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第18話 許嫁


 俺の婚約者のクラウディアがどんな人物なのか分からないが、性格最悪な上に肉達磨だったエリアスと許嫁なんて流石に可哀想すぎるな。

 というか、エリアスは婚約者がいたのにティファニーに夜伽を迫っていたのか。


 この世界の結婚観は分からないが、不倫とか浮気とかの概念はあると思う。

 絶対に嫌われているし、会うのが怖くなってきたが……許嫁なら流石に会わないとまずいよな。


「そのクラウディアとは会わないと駄目か?」

「もちろんです! エリアス様に会いに来ているんですから!」

「そりゃ会うしかなさそうだな。俺ってクラウディアに嫌われているのか?」

「婚約者なのですから、きっと嫌っていないはずだと思います」


 きっと、はず、思う。

 頑張って濁してくれているようだが、スパッと言ってくれた方がありがたい。


「絶対に怒らないから本心で言ってくれ」

「…………もしかしたら嫌われているかもしれません」


 こりゃ嫌われているで確定だな。

 色々準備をしたかったが、もう屋敷の中にいるみたいだしすぐに向かわないといけない。


 最低限の身だしなみだけ整え、その間にエルゼからクラウディアについての情報を教えてもらう。

 まずは好きな物を贈り、ある程度の仲を深めたところで――婚約を解消できないかの話を切り出してみよう。


 エリアスのことを嫌っているのなら、クラウディアだってエリアスと結婚したくないはず。

 俺も何も知らない女性と結婚なんて……まぁ悪くはないのだが、それではモテるという俺の目標が潰えてしまう。


 政略結婚の線が一番濃厚だし、婚約解消を行うとなったら色々と面倒くさいだろうが、話を聞けばクラウディアは子爵の娘。

 オールカルソンは公爵家なので、きっとエリアスの両親が命令して婚約を結ばせた形。


 俺が両親を説得さえすれば、上手い具合に解消の方向に持っていけるはずだ。

 そんなことを考えながら身支度を整えた俺は、クラウディアが待っている一階の応接室に向かった。


 どうやらこの応接室に俺の婚約者であるクラウディアがいるらしい。

 『インドラファンタジー』では登場しなかった人物。


 緊張しつつも扉を開けると、応接室にいたのは……俺の両親。

 そして、その横には――絶世の美女が座っていた。


 透明感のある白い肌に、煌めくように見える金色の髪。

 華奢な体に顔は非常に小さく、神が創造したのかと思うほど完璧なバランスの目、鼻、口。


 まるで物語の王女様のような容姿であり、エリアスとはあまりにも不釣り合い。

 大分見た目もよくなったと思ったばかりだが……別次元だな。


「おおー、エリアス来たか。クラウディア嬢が来ておるぞ」

「……え。エリアス…………様なのですか?」

「なに? あなた、婚約者であるエリアスの顔を忘れたとでも言うの?」


 パンパンに太った俺の母親が、クラウディアを睨み付けてドスの利いた声を出した。

 その光景はまるで童話のようであり、悪い魔女に睨まれたお姫様のよう。


「い、いえ! 大分お痩せになられたので、驚いてしまっただけです」

「ん? ……あら、確かに痩せたかしら? エリアス、具合でも悪いの?」

「ほれほれ、今はそんな話はいいだろ。ほら、後は若いお二人で楽しんでくれ」


 エリアスの父親だと一発で分かる下卑た笑みで、そうクラウディアを促した父親。

 クラウディアは笑って立ち上がると、笑みを浮かべたまま俺の下まで歩いてきた。


 これは……どこかに連れていく流れなのか?

 絶世の美女に微笑まれ、体を一気に強張らせて俺はクラウディアをエスコートする。


 応接室を出た後は一切会話がなく、クラウディアは黙って後ろをついてきてくれているのだが、一体どんな顔をしているのか怖くて振り返れない。

 嫌われているというエルゼの情報からも、声を掛けるに掛けられないまま、俺は自室までやってきた。


「へ、部屋で大丈夫か?」

「もちろんでございます」


 天使のさえずりかと思うほど綺麗な声なのだが、抑揚の一切なく機械的。

 部屋に招き入れるのもどうかと思ったが、俺は変な汗を流しながら自室に入った。


「その椅子を使ってくれ」

「ありがとうございます」


 向かい合うような形で座ったことで、クラウディアの顔を見ることになっているのだが……。

 機械的な声と同じように、人間味の一切ない微笑み。


 絶世の美女だからそう見えるというのもあるだろうが、張り付けた笑顔から変わる様子はない。

 例えるなら、大企業の受付嬢が見せる笑顔って感じだ。


「遠いところからわざわざ足を運んでくれてありがとう」

「いえ、お気になさらないでください」

「ここまではどうやって来たんだ?」

「用意して頂いた馬車で来ました」

「外の天気は大丈夫だったか?」

「ええ、晴天でございますので」

「そ、それは良かった」


 質問には答えてくれるが、一切会話が続かない。

 向こうから質問をしてくれないため、会話を続けようがないのだ。


 この対応は完全に嫌いな者へ行う対応であり、少しだけ身に覚えがあってズシンと心にくる。

 エルゼがクラウディアの好きな物だという、蜂蜜堂のクッキーを持ってきてくれる予定なのだが、この地獄のような空気に耐えられる気がしない。

 本当は少しでも機嫌を取ってから本題に入りたかったのだが、俺はエルゼを待っていられないと判断し、話を切り出すことに決めた。




ここまで読んでいただき本当にありがとうございます!!

『ブックマーク』と、広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです<(_ _)>ペコ

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