の政略結婚。
解決策は簡単に見つかりそうにないが……ここはしっかり二人で話し合い、クラウディアとその家族に一切のデメリットがないよう婚約の解消をしてあげたい。
今の俺にできることといえば……悪役貴族らしく悪役に徹することだろう。
100対0で俺が悪くなれば、クラウディアにもクラウディアの家族にもデメリットは生じないはず。
「俺が100%悪い理由を作ることができれば、クラウディアは一切責められることなく、婚約解消ができるはずだ」
「ですが、エリアス様はそれでよろしいのですか?」
「別に構わない。元から嫌われているし、今更誰に嫌われようと大して変わらない」
好感度がマイナスに振り切っているからこそできるムーブだろう。
せっかく上げた使用人たちの好感度も下がってしまうだろうが、師匠の三人とエルゼだけは下がらないだろうから、全然耐えることができる。
「あ、あの…………ほ、本当にエリアス様なのでしょうか? 見た目も随分とお変わりになられましたし、以前までのエリアス様とは別のお方と話しているようにしか思えなくて」
「本当にエリアスだ。身も心も入れ替えた……いや、入れ替えている最中ってところだな。とにかく二人で案を出し合ってどうするか決めよう。許嫁と言っても、結婚を行うのはまだまだ先だろ?」
「恐らくですが、まだ先だと思います」
「なら、じっくりと話し合って綿密に決めていこう。クラウディアがこの屋敷に顔を出した時は、お互いに考えたアイデアを出し合っていく。それでこれだというアイデアが出たら、その案を実行するための作戦を立てる。そして作戦を立てることができたら――いよいよ実行に移す」
「多分思ってはいけないことだと思うのですが……何だか少し面白そうですね」
「大丈夫だ。俺も少し面白そうだと思っている」
そう伝えると、クラウディアは初めて純粋な笑顔を俺に向けてくれた。
やはり仮面のような作られた笑顔ではなく、本心からの笑顔の方が何倍も可愛い。
せっかくの美貌に生まれたからには、クラウディアにはこれからも心の底から笑ってほしいし、なんとしてでも俺との婚約解消を果たそう。
そう気合いを入れたところで――部屋の扉が叩かれた。
ちょっと遅かったが、どうやらエルゼが蜂蜜印のクッキーを持ってくれたらしい。
話も一つ決まったところだし、二人でクッキーをつまみながら今日から早速アイデアを考えていくとしようか。
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