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積木君は詰んでいる3  作者: とある農村の村人
2章 七人女神
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8話 異変

 アリアさん宅訪問の翌日、通学の道すがらで自分自身の異変に気付いた。

 詰み体質予防として、多少気にしていた面識のない異性に、異様なまで恐れる様になってると。

 常にビクビクとオドオドと、生きた心地のしない感覚こそ、詰み体質の悪化を意味していた。


 生徒でひしめく校内も気が気でなく、教室へと一目散に向かうしかなかった。

 そして、教室に入って早々、もう一つの異変にも気付かされた。


「やぁ、おはよう洋君」


 アリアさんのいつもと変わらない挨拶1つで、稲妻が頭の天辺から足先に走る衝撃。

 誰よりも美しく輝いて見え、胸は高鳴り、顔は熱帯び、安心感を覚え、心が浮き足立ってた。


「あ、アリアさん、お、おはよう」

「また今日から君と、学生生活を送れるのを嬉しく思うよ」

「あ、あい……」


 アリアさんの些細な綻びを、もっとさせたい。

 今までに感じたことの無い、使命感に駆られながら、七人女神がぞろぞろ集い、いつもの変わらぬ日常が始まった。


 詰み体質の悪化こそするも、面識のある異性の前では前と変わらず、特に悪さもせず、一ヶ月が過ぎた。


 それからアリアさんは早退が続き、年が明けた頃に再び長期休学。

 次に再会したのは、3年の前期終業式だった。


♢♢♢♢


「え、海外の高校に通うの!?」

「日本と違って、あっちは9月が入学式なんでな。伝えるのが今更で申し訳ない」


 元々飛び級可能な学力のアリアさんは、日本での卒業を前倒し、海外生活の準備諸々の為、早退や休学せざるを得なかったそうだ。


「女優業もプライベートも、より多忙になるだろうから、しばらく会えなくなる」

「皆には言ってあるの?」

「あぁ。きっと落ち着くのは1年後の今頃か、少し先になるだろうな」


 心の大事な一欠片がなくなってしまう。

 そんな寂しい気持ちが込み上げ、今にも泣きそうになった。

 何かしてあげることはないか。

 限られた時間の中、考えついた答えは、前にもやった事だった。


 その場でTシャツを脱ぎ、アリアさんに差し向けてた。


「てぃ、Tシャツ! 前みたいに、今着てるのをあげるから……その……」

「洋君……日本に帰って来たら、真っ先に会いに行くと約束する。だから今は、笑顔で送り出して欲しい」

「うん……」


 1年後かそのまた少し先か。

 アリアさんが日本に帰って来た時、また皆で集まろう。

 そう約束した指切りを交わし、アリアさんと別れを告げた。


 ♢♢♢♢


 アリアさんのいない七人女神と、残りの中学生活を過ごし、進路は別々になった。


 そして来るべき約束の日まで、お互い連絡を一切しないと誓い合い、卒業式を迎えた。


「オレの事1日でも忘れたら、責任取って貰うからな! ぐすん!」

「わ、忘れる訳ないよ。だから安心して」


「沢山食べて大きくなってねぇ。そしたらまた、いっぱいグルメ巡りしようねぇ」

「お手柔らかにね」


「洋クンを困らせる連中がいたら、遠慮せず言ってや。二度と顔を拝ません様にしてやるから」

「絶対にやらないでね?!」


「ワタシが教え込んだ勉学を怠らないで下さい。もし怠れば、何が何でも無茶苦茶にします」

「き、気を付けます」


「次会った時に、一緒に沢山ラブラブ発散しちゃおうね♪」

「し、しないからね?」


「ゲームも連絡も出来ないなんて面倒臭い……あ、洋の家に居候すれば解決じゃん……どうかな?」

「い、居候?」


「ええええ越子の馬鹿タレ!? ひひひとつ屋根の下で暮らすっつうのはな! けけけけ結婚するって事なんだよ!」

「知識が相変わらずお子ちゃまやな。気持ちは分からなくもないけど」

「あー♪ バレなきゃいいんだもんね♪ ねぇねぇ洋ちゃん♪ 梨紅と密会しちゃう?」

「なりません。許す筈がありません。言語道断です。罰として鬼マックス勉強漬けをやります」

「ねぇみんなぁ、とっておきの食べ放題のお店見つけたよぉ」

「どれどれ……あぁ……行列出来る系のヤツか……待ち時間面倒くさい……」


 一緒に過ごしてきた教室で、時間の許す限り別れを惜しみ合い、僕らは中学を卒業した。

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