39話 VRと撫で撫で
幼馴染4人による、僕の隣は誰が座るかで、30分の一悶着があり、右側にさーちゃん、左側にしゅーちゃんの座る形になった。
それでも納得してないふーちゃんひーちゃんは、僕らの正面で正座して、隙さえあればいつでも両隣を狙えるぞと、鋭い目力と圧を掛けてきてる。
「ただいまー! あ! 靴沢山あると思ったら、皆来てたんだ!」
「お、おかえり空」
「おかえりなさい空。まず手洗いうがいね」
「はーい!」
「さぁ皆。夕飯の準備を手伝って頂戴」
「「「「イエス・マム!」」」」
七人女神と同じく、幼馴染の4人も姉さんの前では、素直に従ってくれるから本当に助かってる。
ただそれも我が家でのみの話だ。
一歩外に出れば、止まらない気持ちを心身共にぶつけてくるんだ。
好意の示し方が激しい女の子達を、心の中で改めてると、着替えてきた空がポスッと隣に座って来た。
「ねぇねぇお兄ちゃん! 友達から聞いたんだけど、イヴちゃんが土曜日に何かやるみたいだね!」
「中学校でもイヴさん情報が? 噂は本当なんだね」
「お兄ちゃんも知ってたんだ! 流石イヴちゃんだね! スポーツやってる子が憧れるだけあるね!」
日々磨き続けられる美貌とカッコ良さと功績もあって、同性のファンが右肩上がりで増え続けてると聞いた事がある。
小学生時代から専属カメラマン数人いる程、イヴさんは人々を魅了し続けてるんだ。
そんなイブさんの話題が出た以上、空から少しでも有力情報を手に入れて、迫る土曜日に出来る限りの対策を練らないと。
「ちなみにイヴさんが何をしようとしてるか、友達から聞いた?」
「うーん……身体を使うみたいだけど、直接はやらない?みたいな事を言ってたかな?」
「とんち?」
「違うよ! えっとね……ハッ! アレだよアレ! 最近話題になってた、ヘルメット被って、スーツみたいなのも着て、ゲームの中に入れるヤツ!」
「VRAの事?」
「それ!」
数年前ゲームショーで発表されてから、VR界に注目が行くようになったキッカケの、最新VRだ。
従来のVRは視覚がメインで、ジャンルも限られてた。
VRAは、特殊なヘルメットとスーツを身につける事で、実際の動きをほとんどラグ無しで連動する技術を反映して、軽い感覚までも再現出来てるらしい。
それのお陰で、格ゲー、オープンワールド、FPSゲーム、幅広いジャンルにVRを広げられると、次世代機はVRAの時代が来ると予測されてる。
それでも家庭で普及するのはまだまだ先で、現在は動作確認やどんな環境でプレイ出来るのかなどなど実験中で、進捗状況を定期的にSNSやニュースで発信してる段階だ。
そんなVRAをイヴさんが略奪戦に利用するとなると、恐らく最新ゲーム情報を網羅してる越子さんが、イヴさんに協力して動いてるに違いない。
そうと決まれば、ゲームフレンドの皆に一報入れて、力を貸して貰えるか頼んでみよう。
「ありがとう空。すごく助かったよ」
「はふぅ……お兄ちゃんの頭撫で撫で気持ちぃ……」
「空ちゃんお顔がトロトロだね♪ ついでに私にもして欲しいな♪」
「もう、ふーちゃんってば……少しだけね」
「ありがとー♪ よー君♪」
公平に両手で頭撫で撫でを1分、ふーちゃんは満足気な美少女スマイルを見せてくれた。
「やっぱり、よー君の撫で撫でが1番だね♪」
「大袈裟だけどありがとう」
「本当だもん♪ そんな撫で撫でしてくれたお礼に、バーチャルじゃない生の私を好き放題していみゃぷ?!」
「馬鹿吹雪! だらしない身体に、洋さんの手を誘導すんな!」
「き、均整の取れたエロボディーだから!? あー! よー君の傍にいたいのにぃー!」
「コソコソする方が悪いだろ!」
わざとらしい演技で救いを求めるふーちゃんを、強引に連れてこうとするしゅーちゃんは、僕と目を合わせてきた。
「……洋さん。あとで、その木林森イヴさんとVRAの話、聞かせてくれる?」
「え、う、うん」
てっきり自分も撫でて欲しいかと思えば、真面目のさっきの話を聞いてたっぽい。
そもそも七人女神と東海高校四大美女は、必然的にライバル関係になるんだから、他人事じゃないんだ。




