5話 七人女神
入学から早一週間が過ぎた、土曜日。
幸兎と恋次の家に遊びに来て早々、恋次が変な話題を切り出した。
「アリアさん達が七人女神? それってなんなの、恋次?」
「有名人の彼女らは言ってみれば、遥か高みの存在。そんな彼女らは、下界に舞い降りた女神達だと言われ、総称として七人女神って呼ぶ事になったらしい」
「んな七人女神の中心人物の洋ぉは、一体何もんなんだって噂になってるしなぁ」
「し、知らなかった……」
良くも悪くも、七人女神が側にいれば、他の詰み要素を寄せ付けない、絶対的な守りになる。
唯一の弊害としては、他の人とコミュニケーションが出来ない事だ。
実際休み時間も昼休みも、放課後も七人女神の誰かしらが側にいて、クラスメイトにまだ一度も挨拶すら交わしてないんだ。
「じゃ、じゃあ今後の為にも、アリアさん達と距離を置いた方がいいのかな?」
「3年間同じクラスなんだ。絶対やめた方がいい」
「最悪、クラス……いや全校生徒を敵に回すかもしんねぇからぁ、今は大人しく七人女神を探るしかないなぁ」
「探るって言っても、何を?」
「いくら詰み体質で引き寄せられたにせよぉ、七人女神は他の詰みと明らかに違ぅ」
「つまり七人女神が心許すタイミングまで、いつも通り過ごす。それが最善策だ」
いつでも親身に手を差し伸べてくれる、親友2人の言葉を飲み込み、いつも通り中学生活を送ると決めた。
♢♢♢♢
「積木君、すまないが教科書を忘れてしまってな。一緒に見ても構わないか?」
「う、うん」
アリアさんは週に何度か、何かしらの教科書を忘れ、一緒に教科書を見てる。
回数を重ねる度に距離を縮め、一ヶ月を経つ頃には、肩と肩が触れ合うのが普通になった。
一つ一つの行動原理が肌身を伝い、人に喜ばれる行動が自然に身についた。
♢♢♢♢
「筋肉痛って事は、ちゃんとオレの筋トレをやってる証拠だ! 今調子で無敵の身体を作りあげんぞ!」
「お、おぉー」
イヴさんは基本、接触コミュニケーションで、僕の平凡な身体を見極め、基礎筋トレメニューを考えてくれた。
1度体調不良で早退した際、翌日に本気説教・心配泣きからの丸一日ベッタリだった。
この日を境に、一度も身体を崩してない。
♢♢♢♢
「このお菓子めちゃくちゃ美味しぃから、食べさせてあげるぅ」
「あむっぷ」
くららさんは毎日美味しいお菓子を食べさせてくれ、給食もあーんがお馴染みになってる。
おすすめ食べ物動画や漫画・雑誌を共有してくれ、料理に関心を持つようになった。
♢♢♢♢
「次流行るショート動画、2人用だからまた手伝ってや」
「りょ、了解です」
あびるさんの自宅で度々、動画撮影を手伝うも、人に見せられないクオリティだと、一蹴され全部お蔵入り。
お蔵入り動画を見返して改善点を勉強してや、と、あびるさんと僕だけのSNSで、お蔵入り動画を日々見返してる。
一応ヒントを得るのに、最近流行りのものを知るキッカケになった。
♢♢♢♢
「ワタシの考案した予習復習が習慣づいてますね。聞き分けが良い子には、ハグのご褒美です」
「まぁぷ」
つまづきやすい中学の勉強も、ライラさん考案の予習復習法でつつがなく付いていけてる。
毎回されるご褒美ハグを、一度遠慮した時は、キレ気味にだいしゅきホールドされ、その後は素直にハグを受け止めてる。
♢♢♢♢
「この間のグラビア撮影のオフショット、洋ちゃんに特別にあげちゃう♪」
「あ、ありがとう」
梨紅さんの愛嬌あるアイドル姿と違い、際どい色気自撮りオフショットは、貰う度に枚数が増えてる。
自家製撮り下ろし写真集をプレゼントされ、1ページ目で興奮して眠れず、日を重ねページを進める度、異性の肌色免疫がついていった。
♢♢♢♢
「サバブラの腕上がったね……アタシ達、相性バチグー……こんままパートナーになっちゃう?」
「さ、サバブラのですよね」
基本何でもかんでも面倒臭がり屋な越子さんは、人気FPSゲーム・サバブラやニンニン堂のゲームに、積極的に誘ってくれる。
ゲーム雑談配信では僕の名前を伏せつつ、プライベートプレイについて饒舌に語ってた。
僕自身もゲームの腕前が上がり、サバブラのフレンドからも一目置かれるようになった。
七人女神と過ごす日常で、あらゆる成長を続け、あっという間に2年生になった。