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積木君は詰んでいる3  作者: とある農村の村人
9章 VRA5番勝負
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47話 エキサイト・ファイト6

 両チームが見守る中、最後のルーレットが回り、ゆっくりと針が止まり大将戦のゲームが決まった。


「大将戦は『エキサイト・ファイト6』。オレ達に相応しいチョイスじゃねぇか」


 初代エキサイト・ファイト通称エキファイが生まれて早30年。

 ゲームと無縁な人ですら一度は聞いた事がある、認知度No.1の大乱闘ゲームだ。

 特に有名なのが他社ゲームキャラのゲスト参戦だ。

 そんなゲスト参戦動画を、外国人が面白おかしくリアクションする配信・動画がメチャクチャにウケて、より多くの人にエキファイを知って貰えるキッカケにもなり、今ではエキファイの風物詩になってる。


 そしてエキファイ6の最新トレーラー映像の大まかな概要だと、総キャラ数が100体と前代未聞の情報が大々的にニュースに取り上げられる程、前作から更にボリュームアップしてるそうだ。


 勿論しゅーちゃんとのゲーム合宿でも、エキファイは叩き込んで来たんだ。

 しゅーちゃんはどんなキャラでも2、3回操作すれば使いこなせるぐらいエキファイとの相性抜群なんだ。


「1試合の一本勝負だ。逃げ出すなら今の内だぜ」

「背中を見るのは貴方の方よ。『アイナ』で貫き通す」

「お前ならそう言うと思ったぜ! 『カイ』で圧勝してやるよ!」


 初心者にも優しいバランス型のヒーローOL『アイナ』。

 パワー型で扱いが上級者向けのアマゾネス『カイ』。

 過去エキファイ世界大会で優勝したキャラ同士だ。

 ゲームキャラと現実とで眼光を飛ばし火花を散らす中、ゲームアナウンスが響き渡る。


《3・2・1……fight!》


 最初に動き出したのはカイことイヴさん。

 動作が遅めのパワー型も、イヴさんの運動神経能力がVRAに反映され、デメリットを帳消しにしてる。

 隙のない弱攻撃の連撃で、アイナの体力ゲージがじわじわと減るも、ガードを全て成功させて威力を半減。


「見た目だけじゃねぇみたいだな!」

「減らず口、そろそろ閉じなよ」


 1フレームしか猶予がない、相手の攻撃を弾き仰け反らせるジャストアクションが炸裂。

 屈強なカイの身体が大きく反り、イヴさんのキレッキレな腹筋で素早く戻るも、同時に強攻撃の蹴りが鳩尾にクリティカルヒット。

 一気に1/3体力ゲージを削られ、画面端まで吹き飛んだ。


「一気に叩く」


 立て直す時間を与えず、猛スピードで距離詰めするアイナが、渾身の強攻撃を振り翳そうとした時。

 カイとイヴさんが不気味な笑みを浮かべ、こう叫んだ。


超技(ちょうぎ)轟弓連(ごうきゅうれん)』!」


 超技はキャラ一体一体にある必殺技で、時間経過やダメージ蓄積などなどでゲージをマックスまで貯めないといけず、基本1試合に一度しか使えない。

 そんな超技『轟弓連(ごうきゅうれん)』は、直線上にいる相手に向け、NPC達が矢撃の嵐を浴びせ、体力ゲージを半分削るんだ。


 真っ正面にいるアイナが『轟弓連(ごうきゅうれん)』を避けられる筈もなく、矢撃の嵐をモロに食らい、ステージ上に高々と飛ばされた。


「反撃じゃ生温い! 蹂躙だ!」


 頭上のアイナまで飛び、踵落としで地上へ落とし、ありとあらゆる攻撃で一方的に攻め続ける。

 ジャストアクションは勿論、ガードも猛攻に追い付けず、体力ゲージがデンジャーラインからデッドラインにまでみるみる減り続けてる。


「これでオレの勝ちだっ」

「超技『ヒーロー覚醒』!」


 超技は攻撃系と自己強化系の2種類に分かれ、『ヒーロー覚醒』は体力ゲージがデッドライン状態にしか使えない。

 その代わり超技発動から10秒間、相手攻撃を一切無力化する、最後の形勢逆転になるんだ。


 弱攻撃の一撃でも食らえば終わっていた場面で、勝利への確信を得たイヴさんの、一瞬の余裕を見逃さなかったしゅーちゃんには脱帽だ。


「ありがとうイヴさん。これで思い残す事はなくなった」

「く、くちょおおおおおおお!」


『闘技の女帝』という確固たる地位もあって、大衆の面前で逃げる選択を捨て去ったイヴさんは、アイナの光り輝く拳を数発食い、華々しくKOと共に散った。


《winner! アイナ!》

《定時に帰れる! やったね!》


 大画面の僕らのチームに王冠が増え、3勝2敗で略奪戦の防衛に成功した。


「しゅーちゃん! ありがとう! 勝てるって信じてた!」

「すげぇよ! しゅーぴっぴ! ほんとヤベェよ!」

「いいもん見せて貰ったぜ! かっはっはっは!」

「感激したっす! えきふぁい?をやってみたくなったっす!」

「わっわ!?」


 囲まれて赤面するしゅーちゃんは、どこか吹っ切れた様な笑みを浮かべ、僕と愛実さんの手を取り、優しく重ねてくれた。


「洋さん、愛実さん。2人なら大丈夫」

「うん……ありがとうしゅーちゃん」

「あんがと! しゅーぴっぴ大好きだ!」


 心強いしゅーちゃんの言葉から、優しさや想いを大事に受け取った僕らは、残りの略奪戦を必ず乗り越えると、目を合わせあった。


 勝利の余韻もあってか、ふと気が抜けた空気の中、激しく床を叩き付ける音が響いてきた。


「くちょぉおおおおおお! 洋を諦めるなんてイヤダァあああああああ!」

「と、取り乱すなイヴ!」

「ありさがよしよししてあげるから暴れないで!」

「い、イヴ様をよしよしするのはボクだ!」

「あーあ、しっちゃかめっちゃ」


 ドタバタ暴れに暴れまくるイヴさんを抑えようと、折鯊さん達が必死に動くも、いとも簡単に吹き飛ばされ、僕らも大慌てで協力し、抑えるのに尽力した。

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