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第12話 三重複合魔法


 冒険者ギルドの地下にあったのは、意外にもちゃんとした部屋。

 訓練部屋というよりは何もない部屋って感じだけど、壁は分厚く作られているし街の外に行かずともこの部屋なら激しい戦闘を行えそうだ。


「凄い場所だな。ここなら思いっきり魔法を使っても大丈夫そうだ」

「若干狭くはあるが、練習と考えたら十分じゃからな。早速始めようかのう」


 お互いに距離を取り、デイゼンは俺に杖を向けてきた。

 杖の先端には赤い宝石のようなものが埋められており、魔法の威力が上がりそうな形状をしている。


 俺もデイゼンに杖を使うよう勧められたが、杖なしでも魔法を使えることを知った今では使うつもりはない。

 もちろん杖を装備すれば、魔法の威力や命中率は上昇するのだが、そのために片手を塞ぐというのはもったいないからな。

 ティファニーに剣術を教わっている訳だし、剣を装備しながら魔法も扱えるようになるのが今の俺の理想。


「実戦形式を試す前に、まずは魔法を放つから対処してみてくれ」

「分かった。いつでもいいぞ」

「それじゃいくぞい。――【ファイアーボール】」


 ちゃんと合図を送ってから魔法を唱えてくれたのだが、自分に向かって飛んでくる火の球というのは想像している以上に怖い。

 本能的に避けたくなってしまうが、何とか留まってこちらも魔法を唱える。


「【ファイアーボール】」


 俺の手から放たれた【ファイアーボール】と、デイゼンが放った【ファイアーボール】はぶつかって消滅した。

 飛んでくる魔法を打ち落した時の感覚は、何とも言えない気持ちよさがある。


「今ので大丈夫だったか?」

「ええ、完璧じゃった。次は続けて三連続の魔法を――」

「ちょっと待ってくれ。……デイゼンも短縮魔法を使えたのか?」

「もちろんじゃ。まぁワシのとエリアス様のとでは大分違うのじゃが、詳しい説明は長くなるからまた今度話すとして、もう魔法を唱えてええかのう?」

「ああ、話の腰を折って悪かった」


 割と特殊な才能かと思っていたが、短縮詠唱ぐらいは比較的誰でもできることなのか。

 魔法の才能があると密かに浮かれていたため少し残念に思いつつも、俺はデイゼンが放ってきた魔法を次々と打ち落としていった。


「流石はエリアス様じゃな。いとも容易く対処してみせた」

「魔法が来ると分かっていたら対処できる。次からが本番なんだろ?」

「ああ、そうじゃ。次からが本番じゃが、危ないからこれを身に着けておいてくれ」


 そう言ってデイゼンから手渡されたのは、緑色をした綺麗なネックレス。


「このネックレスはなんなんだ?」

「魔防のネックレスじゃ。一度防いだら魔力を込め直さないといけないから、魔法を一発でも食らったら一時中断で魔力を込め直して再開って形で行っていく」

「そんな便利なネックレスがあるのか」

「初級魔法しか防げんがな。それじゃ始めようかの」


 このネックレスも俺の知らないもの。

 アイテムフルコンプも達成したがこんなネックレスはなかったし、『インドラファンタジー』にはなかったアイテムなんかもあるのか。


 ゲーマーとしてアイテムを集めたい気持ちが湧いてきたが、ゲームと違って嵩張るから無理だろう。

 そう考えると、無限アイテム袋が一番のチートアイテムな気がしてくる。


「準備はええか?」

「いつでも大丈夫だ」

「ルールは攻撃手段は初級魔法のみ。その代わりなんでもありじゃから、エリアス様も本気でワシを倒しに来てくれ」

「ああ。全力でいかせてもらう」

「それじゃ――開始じゃ!」


 初めて見せた好戦的な笑み。

 優しい雰囲気がガラリと変わり、デイゼンが本気で俺を倒そうとしていることが分かる。


 本気のデイゼン相手じゃないと意味がない。

 はたして実戦で使えるのかどうか。頭の中で考えていた魔法を試させてもらおう。


「【ファイアーボール】。からの【ウインドアロー】じゃ」


 複合魔法ではなく、二種類の魔法を打ち分けて唱えたデイゼン。

 【ファイアーボール】が【ウインドアロー】の風を受け、広範囲の炎となって俺を襲う。

 初級魔法の威力じゃない気がするが……対応は可能。


「【アイスウォール】」


 氷の壁を作り出し、迫りくる炎を防ぐと共に視界を遮った。

 氷の壁が壊されるまでの少しの時間を利用し、俺はずっと頭の中で考えていた魔法を唱える。


 ゲームにはなかった魔法であり、完全なオリジナル魔法。

 火属性と風属性の複合魔法である雷属性、そして雷属性と風属性の複合魔法である嵐属性。

 二重複合魔法である嵐属性に、水属性と風属性の複合魔法である氷属性を複合させた三重複合魔法。


「【――雹嵐( ヘイルストーム)】」


 あくまで初級魔法を掛け合わせて唱えた魔法なのだが、威力は俺が想像していたよりも遥かに強力。

 魔力もごっそりと削り取られ、魔法を唱えた瞬間に使ってはいけない魔法だと分かった。


 強固に作られた地下室をぶっ壊す勢いの暴風が巻き起こり、その強烈な風の中で無数の氷の礫が暴れ回っている。

 氷の礫が分厚い壁をぶつかる度に削り取っていき、術者である俺ですら収拾のつかない魔法。


「な、なんちゅう魔法を使ったんじゃ!! こ、これは――本気を出さねば止まらん! 【超級魔法――砂爆時雨( デザートレーゲン)】」


 デイゼンが雹嵐( ヘイルストーム)と同等の魔法を唱え、二つの魔法が激しく衝突したことで――ようやく場が収まった。

 訓練部屋には大量の砂が舞い散り、俺とデイゼンは向かい合ってただただ茫然とする時間が続く。


「………………ご、ごめんなさい。まさかこんな魔法になるなんて思っていなかった」

「わ、ワシもエリアス様を舐めすぎておったみたいじゃ。今回は何とかなったから良かったが……危うく死人を出すところじゃった」


 俺の謝罪を皮切りに、デイゼンも話し始めたがまだ何処か上の空。

 そんな何とも言えない空気感が漂っている中、勢い良く訓練部屋の扉が開かれると、先ほどの筋骨隆々のおっさんが入って来た。


 どうやらこのおっさんはギルド長だったらしく、建物を壊すほどの魔法は使うなとかなり本気で怒られた。

 それも俺ではなくデイゼンのみが叱られたことで、心の底から申し訳なく思いながら、今回の実戦練習は大失敗に終わったのだった。



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