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積木君は詰んでいる3  作者: とある農村の村人
2章 七人女神
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6話 2年目の変化

 2年生に進級後、七人女神との関係に変化があった。


 アリアさんの場合。


「え、休学?」

「ハリウットでの撮影で半年程な。次会えるのは後学期だ」


 新学期初日、アリアさんは僕に直接伝える為、ハリウット行きを1日伸ばしたそうだ。


「烏滸がましいお願いなんだが、半年間心の支えとして、

 君の私物が欲しいんだ。例えばペンとか」

「ペンでいいの? じゃあ、いつも使ってるのをあげるね」

「ありがとう。最後に、もうひとわがままいいだろうか」

「うん、何でも言って!」


 他の詰みとは違う七人女神でも、1年間も過ごせば仲の良い友達だ。

 叶えられるわがままは叶えたい。


「洋君ありがとう。では、いつも君を肌身離さず、傍に感じる為に、今着ているTシャツが欲しい」

「え」

「脱ぎたてホヤホヤのを是非」


 断る選択肢すら無い、冗談なしの強欲本能。

 七人女神の詰みの本性が見えた、決定的瞬間だった。


 脱ぎたてホヤホヤのTシャツを密閉袋に封じ、アリアさんはその日の内にハリウットへと旅立った。


 ♢♢♢♢


 イヴさんの場合。


「お、落ち着いてイブさん!」

「洋と相性抜群なのは絶対にオレだ! なのになんで、白姫となんかとペア組んでんだよ!」

「く、くじ引きだったから仕方がないよ」


 男女合同体育授業で僕とペアになれず、腕に絡みついて御立腹なイヴさん。

 1日では治らず、2日3日、1週間経っても治らず、むしろ悪化。

 学校にいる間、膝上ハグがデフォスタイルになった。


「そうか、初めっからそうすればいいじゃん!」

「え」

「聞いてくれ洋! オレといつでも一緒になれる、超絶に完璧な作戦を見つけた!」

「え」

「題して! 近付く奴らを軒並み力技でやっちまえば一件落着作戦!」

「ご乱心を!?」


 日に日に増す力に物言わせる憤怒本能。

 作戦の被害者が出る前に、何がなんでもペアになると約束し、ようやく御立腹が治った。


 ♢♢♢♢


 くららさんの場合。


「穴場グルメ巡り?」

「有名どころなら平気なんだけどぉ、穴場は1人じゃ心細くてねぇ、付き合ってくれないかなぁ?」


 くららさんが滅多にお願いごとをしない手間、町ぶら趣味の僕としても、穴場を知って損はなく、一言返事で了承した。


 当日の土曜日、穴場グルメ巡りの恐ろしさを知った。


「ま、まだ行くの!?」

「3軒目だよぉ? あと10軒は行くよぉ、ようくん」

「じゅ、10軒は無理!? くららさんも明日に響いちゃうよ!?」

「わたし食べても太らない体質だから大丈夫ぅ」


 今更知らしめられる底知らぬ暴食本能。

 残り10軒も巡り、次の日は丸一日食べずに済み、月一でグルメ巡りをする様になった。


 ♢♢♢♢


 あびるさんの場合。


「SNSから距離を置く?」

「所詮、暇つぶしの延長線や。承認欲求に群がる連中が増えれば、嫌でも惰性になるわ」


 目の前でSNSアプリを、次々にアンインストールする、あびるさんの無慈悲な手を止めた。


「い、いきなり過ぎるよ!?」

「顔も名前も知らん連中や。同情するだけ無駄や。それにウチの替えはいくらでもおるやろ」

「あびるさんの替えなんていないし、せめて1つは残してあげて!」

「……全部はやめとく」

「ほっ……」

「洋クンに言われたからやめるだけや。他連中にどう思われようが心底どうでもいい」


 容赦ない毒舌と切り捨てる傲慢本能。

 大人気インフルエンサーの事前予告無しの突発的なSNS削除『あびる事変』は、たちまちネットに広まり、1つだけ残したSNSにフォロワーが集い、その日の内に日本一のフォロワー数となった。


 ♢♢♢♢


 ライラさんの場合。


「またオファーを断ったの?」

「ワタシにはワタシの為すべき使命があるのです。欲剥き出しで利用したがる外野など、本当に憤懣(ふんまん)やるかたないです」


 頭脳明晰な中学生美少女として度々、人気番組のオファーや取材依頼が来ても、全て断ってるライラさん。


「洋さんとの大切な時間を邪魔する外野は、この紙みたいぐしゃぐしゃにして、ゴミ箱にポイっと捨ててやりたいです」

「や、やらないでね?」

「今はワタシの味方なんですよね? 外野に肩入れする洋さんはイケない子です。罰として耳ハムハムをします」

「ひゃ!?」


 独占を邪魔されるのを心底嫌う嫉妬本能。

 日頃積もる嫉妬を、2人きりの時間で存分に解消し、解消行為は日に日にグレードアップし続けた。


 ♢♢♢♢


 梨紅さんの場合。


「ちゃ、着用済みは流石に貰えないよ!?」

「時代はエコだよ♪ エ・コ♪ 箪笥(たんす)の肥やしになるのも可哀想でしょ♪」


 1年間で立派に成長し続け、サイズの合わなくなった着用済み衣類諸々を、善意でプレゼントしてくる梨紅さん。


「そ・れ・に・色々溜まってるんでしょ♪ 使って発散しちゃっていいからね♪」

「な、何のこと?」

「梨紅の口から言わせちゃうなんて、洋ちゃんのえっちぃ♪ それとも、梨紅に一から手解きして欲しいの?」

「ち、違うよ?!」

「遠慮しなくていいんだよ♪ それに今日ね、梨紅の家、誰もいないから、梨紅を1日好き放題できるよ♪」


 強い刺激で誘惑の限りを尽くす色欲本能。

 プレゼントされた衣類諸々は、自室の絶対見つからない場所に封印し、事なきを得てる。


 ♢♢♢♢


 越子さんの場合。


「え、き、昨日公式配信をすっぽかして、僕とゲームしてたの!?」

「5分前に面倒くなっちゃって……へへ」


 生配信だろうと案件だろうと、面倒くさがりが唐突に顔を出し、周りの人達を度々困惑させる越子さん。


「社長にしこたま怒られたし……しばらく反省しろって言われた……」

「え、越子さんは事務所の顔だもんね。次から僕も、今日大丈夫か確認するね」

「あー……洋に迷惑掛かるのか……事務所、辞めたくなって来た……」

「い、いやいや!? 基準がダメだよ!?」

「洋とゲーム出来ればいいし……でも、辞めたら良い機材とか、ゲームとか揃えるの面倒くなる……あー……考えんの面倒臭い……」


 如何なる場合でも面倒臭さが勝る怠慢本能。

 ただ僕との約束は必ず守ってくれ、むしろ越子さんから頻繁に誘われる日々を送ってる。

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