軍事国家フォルトゥーナ
FT5015 フォルトゥーナ帝国首都ブリューメル
「いい加減背中のを使ったらどうだレシスト」
「いいやこれで十分だ」
「負けても言い訳は聞かないぞ」
遡ること2年前
これはまだ世界中に争いがまみれていた頃の話。
ここは、フォルトゥーナ帝国直属の特殊作戦部隊を育成する訓練学校、その名をカスケードという。西洋の城を思わせる石造りの巨大な学園にて、2人の壮健な男達の物語は記されてゆく。
「ふん!攻めがぬるいぞレシスト!」
「どっちがだ?」
学園トップクラスの実力者である2人の剣舞を見るため、学校中の生徒はもちろんのこと、一般の人間も学園に併設された円形のコロシアム ペルーシカ闘技場 の観客席を埋めつくしていた。
2人は周りの歓声などお構い無しに、その人並み外れた身体操作を披露し合っていた。その様子に歓声は更に熱を帯びた。
「剣筋が見えない…あの2人は何なんだ」
「あ?…なんだてめぇそんなことも知らないで来たんか?」
「す、すいません最近越してきてこのイベントに参加するのが初めてなもので…」
「しゃーねぇなこのフェルム・凩様が奴らを丁寧に紹介してやっから刮目して見やがれ!」
「は、はいぃ…」
「あの2人はおれの次くらいにすごい未来の大英雄志望の特待生レシストとウルトルだ!」
「な、なるほど…どうりで同じ特待生でもさっきの方々とはレベル違うわけですね…」
「ま、俺様に比べりゃまだまだだが…あんた公的戦時許可証って実戦を行える証明書があるのは知ってるよな?」
「たしか…取得まで5年、つまり上手くいっても20歳までかかるって言う…それに取れるのは志望した1%くらいとか すごい難関の資格ですよね」
「おうよ!その戦時許可証を奴らは1年で取った心·技·体揃ってる化け物だ ま、それくらい国からは重要視されてるわけだな」
「う、そ、そりゃぁすごい…」
『ちなみにおれ様が許可証を取るのに2年かかったってのは内緒だ…』
「ま、とにかくだ、そんくれぇやべぇ奴らなわけよ お兄ちゃん」
「は、はぁ」
フェルムと名乗る青年が、2人のことを観覧客の男性に説明している間も、中央の武舞台では相も変わらず2人の戦いは続いていた。
疲れを感じさせない2人の剣筋は、鋭さを増しており、それに伴い歓声も更に白熱した。
「きゃ〜ウルトル様頑張って〜」
「…やかましい女どもだ」
「…集中しやがれっ!」
「お前がな!」
「ぐぁっ」
「相変わらず実直な戦いをするなレシストお前は」
「お前の方こそ予測のつかない奇想天外な攻めにはいつまで経っても慣れないよウルトル」
「嫌味だぞ今のは」
「な!」
生徒達が様々なヤジを飛ばす中、先程の金色の髪をした青年フェルムは、同じクラスの生徒を加え二人に野次をとばしていた
「2枚目に負けんなよレシストー」
「彼らと敵じゃなくて良かった…ですね」
「いやぁおれはアイツらと戦ってみたかったなぁ…って思うけどな」
「さ、さすがです…ね」
「おらぁ!ウルトルに勝てよーレシスト―!じゃないとこの後お前が勝つことに金かけたことがバレたら殺されんのはおれなんだからなぁ! おい!てめーらも応援しろ!」
「フェルム君はなにかウルトル君とあったの?」
「ウルトルが負けることにお金かけてたのが本人にバレたらしいよぉ」
「はぁ…1度学級委員長として彼を本気で怒った方がいいかなぁ」
「でも一応あの2人に並んでウチのエースの1人だよぉ」
「それとこれとは関係ないと思うけど…」
「おい!お前達なにボサっとしてんだ ほら兄ちゃんもさっきの礼と思って剣背負った黒髪のムキムキマンの方を応援してくれ」
「は、はひ…」
「はいはい…」
「はぁ〜い」
無限に続くかと思われた戦闘もその終わりは呆気ないものだった。
「ぐっ!」
「武器が壊れてしまってはもはや戦うことはできないな…観念しろレシスト遊びでお前を殺すわけにはいかない」
「…ふん!」
レシストと呼ばれる青年は、片膝をついた状態を利用し距離を詰めてきていたウルトルの顎に向けアッパーを繰り出した。
レシストのその一撃でウルトルは左手に持っていた細剣を手放してしまった。
「これで五分だろ」
「フフッ…体術でオレに勝ったことないくせになにが五分だ?」
「今日こそ勝つからだ」
歓声が闘技場内を包む。
その後も2人の戦いは教官の強制終了の声がかかるまで続いた。
そして翌日…
ところ変わりカスケード校舎中庭部分
「おい」
昨日の戦いとは打って変わって、学校の中庭で日課の花の手入れをしているレシストがいた。
彼がふと、背後からかけられた声に反応し、二階を見上げるとそこには昨日死闘を繰り広げた銀髪の男ウルトルが本を片手に、涼し気な顔でこちらを見下ろしていた。
「昨日のことならお前が最後まで立ってたからお前の勝ちでいいと言ったろ」
「違う おれがお前に言いたいのはそんな事しても明日にはマヌケな後輩共のせいで花壇はぐちゃぐちゃだろ と言いに来ただけだ」
レシストは一瞬ウルトルから目をそらし、手入れをしていた花壇に目線をやる。
花壇は足跡や、ちぎられた花で荒れ放題だったが唯一1本無傷だったアイリスを指で触り、またウルトルに向き直った。
「俺は花達と触れ合っている時間が好きだからいいんだ。それにこいつらは何度荒らされてもまた立ち上がる強さがある。そんな姿を見てると勇気をもらえるんだ」
花の逞しさについて語り終え、ウルトルの方へ向き直ると、バルコニーの柵を背にもたれかかりレシストの話を無視して読書にふけていた。
「…相変わらずお前は人の話を聞く姿勢がなってないな 分からせてやろうか?あ?」
少し冗談交じりに嫌味を言うと、ウルトルもそれに返してきた。
「あぁすまん お前の花談義にはさらさら興味も実りもなかったので時間を有効活用させてもらった」
「てめぇこの野郎…しかもお前またその本を読んでるのか」
二階バルコニーには、日向ぼっこに最適な木製のベンチが設置してあり、ウルトルはそのベンチの上に腰を下ろし、アミキティアという叙事詩を手に片足を組み換え言ってきた。
「オレが何を読もうとお前には関係ない だろ それともなんだ?お前はオレの行動にいちいち口出ししないと死んでしまう病でも患ってるのか?」
「よくもまぁ毎度毎度そんな嫌味が出てくるもんだなぁ!お前が今死ぬか?俺の手によって」
「出来ない夢は見るもんじゃないぞレシスト」
「ちっ!お前ってやつはほんと口も達者で腹が立つ…」
「口でお前に負けることはないだろうな」
「…てかそうじゃなくてその本に集中し過ぎて人の話を聞かない癖をやめろと 前も言っただろ」
「実りのある話なら聞いてやっているだろ」
「…偉そうにいいやがって」
国から送られる軍備給付金をすべて貯金し、あの叙事詩や訳の分からん研究に費やしてやがる。
まぁ、俺も昔から1つのことに集中すると、周りが見えなくなるあの性格には慣れてはいるから、最近はもう諦めてしまって、そこまで強くは言わなくなった。
孤独を好み自分の世界を生きる。他人なんてお構い無し。唯一親しくしている俺にすら昔からこの態度だ。
自分のしたい事のため、何者にも縛られることなく生きれるアイツを、何度羨ましいと思ったことか
俺はウルトルの言動にため息を吐くと背を向け、花壇のアイリスへの水やりを再開した。
ウルトルはそんな俺の言葉や態度などお構い無しにそのまま読書を続けた。
「なぁレシスト」
「今度はなんだ」
「アミキティアを考察してて思うんだが 星の救世主 を今のお前はどう思っているんだ?」
遠い昔この星を悪神の脅威から救ったこの星の救世主英雄ウル。だがそれは絵本や創作物等ただの言い伝えだけであり本当に実在したという明確な証拠はない。
故にその英雄譚はおとぎ話として今では世界中で愛されている創作物の1つとされている。
「そうだな…神話の話とは言え、おれ達の 今 を作ってくれた偉大な人だな。まぁほんとに存在していたのならば墓参りでもしてみたいな」
「お前はそうだろうな」
「そういうお前こそ彼?をどう思ってんだ」
俺が質問をし返すと、ウルトルは本に視線を向けたまま話始めた。
表情は読み取れなかったが、少し声に不愉快さを感じた。
「…救世主なんてものは使命と言う名の鎖に繋がれた、自己満足と強迫観念で他人の気持ちも顧みず、ただ救うという感情だけに囚われただけの最もおぞましく恐ろしいものだ そんなものの存在をオレは厭悪する」
「?…何を言ってるのかよく分からんが…それでもお前はなりたいんじゃないのか?」
「おれはお前より強ければそれでいい。お前に負けるのはムカつくからな」
「ムカつくって…そうかよ、もう十分強いくせにおれの何にムカつくんだか…」
「あとはお前とした約束のことくらいのためにしかミーレスなんかを目指しちゃいない」
おれ達はとある野望のために故郷のノーラ村を離れ2人でフォルトゥーナ帝国の首都にあるカスケードまで来た。
電車を乗り継ぎ5日はかかる距離を野宿しながら歩いて来たのがもう4年前14歳の頃だ。
英雄の存在を絵本で知った幼少期の俺は、創作物とは言え 星の救世主英雄ウル と同じように強くなることで様々な悪意から人々や自分が大切だと思うものを守りたいという夢ができた。
そして俺が村から出る当日、ウルトルは無理やり着いてきてこう言った。
『オレも行く。汚い人間をねじ伏せる力が欲しい』
その時のアイツの言葉は今でも昨日の事のように思い出せる。
そして俺はその日コイツと一晩中戦って約束させた。
『歪んだ人間を正すために強くなるのはいい…でも復讐や負の感情に囚われたままその力を使わないと約束してくれ』
その後ウルトルの母さんを何故かおれが説得しに行ったのは、懐かしい思い出だ。
「あれから汚い人間は正せたか?」
「やめろ」
「ふっ」
ウルトルが不機嫌そうに、眉間にシワを寄せながら読書していると、中庭と校舎を繋ぐ木製の扉から、騒がしい声と足音が聞こえてきた。扉を勢いよく開けてきたのは、中肉中背の元気そうな金髪の青年フェルムだった。
「やっぱここか!おい!お前ら!未来の大英雄様がきてやったぞ!」
「なんの用だ?」
「相変わらずやかましいヤツだ、ひき肉にするぞ駄犬」
「おめぇら2人してノリ悪いなぁ〜」
このお調子者はフェルム。 俺達の同期だがご覧の通りの性格ゆえ、静かな場所が好きなウルトルからは嫌がられている。 俺はフェルムの明るい性格は嫌いではないが、多少鬱陶しい時も…まぁある。 基本的にはこの3人でいつも行動している。
「せっかくお前達が喜びそうないいニュース持ってきたのになぁー」
「ニュース?」
「むふふ…レシスト〜聞きたい?」
「うっ…気色悪いな…なんだよ」
早く言え とは思った。だが俺が言うより先にフェルムの焦らす言い方にイラついたウルトルが、罵声を浴びせた。
「早く言え でないと今からお前のくだらんカードを燃やすためだけに頭を使う」
「おまえっ!いや!それだけはご勘弁を!4歳の時から集めて集めてそりゃ血と汗と涙の結晶なわけで…」
「裏の焼却施設は確か19時までだったなレシスト」
「え?あ、あぁ 用務員の人は7時前には帰るぞ」
「カードの場所はどうせ部屋だろうし焼却炉が使えなくなるまで数時間も余裕があるな…少し動くか」
ウルトルの狂気の計画を聞かされたフェルムは怯え、訪れた理由を言い出した。
「待って!待ってくださいおねげぇします!要件ってのはVRトレーニングルームの工事が終わったんです!!」
「ほんとか?」
「オレにとっては別にどうでもいい話題だな」
「ほぉ?そんな事を言ってるがお前が俺と戦うことをなんだかんだ楽しんでいることを知ってるけどな」
「うるさい」
37m×27mの一般的な体育館程の広さの空間に、魔力の元である魔素を散布し仮想現実を作ることで、様々な条件下での訓練が出来るよう、フォルトゥーナ軍の軍事スタッフと科学者達が敵国であるテネブレクトルから漏れた技術を参考にして、作った物なのだが、2週間程前バグが見つかり、アップデートを兼ねて工事を行っていた。
「だからカードだけはどーか!どうかご勘弁を!」
「まぁ…お前の今後の行い次第でいつでも燃やせることを覚えておけ」
「ひぃ〜」
「よし!それじゃぁ 後で行くか!お前も来るよな?ウルトル」
「物好きなヤツだ。こんな文学青年とやり合いたいなんてな。そこにいいサンドバッグがあるだろう」
「だ、誰がサンドバッグだ!」
こちらに視線を向けずに言ってきたウルトルの「文学青年」というセリフが、なんだか鼻についた俺は、どうせまともに聞く気はないだろうけど嫌味を言い返してやった。
「何が文学青年だ 喧嘩師の間違いだろ なぁフェルム。」
「まったくだぜ! 鬼畜ドSの魔王だな ウンウン」
「別にお前ら2人でかかってきてもいいんだぞ ただ、加減できんからどちらか弱い方は星に還ることになるだろうがな」
「お前ならホントにやりそうだから怖ぇよ…」
「あ!そうだそれで思い出した、フェルムお前もどうだ?久しぶりに体を動かさないか?」
「どれで思い出してんだよ…。んーいや〜たしかに俺様も相当〜に強いけど、お前さんらとやると…ちぃとしんどい」
俺が親善試合と称して、対戦を申し込んでもフェルムにだけは、何故かずっとこんな感じで理由を聞いてもぬらりくらりと拒まれ続けている。
「にしてもほ〜んと闘うことが好きだよなぁお前ら」
「オレはやると言っていない」
「だって暇さえあればやってね? おれなんかそんなペースでできねぇわ」
「戦うことが好き…か。なんかそれだと俺が戦闘狂みたいだな…」
「そうじゃねぇの?」
「間違いではない」
「いや俺は自分の技を磨きたくてだな」
「ま、そういうわけでお前たちと異次元バトルするよりゲームしてるほうがおれは楽しいから遠慮しとくわ」
妙な言い回しでフェルムは今回も俺らと技を競い合うのを断った。
「ふん…ビビり野郎は来なくていい。やかましくなるからな…」
「いちいち癇に障る言い方しやがるなぁ!ウル公てめぇ」
「あ」
そこでウルトルが何か思い出したかのように本を閉じて、2階のバルコニーから飛び降りてきた。
「な、なんだよ」
「そう言えばお前、昨日オレがレシストに負けることに賭けていたよな」
その言葉と共にウルトルはまるで般若の形相で目の前のフェルムへとゆっくりと近づき迫っていく
「ぎくっ あ、いやぁそれはですね最近こうウルトル君がやる気なさそうだったので発破をかける…やる気を出させる意味でというか…あ、あはは…いや違うって…冗談だからさぁ」
「…」
わざとらしく誤魔化し弁解をしようとするフェルムをウルトルは無表情でじっと見つめており、フェルムはまるで助けを求める目で俺の方に顔を向けてきた
「あの…レシスト君…た、助けてほしいなぁ…」
「知らん知らんお前とウルトルの問題だろ俺にフるな」
「なんならここでやってやってもいいんだぞ 昨日のことを後悔しながら逝け腰抜け野郎」
「ママァ!この人怖いよぉ!」
こんなことを言っているが、フェルムの実力は本物だ。100人以上居る選りすぐりの生徒の中で、戦闘成績に関しては俺とウルトルと並び候補生中トップ3に入る実力だ。
既に実践経験もある程だが、彼が腰にいつも下げている刀を使うことは、何故かほとんどなく、いつもは懐に隠しているピストルと体術で戦っていて、理由を聞いてもはぐらかされ続けている。
「たまにはお前ともやってみたいんだけどな。あの居合とかいう技はフォルトゥーナで使い手はほとんど居ないし」
「あれは試験の時とか重要な時だけしか見せれないんだわ」
「ほぉ…お前達…オレを無視して雑談か?」
「す、すいませんした〜!」
フェルムはきびすを返し、入ってきたとこから猛然と走って逃げて行った。
「あ!チッ…逃げられたか…次会った時がアイツの最期だ…」
「ほんとお前ら仲良いな」
「どこがだ」
「ふっ」
「まったく…逃げるなら最初から通信機で話せばいいものを。詰められて逃げるとは…馬鹿なヤツだ」
「まぁそう言ってやるな。俺達の顔が見たかったんじゃないか?」
「気色の悪い…」
「じゃあ俺は先に行ってるから早く来いよ」
「…この章を読み終えたら行く」
俺が中庭を後にしようとしてる間も、ウルトルの視線はずっと本に向いていた。
そして俺はと言うと、花の管理表にサインをした書類を職員室に提出した後、昼休みの残り時間をトレーニングに費やすために地下のVRトレーニングルームに向かった。
「ん?誰も居ないのか?」
バーチャルリアリティーシステムプログラム
地下2階はフロア全てが訓練用のVR施設になっており、実際に肉体は動かさずとも仮想空間での戦闘を可能にしている。
「…点検の立て札は無いな。まぁいいか」
この部屋には、細胞を活性化させる魔素という、天然資源を加工したもので、満たすことによって周りの景色や、敵、武器を自由に自分で設定でき、相手とその情報を共有することで現実に起こってることのように体感できる。
俺らが初めて使った時「そんな訳の分からないものは使いたくない」とウルトルが嫌がってたのを思い出して少し口元が緩んだ。
しばらく1人で素振りをしながら待っていると、そいつはいつも通り詩を口ずさみながら現れた。
「明日に手を伸ばし朽ち喘ぐこの想い 誇りを捨てて手を伸ばすほどに希望は潰えて」
「ま〜たアミキティアか」
「あぁそうだ…お前も読め。最終章が欠落しているところが読み手の好奇心を煽り考察に熱が入る」
この話題をするとこいつの目が輝きだす。何かに熱中するのはいいことなのだが、アミキティアにハマってからこいつの言ってることが時々分からない時があるのが悩みだ。
「おれはどうもそういう小難しい事が書かれた創作物は苦手でな…勧善懲悪がやはり王道かな」
「それはなレシスト…お前が愚かで単純で人間として深みに欠けるからだ」
始まった。いつもの煽りだ。私闘をする前、必ずこいつは俺をその気にさせるために、数々の悪口を吐いてくる。慣れようと努力しているが、様々な方法で俺の事をイラつかせてきやがる。
俺に火が付いたことを確認したウルトルは、笑みを浮かべると本を閉じ胸元にしまった。
「ほんと脳筋だな」
俺が首を鳴らしたのをきっかけに部屋全体に青白い光が灯った。訓練開始の合図だ。周りの景色が暗転されると、目の前に白い枠で括られた、戦闘訓練用のメニュー一覧表が出現し、部屋には自動音声が流れた。
その音声を聞いてから俺のモチベーションが下がった
「訓練生番号19194545レシスト・アンジュエルと訓練生番号11475674 ウルトル・ラプソディアの2名の脳波を確認致しました」
「ふむ…いつも思うが ムッツリ訓練生にはやはりふさわしい番号だな」
「クソ…黙れ電波野郎」
…決まった時は運を呪ったさ。
ちょくちょくバカにしてくるこいつもな。
「訓練を開始しますか?」
「「あぁ。」」
「訓練項目を選択してください」
「デュエル」
その声に反応し辺りの景色は光の粒子と共に変化していく。
「かしこまりました続いて場所を選択してください」
「いつもの所だ」
「何回目だ…まったく…」
いつもの場所。俺達が初めて剣を交えた場所。故郷ノーラ村の裏にある ウルデウス山。そこには古の古代兵器が眠ってるという噂があり、麓の森は有刺鉄線付きの柵で何重にも囲われ誰も近寄らないため修行にはうってつけだった。そして10才の時初めてコイツと喧嘩したのもここだ。
「装備を選択してください。」
俺とウルトルは装備品の設定を始めると、お互い登録してある設定を読み込んだ。
レシスト
武器:イニティウム(背:大剣) シュバリエルソード(片手剣)
防具:ミーレスジャケット ミーレスパンツ黒
ウルトル
武器:インティラティス(細剣)
防具:戦闘用シャツ(黒) ミーレスパンツ黒 オーダーメイドのコート
光に包まれた2人には武器が装備されていた。
武器自体に実態はない。魔素が俺たちに見せている幻覚だ。だが攻撃が当たれば精神的に多大な影響を受け疲労が残ってしまう。
「仮想空間でくらい背中のを使ったらどうだ?」
「いいんだこれは背負ってるだけで強くなれるまじないがかかってるからな」
「甘さを捨てきれないから…俺に勝ち越すことができないんだろうな」
「ふん」
俺が鼻で笑うと余裕綽々の表情を浮かべ更に挑発してきた。
「おい、力を抜けレシスト…今にも人を殺しそうな眼をしているぞ」
「いいから来い」
「始めようか むっつりマッチョ」
啖呵はふざけているが、ウルトルの目付きが変わった。さっきまでのどこか上の空のような表情は一変し、氷のように冷たい笑みを浮かべた。
「インストール完了マップをノーラに決定。両者共に準備完了を確認VR訓練を開始します…3,2,1殲滅訓練Lv10開始」
「殲滅戦?」
「なに!違う!待て!殲滅など選んでない!」
自動音声が告げた訓練の内容は、決定した覚えのない、大量の仮想敵を撃退するものであった。
次の瞬間、周りの景色が一変し、夕日が沈みかけた森になると、木の影や上から人型の黒い爬虫類のような皮膚をした魔物が七体程襲ってきた。
「終了させろ!」
「今やってる!黙って援護しろ脳筋!」
「ちっ!」
「だめだ…やるしかない!レシスト!身体強化して時間を稼げ!」
「わかった!血肉に宿りし我が秘められし力と魔と剣を行使しこの身深淵より出し物 眼前の悪意穿つ…」
「くそ…危ない!」
俺の強化呪文の詠唱を止めようとした魔物がウルトルの剣によって真っ二つにされた。
「ギィ!」
「よし!俺が前へ出る」
「頼んだ 強制終了を…ちっ!」
「ギャァ!」
「強制終了する時間を稼げ!」
数十分の間、倒しても倒しても湧いてくる魔物に囲まれ、俺達二人の魔力は尽き掛けていた。
「はぁはぁ…こいつら…いつまで出てくるんだ…終わらんぞ」
「量が異常だな…だけど…」
窮地の時こそ俺の求めるものがある。
俺の口元は緩んだ。
「成長の機会だ」
「はっ…ポジティブだな全く…強制終了が出来ない今、外から止めてもらわないと、このまま続けていたら精神の摩耗で本当に死んでしまうぞ」
「必ず耐える…おれの得意な持久戦だ背中は任せろ」
飛びかかってくる魔物に向けてレシストが、武器を構えなおした瞬間、突然二人の周りを囲んでいた敵が、分解され消えてしまい、元の殺風景なトレーニングルームに戻された。
「な、おわった?」
「なんで…」
突然のことに唖然としていると、白衣姿の無精ひげを蓄えた、壮年の男性が慌てた様子で入ってきた。
「大丈夫だったかね!?」
「ガウェイン先生」
「なんで先生が?」
「いやウルトル君に用があったんだが 何処にも居なかったから行きそうなとこを考えたらここかなと。そしたらVRシステムがエラーを起こしてたからびっくりしたよ」
「…」
「どうした?ウルトル」
「いや別に何でもない 助かりましたありがとうございます」
「ウルトル君後で保健室に来てくれないかな話したいことがあるから レシストくんも怪我とかは大丈夫かい?一応診ておく?…」
「いえ!大丈夫です」
「そうか…では私は先に保健室に居るからウルトル君よろしく頼むよ」
そういうとガウェインは部屋を出て行ってしまった。
「ちっ…回りくどいことしやがって…」
「どういうことだ?」
「システムの調整バグだと思っていたが…おそらくあの人の仕業だ」
「なに!?」
「証拠はないからはっきりとは言えないが…オレに用があるなら放送で呼び出せばいいのにわざわざこのクソ広い校内をよく歩いたもんだ。」
「でもそれならどういう意図があって こんなことを」
「…とりあえずお前はあまりあの先生に関わらないことだ オレは先生の所に行ってくるからお前は先に教室へ戻ってろ」
「お前は先生となにを…」
ウルトルは「なにもない心配無用だ」と言うとトレーニングルームの機能を停止させた。
俺達は、戦いの舞台から日常に戻ったが、ウルトルはガウェイン先生のところに向かうため、先に部屋を出て行ってしまった。一人部屋に残された俺は、試合の緊張感が解け気が抜けたのか、腹が空腹を知らせた。
「…もう昼休み終わるじゃねぇか」
地下二階のトレーニングルームから出て、食堂はその二階真上にあるが、レシストが着くとすでに、腹を空かした獣たちが、獲物を求めて目を血走らせながら、己の食を確保していた。
「昼も終わると言うのににぎやかな食堂だな」
俺がいつもの様子に呆れていると、突然その場が騒然とした。人だかりが出来ている方を向くと、そこには一心不乱に牛丼を貪り食らうフェルムが居た。
「おばちゃん!牛丼特盛おかわり! つゆだくだくで!」
「あいつか…」
フェルムは一度校内の大食いバトルで優勝するほど怪物級の胃袋を持つ男だ。
「はいよ!ぼーっとしてるレシスト君もお食べー」
「あ、じゃあいつものやつ」
「チキン南蛮納豆オクラセット入ったよ」
俺が席に着くと、皿から顔を上げてフェルムは、視線をこっち向け言ってきた。
「ぐふが!(きたか!)ほいお!〈来いよ!〉…(ゴックン)今日もおれが勝つからな!」
「汚いなぁ…」
俺が注意する前に、同じクラスの女子生徒に指摘された。
「フェルム!汚いから口に物を含んだまま話すのはやめなさい!品のない行動はこの私が委員長として許しませんよ!」
しばらく待っていると、揚げた鶏肉にタルタルソースをぶっかけたレシストスペシャルが運ばれてきた。
だが、俺の箸はお腹の調子と周りの様子とは裏腹に一向に進まなかった。
「あいつ何をしてるんだ…」
レシストが食堂に居る頃。一階にある保健室兼ガウェイン教授の研究室では、ウルトルとガウェイン教授が、常夜灯とシャウカステンの明かりだけが唯一の光源になっている部屋でなにかを話し合っていた。
「…見えるかい」
ガウェインはレントゲン写真をウルトルに見せ言った。写真の人間の胸には小さな亀裂が入っている。
「体調に問題は?」
「特には…戦闘も問題なく」
「ふむ…普通なら身体的に違和感を感じてもよさそうなものだが…」
ガウェインは腕を組み「んー」と悩みながらそのままうつむいてしまった。
しばらくそのままでいると、ゆっくり顔を上げウルトルの目を見ながら答えた。
「一度詳しく検査してみないかね」
「…それは検体としてですか」
少し間をあけるとガウェインは口を開いたが、その目には若干の陰りが見えた
「もちろんいち患者としてだよ?大事な生徒を検体などそんなことするわけがないだろう?」
「…考えておきます」
ウルトルが部屋を出て行こうとしていた時、ガウェインのつぶやきにウルトルは足を止めた。
「ところでアミキティアの解読はどうだね」
「それなりには…」
「君にとっての恵みかもしれんね」
「こんなもの…ほしければあげたいですがね」
ウルトルは礼をすると、振り返ることなくガウェインの研究室を後にした。
引き戸が閉まると、机に向き直りガウェインは笑みを浮かべながら、少し冷めたコーヒーを口にした。
「女神などに愛されても僥倖は待ってないんだよウルトル君」
部屋を出た瞬間博士の発言に思う所があったウルトルは大きなため息をついた。
「ただでさえアイツが面倒くさいのに…」
ふと腕時計を確認したウルトルは、とある約束を思い出し目的地へ向かう。
三階に上がり自分のクラス特待科のすぐ上に図書室があり、血の気の多い生徒しか居ないクラスメイトにはあまり利用されない静かな図書室がウルトルは好きだった。
「あ!ウルトル!来たのね!」
「お前が呼んだんだろ」
「言い方!ごはん食べた?」
「後で何か食べる。それよりルシア」
「え、は、はい」
「今日の課題は?」
「あ、そ、そうそうこれ」
「…魔素の戦略的使用法についての論文か」
「全然分からないので助けてくださいぃ…」
「はぁ…確かにお前の頭じゃ7日かけても無理だろうな…」
「ほんと言い方!」
数分後
「とすることによってこの場合は魔素を有用的に利用し転換できるということだろ…お前…そんなことでミーレスになろうとよく言えたな」
「う〜だって…」
「学ぼうという姿勢がないからだ オレも暇じゃないんだ。いつまでもこうしてお前を教えることはできないんだぞ」
「なんでウルトルはいつもそんなきついことばっか言うの…一応私彼女なんだからもう少し優しくしてもいいと思う」
「彼女だろうがなんだろうが人間性と知力を矯正してやってるだけありがたく思ってほしいものだな」
フェルム達 「やかましい連中」を避けるため避難してきた場所がこの図書室だったが、ある日一人でいつものように読書していたところ、騒々しく図書室に入ってきたのが一つ先輩のルシア・アルカヌムだった。
出会った当初は会話のなかった二人だったが、毎日「うーんうーん」と苦しそうにウルトルから見て低レベルな課題に、悪戦苦闘するルシアを見て、耐えられなくなった彼の方から声をかけたのが、二人のきっかけだった。
「そんなの…言われなくても分かってるもん…もうすぐ離れちゃうからちょっとでも会おうと思っちゃダメなの?」
「はぁ…」
怒って頬を膨らませるルシアの様子を見かねたウルトルはため息をつくと思いやりのある優しい声で言った。
「確かに…言い過ぎた悪かった…だが出来ないと思うならオレは何も言わん。卒業したら遊びに行ってやるから」
その言葉にルシアの顔は真っ赤になった。
「な、急な優しさ!」
「その為にはまずこの論文を終わらせないとな?」
悪魔のような笑みを浮かべるウルトルにルシアは小動物のように震えていた。
「許してよぉ問題の解き方を教えてくださいぃ」
「まったく簡単な女だ」
しばらく二人が図書室で奮闘してるとチャイムがなった。
「この続きはまた次回だ」
「…ねぇウルトル」
「なんだ」
「この間のガウェイン先生が言ってた話本当なの?」
「余計な事を考える前に自分のことをどうにかしたらどうだ」
「心配してるのに!」
「気持ちだけは受け取っておくだが、お前に心配されてどうこうなる問題じゃない」
そう言って不安そうにウルトルを見つめるルシアの頭をわしゃっと撫でそのまま自分の教室へ行ってしまった。
「私にできること…」
一方レシストとフェルム達は自分達のクラスである特待科の教室でクラスメイト達とそれぞれ談笑していた。
「いやー食った食ったぁ!へへっ!どーよ俺の食いっぷりは!えー?」
「毎度あの食べ方だけはどうにかならないのか?そこだけはウルトルを見習ってほしいもんだ」
「あ、そういやウルトル居ないけど?」
「あぁ ガウェイン先生に呼ばれた」
「あいついっつも先生となに話してんだ?」
「こないだも説明しただろ?」
俺がため息をつくと「そ、そうだっけ?」と頭を人差し指で掻きながら、とぼけた様子で口笛を吹こうとしていたが、音は全く出ていなかった。
「…人体に関する研究のために先生達に協力しているらしいぞ。今回もそうだと思うけど」
「え?研究って…あいつ…そんな頭良かったっけか?」
「ウルトルの書いた論文が学会で評価されたとか聞いたけど」
「やば…」
「それよりさ…」
「ん?」
胸につっかえたさっきウルトルと共に体験した事故の話をフェルムに打ち明けた。
「いや実はさっきトレーニングルームでガウェイン先生と会ったんだが」
「へーあのおっさんも体動かすことあるんだな」
「いやそうじゃなくて…」
「ん?」
レシストが起こったことを話そうとしたその時
ビーッ ビーッ ビーッ
と突然校内に警報が響いた。
「ただいまより 三学年生全員の抜き打ち戦力検査を行う」
男性の声で校内放送が流れたかと思うと、クラスの扉が開く音がした。そちらに目をやると澄ました顔のウルトルが居た。
「ウルトル?」
「お前たち戦力検査に行くのか?」
「決まってるだろ?」
「そーそー数字で分かりやすいのがいいよな」
「そうか…」
「それより先生と何を」
俺の言葉を無視して、席に着くウルトルの顔には、澄ましつつも若干生気がないように感じた。
その様子に、さすがのフェルムも何か察したらしく、めんどくさい絡み方をしていた。
「どうしたんだ?ウルちゃーん?」
「…俺達特待科の戦力検査地をさっき通りすがりの教官が話しているのを聞いた」
「どこだったんだよ」
「サンクゥトゥスだ」
「あの大型ムカデの巣がある森か?」
「あぁ…」
「この学園の伝統行事だ諦めろよウルトル」
「あ!そういやお前…虫が苦手だったな」
「あの気色の悪い形…考えるだけでもおぞましい…」
この戦闘力の検査は、学科毎に決められた目的地に赴き、その地域にいるモンスターと戦い、その様子を教官が点数化するわけだが、今回の俺達の目的地であるサンクトゥス洞窟は 虹 というきれいな印象の名前とは裏腹に、想像を絶するほどの、大量のムカデ型モンスターの巣になっており、今まで洞窟に入り生きて帰って来た者はいない。
「…あそこに行くくらいなら再試験になって成績下げる方がまだマシだ。オレは絶対に行かない」
「お前休みすぎてるだろ単位足りるのか?」
「ぐっ…」
「あれ?~ウルちゃん留年するー?」
にやにやしていたフェルムは次の瞬間宙を舞っていた。だけどまぁウルトルの気持ちも分かる。あそこのムカデはその量もそうだが、その大きさや戦闘力もとてつもなく、一匹一匹の全長が人間の大人と同じくらいあり、牙には人体を一瞬で溶かす猛毒を持っている。
「どうせ増えすぎて洞窟からあふれ出したのを学園が駆除依頼として請け負ったんだろうからそんな数はいやしないさ」
「いてて…そうそう!それにさすがに洞窟の奥まで行けとは言われねぇから大丈夫だってウルトル」
「見るだけで…想像しただけで…あの気色の悪いビジュアルが…オレの脳裏に…」
ウルトルは昔から虫が苦手だ。
本人曰く、他の動物と違ってグロテスクな見た目と、何を考えてるか分からないとこが苦手な理由らしい。
だから 虫 が関わることになると途端、放心状態に陥ることがある。
その様子に、クラスメイトの数人が心配して声をかける。
「無理にやらなくとも大丈夫ですよウルトル君。委員長であるこの私から今回のことは多めに見てもらうように教官達に言ってきましょうか?」
「いやいいシドニア…それに 女 にそこまでされるのもオレのプライドが許さない」
「そ、そうですか…ご無理なさらず」
すると再び、おれ達特待科の担当教官である、ムドウ・テリアルークの低く圧のある声が、クラスに設置されたスピーカーから響いてきた。
「それでは目的地を告げる。普通科のみ演習先がマギカシエルとの国交問題が発生しているため学校にて待機!奉護科はペルシーカ闘技場!特待科はラプソディア領ルクスのサンクトゥス洞窟!準備が出来た者どうしスリーマンセルで班を組み校庭にて整列して待つように!」
教官の発言は絶対であり、逆らうことは許されない。
俺達はファーストエイドや、糧食等の備品の支度を進めていた。
「…」
「レシスト」
「どうしたウルトル」
ウルトルは俺の耳元で囁いてきた。
「ガウェインの話は忘れろいいな」
そう言うとウルトルは、クラスの中央に集まるシドニアや、フェルム達の話の輪の中に入って行った。
「ほかの科の目的地は楽そうでいいよなぁ」
「混ざってくるといい駄犬。お前が居るとイライラする」
「んだと?別にそこまで言うなら奉護科に移ってやってもいいんだぜ?けどおれが居なくなったら寂しいもんなぁ?ウルちゃん?」
フェルムが、ウルトルといつものように言い合いをしていると、輪に混ざっていた男子生徒のひとりが、横から奉護科について語り出した。
「奉護科がいつも闘技場なのはクラスメイト同士で殺し合いしてるらしいよ。奉護科の人とよく関わる人に聞いただけだけど」
「いやいやファルよ、さすがに冗談だってそれは」
「私もさすがにないとおもいますよ…謎が多い学科とは言え、委員長としてそんなこと認められません」
「落ち着けよシドニア早口になってるぞ」
「これは失敬委員長としてお恥ずかしい限りです」
「でも奉護科だからな…ありそうっちゃありそうじゃね?」
「あんな人間失格科にそんなことできる度胸ないだろう」
「ウルトルの奉護科嫌いは相変わらずだね」
俺達特待科は、それぞれその類まれな戦闘力を示すことにより、普通科から編入を許され、その将来をフォルトゥーナ国軍幹部か、ミーレスという特殊部隊に捧げることになる。
そんな生徒達が集まる特待科に対し、将来は戦闘員ではなく、普通の職に就く者が多く所属する普通科。そして王族等、身分の高い人物へ仕えることを目的に、俺達とは違って少し特殊な訓練や、勉学を受けるのが奉護科。要人警護という、重要な立場になるためのプライド故か、他の生徒を見下す連中が多いため、ウルトルはこの奉護科の人間を毛嫌いしている。
「さ!そろそろ時間ですよ皆さん!準備はできましたか?できた人からこの学科委員長シドニア・オルフェウスに着いてきてください!」
「覚悟はできたな?ウルトル」
「はぁ…」
俺はクラスの後ろにあるロッカーから、長剣イニティウムと片手剣テュテインソードを取り出し、背中のホルダーに十字に挿すと、クラスメイトとともに校庭に向かった。
to be continued…
プロローグからまずは1話分だけ投稿させていただきました。
初の投稿ということもあり、まだ小説家になろうの機能を右も左も分かっていない状況なので、至らない点もままあると思いますがその際はコメント等で教えて頂けたり声援を頂けるととても有難いです!